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明日の空の向こうに

  明日の空の向こうに

 

 観に行く劇場が決まってくると、目にする予告編も限られて、同じものを何度も見ることになります。自分がしつこいくせに、人からクドクドと言われると逆らう性質なので、“他にもないのかよ”となり頼りにするのがインターネット(ホントTV見なくなった)。もっとも使いこなす人にとってはライフ・ライン(生命線)でしょうけれど、ワシの場合はせいぜい“コマンドを入力するTV”に過ぎない。でもおかげさまで多種多様な予告編を星の数ほど見ることができる。さらに全部じゃないけど投稿されたコメントは参考になる。本作鑑賞の決め手はよく閲覧するサイトの他の方のご意見。店のお客さんでも「ネットで見たけどさ、アレ入ってる?」と尋ねる方もいて、もはや日常ですね。でもサイトで見つけたからって、お目にかかれるとは限りません、「善き人」なんてハラハラしました。

 

 良くも悪くも合衆国と分かち難い関係にある我が国では、IT化が進行していますけれど、地球上にはそうでない地域だってあります。ここで描かれているロシアとポーランドがまさにそれで、40年くらい前が描かれているのかと思います。冒頭駅の構内で寝ている主人公の兄弟が映し出される。年の頃は上の子が10歳くらいで、下の子は5歳くらい。喫煙御法度の国だけにいきなりびっくり、拾ったタバコを実に美味そうに吸うんだよなぁ。下の子=ぺチャがポスターにも使われていて、味噌っ歯が実に印象的だった。でも可愛いのはそこだけです、本気モードの孤児です。駅に住んでいるのはヒューゴも同じですけれど、あれは前世紀初頭。駅舎にしろもっと古びているし、人々の服装もまた・・・、むき出しの現実的な世界の日常。ペットボトルを引きずっているから今世紀には違いないけれど、ワシのガキの頃のようだ(板切れを拾ってきて秘密基地を作っていた頃が懐かしい)。

 

 で、宣伝では涙を誘う感動作のように見えますけれど、ジプシーの子供でも連れてきたのかな?と思わせるガキどもがすごい。一体どうゆう演技指導をしたのかわからないけれど、食い方がとにかく汚い。ま、帰る家がない彼らと同じことしてるどこぞの国の・・・、コレって粛清対象になるんだっけ?「お前らちったぁ静かにしろ!」と怒鳴りつけたくなるくらい、じゃれ方に可愛げがない。こいつらに比べたら「それでも生きる子供たちへ」に出てくる少年少女は、“きちんとした環境でお育ちになったのね”と褒めたくなるくらい。でも21世紀の金持ってる国の映画は、臆病になったことが図らずも見えてくる。「友だちのうちはどこ?」には適わないかもしれないけれど、彼らに寄り添いよく観察している結果の描き方。悲惨さをクローズ・アップすることもない(「闇の子供たち」)。

 

 子供の視線から描かれているのが、何よりこの監督のテイスト(是枝裕和ともどこか違う)。“ロシアからポーランドの国境を越える”というのが主題ですけれど、家無しの子供の冒険とも捉えられる。合衆国の“死体を見に行く冒険”のように気楽ではありませんけれど、“自らの出生に絶望した賢い若者の旅路”の悲痛さがない。もちろん命がけには違いないけれど、「イン・ディス・ワールド」とも違うのは田舎だからですかねぇ、水浴びしたりとワリと牧歌的。悲壮感もなにも連中にはそんな概念はなく、ただ“行ってみようぜ”だけなんだと思う。先々酔っ払ったトレーナーとボクシングを始めるかもしれない、などという想像も膨らむ。矢吹ジョーを思い出させるのはガキどもの仕草とその背景です。

 

 ポーランドという国は歴史も長く、「アヴァロン」などを見れば都市はピカピカでモロに先進国だけど、そうでないエリアもきちんと残っている。それはロシアもご同様で、意外に識字率が低くかったりする。ただペチャなんか、あのじいさんのところで暮らしてもいいんじゃない?とも思える雰囲気は印象に残る。観ているこちらの勝手な感慨ですけれど、我々が得ることで失ってしまった日常は貴重です(「四つのいのち」)。パソコンなんかなくて黒電話使っていたり、至れり尽せりの機械都市に住んでいる息苦しさからは自由だ。“親無しの彼らを見たら、ゲリラやら原理主義者やらテレビ局がよだれを垂れ流して喜ぶんじゃ?”などという邪念も浮かばない。吸血鬼の国ルーマニアがすぐそこなのに、経済吸血鬼の魔の手からは逃れられている。日本でホームレスを描くとファンタジーか、淡々としたドキュメントタッチになり、合衆国だとメッセージが込められる 。でもお国柄が違うと子供の描き方も、ホームレスの描き方も違って新鮮。

 

 「ソハの地下水道」は第二次世界大戦下のかの国が描かれていて、知ってる出身監督は「おとなのけんか」のロマン・ポランスキーくらいだけど、大切なものを残している。「ライフ・オブ・パイ」ではないけれど、どっち?と問われたらオッサンだけにコチラと答えそう。筋金入りの先進国ってこうなのか、デンマーク(「ヴァルハラ・ライジング」「未来を生きる君たちへ」)、スウェーデン(「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」「ぼくのエリ200歳の少女」)と見てきて、ドロタ・ケンジェジャフスカはまだまだ楽しみだ。「木洩れ日の家で」はもう見たから次は「僕がいない場所」だな。

 

現在(1/28/2013)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

 木洩れ日の家で 

 

 「明日の空の向こうに」の前に監督はどんな人なのか?を確認するために見たけれど、じっくり腰を落ち着けて鑑賞ながらも楽しませてくれる渋い1本。舞台になったポーランドの古い家とそこに住む人には、前世紀の日本にもあった雰囲気がある。つまり21世紀の我が国では失われた何か。現在の介護は至れり尽せりだけど、産業化に付き物の“何かが失われた、損なわれた”感触がつきまとう。祖母の最期の時お世話になって、実際に接した人たちケア・マネージャーさん、看護師さんには微塵の疑いもないし、ホントに感謝しております。でもTV宣伝が多いのは教育、医療とともに儲かっている証拠。税制でも優遇されるし・・・。

 

 合衆国は一人でじじいが住むこともできるし(「グラン・トリノ」「人生の特等席」)、法的な後見人(ガーディアンって言ってたな)がいれば認知症でもOKなケースがある(「WIN WINダメ男とダメ少年の最高の日々」)。カナダのジジイは豪放だったが、元英国首相に対して映画は冷淡な描き方だった。最晩年をどのように暮らすかなんてちょっと想像できないけれど、必ず訪れる瞬間で、涙腺を刺激せず、淡々と悲しみを極力排して描ききったドロタ・ケンジェジャフスカはさすが。目の付け所は荻上直子みたいだけど、全編モノクロで落ち着きがある。日常もきちんと描かれていて、“あの古い家に住んでる年寄りは普段何やってるのかな?”の素朴な疑問に対する答えにもなっている。

 

 驚かされるのが主演のダヌタ・シャフラルスカで、30歳はサバ読んでいるんじゃないか?と思わせる足取りの軽さ。訓練をしていないとまず無理な動作で、一応マラソン大会にも参加、ジョギングもしているから分かります。あの年齢で素早く階段を上がっていくなんてすごい。相棒のフィラがたぶん犬好きのハートを射抜いてしまうに違いない。「アーティスト」のアギーも顔負けの名演技で作品を引っ張っていく。血を分けた息子より嫌いな嫁の方が自分を・・・と思った瞬間に下す決断は清々しい。そう、最晩年でも自分を失わなければ、美しく人生の幕を下ろすことができるのだ。
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 ナチスが最も恐れた男

 

 総統に気に入られてひどい目にあったのはマックス・シュメリングですけれど、ノルウェーの英雄マックス・マヌスという人は、命をかけてナチと戦いました。タイトルがかなり大げさですけれど、こうでもしなくちゃ手にとってもらえない。ご覧になるとまさに“知られざる第二次世界大戦の側面”が見えてきます。「プライベート・ライアン」のように派手な戦闘だけが実態ではなく、「大脱走」のような抵抗も連合国の軍人はしていたし、レジスタンスの活動がなければ第三帝国の戦力を削ぐことはできない。テロ行為は帝国の戦力を効果的に削ぐ、と言っても合衆国への原理主義者の攻撃とレジスタンスはどう違うか?米帝(「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」ではそう呼ばれていた)は民主主義を押し売りするけれど、片っ端から民間人を射殺したりしない。あんなことしてれば恨みも積もります(でも絶対に人事じゃないよな)。

 

 ヨーロッパは総力を挙げてナチスドイツに立ち向かっていく。被害を被った国は全土に及び、フランスオーストリアポーランドと映画として描かれてきた。もちろん英国王も自らの試練を克服して人々に訴える。それだけでなく王室のつながりは重要で、英国はノルウェーの王様を受け入れ、レジスタンスの拠点として城を提供。かの国のお城は「砂漠でサーモン・フィッシング」にも出てきましたけれど、戦時中とは思えない風光明媚さ。ノルウェーの映画なんて「トロール・ハンター」くらいしか見たことないとけれど、国の英雄ですから描き方は根性入っているし、お金もかかっている。ただ主演のアクセル・ヘニーは熱演ながら、むしろ控えめに感じる。なぜってラストに実物の肖像写真が出てきますけれど、マックス・マヌスはかなりハンサムな人です。国の英雄を神格化しない配慮だったんでしょうか?
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