関連テーマ 

 

 



サイドボックス

ここにテキスト


出し

ビフォア・ミッドナイト

  ビフォア・ミッドナイト

 

 足掛け18年のシリーズだ。たかだか3年で“〜ぶり”というのは失笑してしまうが、前作は2005年で、part1の頃は「俺も若かった、恋をしてたなぁ」などとしみじみしてしまう。映画の教養があることを誇示するなら、フランソワ・トリュフォーの“アントワーヌ・ドワネルもの”と呼ばれる作品群が近いことになる。他に例を見ない実験とも言えるし、関係者がそれぞれキャリアを積んでいるからこそ、実現できた企画とも言える。構造は「恋人たちの予感」そのもので、アレは原題が“When Harry met Sally”というくらいで、節目節目で出会うハリーとサリーのクロニクル(年代記)。

 

 最初はウィーンに向かう列車の中で出会い、朝まで過ごす若い2人。2度目は大人になってパリで再会、今度は偶然ではなく・・・。果たしてその後9年経ってどうなったのか?冒頭に空港で息子を見送るイーサン・ホークが出てくるんだけど、ずいぶん前には輝く瞳の少年だったんだよなぁ。会話から察すると、離れて暮らす父と息子。昨今はこの設定が日常的で、「マネーボール」「ドラゴン・タトゥーの女」「スマイル、アゲイン」も・・・時代の流れがね・・・と大人の言い訳に傾斜してしまう。でも息子はしっかりしていて、いずれアレっぽくなってくれることを願う。

 

 じゃあ、お相手のジュリー・デルピーはどこで登場するの?と思っていたら無造作に外で待っている。ごく自然に車に乗り込む2人。はてさてあの後どうなったのか?これも本作の特徴で、会話にヒントが散りばめられている。どうやらパリで再会してから娘を2人授かって、暮らしているようだ。さらに休暇でギリシャにいるようだなどなど、とにかく車中で喋っているだけで、こちらの想像は膨らまされていく。そんな中で、ああなるほどこの人たちも、子を持つ親としての生活に馴染んでいるんだなぁなどと思ったりして。

 

 今回は前2作と違って、2人以外にも登場人物がいる。休暇で滞在している先の人々で、雰囲気が「プロヴァンスの贈りもの」っぽくのんびりした感じがよろしい。食事の感じは「めがね」も思い出させてくれて朗らかだ。会話がなかなかで、聞き入ってしまう。様々な年代の恋愛というか、夫婦についてというか、大雑把に愛について語られるシーンは笑いも交えられていて、このシリーズでは新鮮。だって第三者はほとんど登場しなかったからね。で、ジュリーが頭の悪い女の真似して迫る部分は爆笑、ぜひご覧になってご確認を。

 

 今回のイーサンはそれほど目立たなかったけれど、ジュリーはわざと老けた感じを出している。設定上は彼女の監督作「パリ、恋人たちの2日間」と同じく35歳ながら、見事に実際にいそうな中年女性に化けた。「ワンデイ」でもアン・ハサウェイが挑戦していたけど、年を取ればいろんなところが垂れてくる。ドンドン痩せ細っていくフランス女優ではマレですね、あの「汚れた血」の美少女もきちんと年相応なのだ。痴話喧嘩というか、日常的な夫婦のすったもんだはイラン映画ほど比重がおかれていないので、ニヤニヤして眺めてしまう。

 

 会話劇がいつの間にか、コメディ色のサスペンスになる「トスカーナの贋作」とも違って、リチャード・リンクレイターは新種を生み出した。この人もご多分に漏れず忙しくて、「バーニー/みんなが愛した殺人者」から間を置かずの新作。もっともこの人の場合、題材、スタイル(インディorメジャー)に関係なく色んなことを試しそう。スティーヴン・ソダーバーグが休業中だけに、期待です。そして主演の2人の10年後、20年後まで観たいので、せっせと仕事に励んで、疲れたりしないでほしい。イーサンもジュリーもキャリアをさらに築いていけるから。

 

現在(1/19/2014)公開中
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

前のページ    次のページ

 

top

 

関連作

  パリ、恋人たちの2日間

 

  タイミングとしては「ビフォア・サンセット」の前かとも思うけれど、「ビフォア・ミッドナイト」の前でドンピシャのジュリー・デルピー監督作。会話で作品が成立しているので、ビフォア〜シリーズと同じ構造。列車のシーンから始まるので「恋人までの距離」がすぐに思いつくし、「トゥ・ザ・ワンダー」「君と歩く世界」に負けず劣らずの描写は監督としての才能を証明。

 

 カルチャー・ギャップはアメリカ人が描くと「ミッドナイト・イン・パリ」になって、地元の人が描くとパリに容赦がないのか?ま、フランス人家庭の様子はメラニー・ロラン「突然みんなが恋しくて」と似たようなもので、サバサバしてるって言うんですかねぇ、でもアングリ。監督兼主演のジュリーはやりまくり。もう言語道断のヤリで、言葉通じない生真面目アメリカ人彼氏がトホホ状態。

 

 監督としてというより、ジュリー・デルピーは相当に辛辣で、セリフにそれが込められている。エンロンとかあの人とか。「パリより愛を込めて」もやりたい放題だったけど、先進国フランスの“良くない部分”をタクシー車内で暴露。ダニエル・ブリュール(コッホ先生とはエライ違い)がラストにちらっと出てきて、てんやわんやの末、2人がどうなるかはぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system