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8月の家族たち

  8月の家族たち

 

 ジェイソン・ライトマン最新作にジーンときた後は、豪華共演の群像劇。裏方は監督が「カンパニー・メン」のジョン・ウェルズで、プロデューサーはジョージ・クルーニー&グランド・ヘスロヴという社会派コンビがクレジットされている。「アルゴ」とか「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」の方面かとも思われましたが、原作者の名前でアレ?となった。

 

 トレイシー・レッツという人は「キラー・スナイパー」も手がけているというではありませんか。2大女優メリル・ストリープジュリア・ロバーツ共演なのに、変態警官が主役の“合衆国が触れて欲しくない”お話を書いた人の戯曲が元ネタとは。でも変幻自在の芸達者さんたちはやる気満々で臨んでいる。いきなり薬物中毒のメリル・ストリープが現れて、「なにこのインディアン」などと新しい家政婦にからんだりして。

 

 実際の合衆国中西部ってあんな感じの人たちが棲息しているのかもしれない、と思わせるくらい生々しく皆さん変身。ジュリアなんてさスッピンの中年女で、「エリン・ブロコビッチ」すら可愛らしく映る。劇作家でもあるサム・シェパードも「アメリカ、ある家族の風景」からもっと枯れて、情けなさを漂わせてる。まともに見えるのはクリス・クーパーくらいかな、ユアン・マクレガーも当たらず触らずって感じ。

 

 芸達者たちが扮した家族が集まるのは、サム演じる家長の失踪に端を発する。そして結局その自殺がお葬式に移行するという進行。で、久しく会ってなかった家族が集えばモロモロ出てくるわけで、「クリスマス・ストーリー」なんてまだ良い方ですよ、最後はデス・マッチになっちゃうんだからね。“アメリカ人なんて、一皮剥けば野蛮人”は原作者の実感していることなのか。

 

 圧巻はなんと言っても葬儀後の会食シーン。図式としてはメリル扮する婆さんに、各個撃破されちゃうんだけど、いやー容赦なかったですね。もはや男の威厳なんて笑い話の21世紀、「プラダを着た悪魔」より確実にステップ・アップして、ほとんど妖怪ババアの大女優。ところがこれがもう爆笑。でも「おとなのけんか」と同じ劇場で観たんだけど、笑いは起こらないんだよなぁ。

 

 もうハナから目つきがヤバイ大婆様はいきなり男どもに「葬式なのにジャケット脱いでどうするの」と始まり、長女の婿=ユアンに「若い女の方がいいのよね」と言ってタジタジにしたかと思うと、孫娘を怒鳴りつける。もう最悪の修羅場なんだけど、エンジン全開になった大婆様はやめられない止まらない。ついには長女=ジュリアと取っ組み合いに・・・。

 

 見せ場はみんなに用意されていて、若手のベネディクト・カンバーバッチは悪役が信じられない弱気ぶりで、ダーモット・マローニーは小娘のアビゲイル・ブレスリン(「幸せの1ページ」から成長してます)にハッパを勧めたり。で、親のジュリアが見つけて新たな修羅場なんだけど、ダーモットとジュリアって「ベストフレンズ・ウェディング」の2人なんだよね、月日の経つのは早い。

 

 良いお話でしめず、合衆国の恥部を露わにする。原作の持ち味もその辺りにあるのでしょう。大量解雇の現実を監督は前回描いているし、プロデューサーの2人も政治ネタだけでは物足りない。そんなところに豪華な面々が集ってくる。そして見事に爆笑かつ“家族の絆なんてそんなものよ”という辛辣さを込めた大人向けの秀作に結実。もちろん老け役は「ダウトあるカトリック学校で」でもメリル・ストリープは演じてますけど、真逆のキャラでこの人の厚みにまたまた唸ってしまいました。

 

現在(5/3/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  ダウト/あるカトリック学校で

 

 フィリップ・シーモア・ホフマンの不在をやはり何年もかけて味わうことになる、と痛感する教育をテーマにした秀作。メリル・ストリープの女優根性はやはり並みじゃなく、エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイヴィス(「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」)も負けじと巧い。

 

 このあとメリルエイミー「ジュリー&ジュリア」で再共演、フィリップとエイミーは3度(「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」、本作、「ザ・マスター」)共演している。戯曲がもとになっているから、それぞれのパートをその実力で持ちこたえなければならなくて、火花散る演技合戦は見ごたえあり。

 

 本作で提起されたテーマは教育に限らず、様々な場面で選択に迷った時にヒントなりそうだ。規則は遵守しなければならないが、“時に例外を設ける”という誘惑は万人が認めるところ。だが、法を守りつつ正義を貫くことも同時に可能だと訴えている(と勝手に解釈)合わせて「ハーバード白熱教室」をどうぞ。

 

 メリルの芝居が変幻自在なのはもうずっと前からだけど、「8月の家族たち」に繋がる変身ながら、まるで違う性質の人物。DVD の特典映像もご覧いただきたいんですけど、主要出演者の4人は実力者ですな。作品に入り込むだけでなく、美貌も一流。「おとなのけんか」の時は出演の面々が難病に立ち向かう人々になったら、と思ったが、この4人で軽妙なコメディに挑戦したら見るよな。
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