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ゼロ・ダーク・サーティ

  ゼロ・ダーク・サーティ

 

 2011年にニュースを知った時、経緯は知る由もないけれどそのシーンのイメージだけは出来た“ビン・ラディン殺害”。暗視スコープを装着し、最新のマシンガンを携えた海兵隊員が急襲、“クリア!”と叫びながら乗り込んでいってターゲットを蜂の巣に。案の定ラストシーンはその通りだった。もちろんその報を連呼するTVのニュースを見て怪訝になったわけですけれど、確認しようもない。ま、最近気がつきましたけれど、TVのニュースを商品情報ならぬ、“情報商品”と考えると自分を落ち着かせることができる。これでも商人のはしくれですから、ニュースが売りもの=商品だと昨今の流れは理解できる。同じものを違う場所で売る場合、違いは値段だけになる。お客さんは安い方で買うに決まっていますから、タダ同然に見えるインターネットに傾くのは必然。もちろん強みは値段だけではなく、早さも量も任意性においてもTV新聞より優位。

 

 ところが生まれ育った環境に前々からあったわけではない、この代物=ネットには正直ついていけない。やはり映画が頼みの綱というわけで、おかげさまで事件の“あらまし”のごく一部なれど、触れることができました。前売り券とは言え¥1400払っているし、映画は先々残る。オスカーにもノミネートされているし、情報商品としても信頼度は高いはず。で、映画はそもそもの発端となった“9.11”から始まる。次いでテロの容疑者を収監して拷問するところも映し出される。捕虜への不当な扱いを描いた作品は既にあったが(「グアンタナモ 僕達が見た真実」)、CIAの 通常業務としての拷問を冷静に描いている。指をちょん切ったりしないけど、水攻めは怖い(「ルート・アイリッシュ」 )。そんな現場に分析官マヤがやって来る。男でも嫌気がさす拷問に立ち会い、徐々に深みへと。男らしい映画が得意な女性監督キャスリン・ビグロー、適切な主役を得ました。

 

 監督の得た適切な主役がジェシカ・チャスティン、劇中彼女だけが役者に見えます。エモーショナルな部分を一身に背負っての熱演。既に「ベイドバック」でスパイは演じてますが、あっという間にメイン・ストリートに躍り出た。「ツリー・オブ・ライフ」が2011年ですから、スピード出世です。アホ女も演じられますが、職務に忠実かつ執念でビン・ラディンに肉薄する。ま、国家に忠実たらんとしたスパイが、マスコミに売られちゃう例もありますが、疑問を抱かず命令を実行していれば仕事は進む。もっとも内勤のCIAですが、現場はアフガニスタン。スパーロックのドキュメンタリーを見た時は、容疑者なんだから、パクって吐かせないでどうするの?とも思いましたが、そんなことはまるで通用しない現実世界。戦場にいると日常的な感覚は失われていく。「ハート・ロッカー」の爆弾処理エキスパートは嬉々として戦場に逆戻りし、戦場経験があることを白状するライトマン博士も戦場の誘惑に触れている(「Lie to me」 セカンド・シーズン第8話「戦場のクリスマス」)。

 

 彼女の執念はテロに遭遇し、友人を殺されたことで加速したのかもしれない。出番は少ないけれど、友人のジェシカを演じるジェニファー・イーリーは強い印象を残す(「コンテイジョン」しかり)。翻って男どもは揃ってへっぴり腰。マーク・ストロングなんか押しまくられてる上司役で信じられない。あの「ロビン・フッド」の悪役が典型的なお役所中間管理職。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」みたいに、オフィスのガラスを割られたりしないけど、現場とさらに上との間の板挟み。「スパイゲーム」でも嫌味なエリート然としていましたが、スティーヴン・ディレーンまでよく見ないと分からない。CIA長官役のジェームズ・ガンドルフィーニは「ロストガール」とは真逆で、言葉遣いが乱暴でマフィアの親分みたい。実際あの組織がそれっぽいのは「グッドシェパード」でも描かれた。

 

 「ネイビー・シールズ」があるから戦闘シーンは半端な出来だと笑われてしまう。ところが並行して鑑賞しても見劣りしない。むしろ事実を再構築しているコチラに比べるとアチラは劇映画なんだなぁと感心したりして。スパイ映画戦争映画の要素を持ち、事実を再構築するためにもドキュメント・タッチを採用。娯楽性に乏しく見えるのは「アルゴ」を経ているからで、最も際立っているのがラストシーン。ベン演じるスパイはひと仕事を終えて帰る家があるけれど、輸送機を独占して帰国する彼女は涙する。「フェイク」のラストでジョニー・デップは無表情でしたけれど、達成感のない仕事というのも確かにあるのかもしれない。それは明らかに殺害しなければならない民族の敵(「ザ・デット 〜ナチスと女暗殺者〜」)ではないことに起因するのか。執念で戦犯ラドヴィン・カラジッチを追ったカルラ・デル・ポンテは今どうなのか?と思わずにはいられない。

 

現在(2/16/2013)公開中
オススメ★★★☆☆ 

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関連作

 ザ・デット 〜ナチスと女暗殺者〜

 

 リメイク「ベイドバック」から先に見ると、幹の部分だけと感じるイスラエル産のオリジナル。イスラエルの映画はアモス・キダイ監督の「キプール」くらいしか観たことがない、かの国について無知なワシ。「ツーリスト」「スリーデイズ」「モールス」「ドラゴンタトゥーの女」など欧州産のリメイクが作られましたが、イスラエルの感覚が分からないと軍配は合衆国産にあがるかも。なんでもかんでもオリジナルが良いとは限らない。もちろん見所を“至れり尽くせり”配置したジョン・マッデンとこの監督は予算の点で溝が開けられている。

 

 でも低めの予算だからこそ演技者の力量は問われるわけで、リメイクでジェシカ・チャスティン、ヘレン・ミレンが演じた女スパイはコチラだと、あって当然のもの(家族)が削がれていて主軸として物語を引っ張っていく。高齢のナチ戦犯を追うだけではヒロイックだが、実は称えられてきた英雄には秘匿しなければならない秘密が・・・。同胞を大切にしなければ、存在理由さえ危うくなる民族ならではの踏み込んだプロットはまさに本作の核。ぜひコチラのあとにリメイクをどうぞ。逆はあまりオススメできません。 
オススメ★★★★☆

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