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君と歩く世界

   君と歩く世界

 

 「ヒッチコック」はなんとか知られているけれど、この作品を知っている女の子は皆無。皆さんもったいないですよ、もっとインターネットを活用して映画を漁ってみましょうよ、素晴らしい作品があなたを待ってます。昨今は作品ホームページで情報収集、金欠だけに劇場に足を運ぶこともままならない、取れる方法はこれしかない。もちろん最初にワシの心を捕らえたのは、主演女優マリオン・コティヤール。彼女が足を失ったシャチのトレーナーを演じるというだけで、どれどれとページを覗いたのが3ヶ月くらい前ですかねぇ、ワリとささやかな作りだったけど近所のシネコン2館で上映されている。

 

 予想では「ソウル・サーファー」と内容では被るな、「フリーウィリー」のようになるのか?「イルカと少年」のようなのか?と期待度十分。ところが冒頭からお目当てのマリオンは出てこない。なんと貧乏臭い父子が列車で移動している。ところがもうこの部分だけでこの作品に入り込んでしまう。フィルム撮影されているのがありありと分かる画像ながら、スサンネ・ビアの「未来を生きる君たちへ」を思わせるもので映画好きの急所を直撃、グイグイと入ってしまう。「明日の空の向こうに」でも描かれましたけれど、欧州の貧乏人は疑いの余地なく“持たざる者”で、列車内の食事もままならないし、ヒッチハイクで旅を続ける。ハビエル・バルデムの「BIUTIFUL ビューティフル」がそうだし、この部分で当たったなと嬉しくなる。旅の目的地は姉の家で、そこに居候するアリとサムの父子。スーパー勤めしている姉は、賞味期限の切れた食べ物を冷蔵庫に入れていたりして、実に生々しい底辺層の暮らしが浮き彫りになる。

 

 姉のところに転がり込んだが、元ボクサーの経歴を活かしてガードマンの仕事を始める父親のアリ。ディスコの仕事中に知り合うのが、マリオン演じるステファニーというわけ。それにしても登場シーンでいきなり鼻血出しているとは。この辺が欧州産の心意気で、現実離れしていない。シャチのトレーナーだって夜遊びするし、ディスコで喧嘩だってする。「エディット・ピアフ愛の讃歌」でも美貌を封じましたが、彼女の可憐さは後のお楽しみ。仕事中に事故が発生して、彼女は足を失ってしまう。ただし衝撃的なシーンは省かれて、事故後を丁寧に描いているのがまた素晴らしい。足を失うのは想像も出来ないくらい辛い思いだし、部屋にひとりで籠ってしまうのも仕方がない。ところがそこにアリが絶妙に絡んでくるのだ。南仏のリゾートだから事故は新聞でも報じられて、知っていたのでしょう、何気なく彼女の元を訪れる元ボクサー。引きこもりの彼女を外へ連れ出すんですけれど、自然なんだよなぁ。トレーナーだけに膝から下を失っても、泳ぐことは難しくなくて外の世界へ踏み出すステファニー。

 

 もちろんココまでの過程をじっくり描いて、ひとつの感動作にすることは出来ます。ところが欧州産はもっと様々な要素を無理なく盛り込んでいく。“禁じている好奇心”がためらわせる、義足を作る部分とかも描き、接近した二人がSEXに至る部分が良かった。アリがふと「じゃ、いっちょうやってみるか?」と言ってするわけですけれど、終わった後の、はにかむマリオンの仕草が可愛くてたまらない。新旧の監督がメロメロで(ウディ・アレン:「ミッドナイト・イン・パリ」スティーヴン・ソダーバーグ:「コンテイジョン」リドリー・スコット:「プロヴァンスの贈りもの」クリストファー・ノーラン:「インセプション」)、名だたる俳優をノック・アウト(ジョニー・デップ:「パブリックエネミー」ラッセル・クロウ:「プロヴァンスの贈りもの」)してきて、ブルース・ウェインまで騙したのに、こんな表情をする彼女が拝めただけでも大満足。

 

 でも驚くべきことにこれだけでは終わらず、21世紀の現実を作品世界に反映させている。アリは気の良い男だけど、子育てには向かない。警備員の仕事をしているけれど、貧しいから金になることを始める。監視カメラをこっそり取り付け、経営者が内密に従業員を監視する違法行為。そして自らの特技を活かして、賭け格闘技に参加。名探偵も格闘技が好きですが、経歴があってもチャンピオンでもなければ食えません。転戦する彼に同行するステファニー。ところが監視カメラがアダになって、それが居候先のお姉さんに波及する。結局振り出しに戻るハメになるアリ。だが、人生を放り出したりせず再起をかけて彼は地道な努力を開始。息子サムの事故によって、ステファニーの大切さに気づき、ついに・・・。ここまで我々と同じ厳しい今を生きる人々を描き、希望を見出すことのできる恋愛映画はなかなかお目にかかれない。父子とステファニーのチャプターは次に移りますが、ラストの身体にジワジワくる感動は、今年もう一回味わうことができるのか?

 

 「ソウル・サーファー」「リアル・スティール」の合体技を現実の世界を舞台に展開、さらに恋愛の要素までと実に贅沢。欧州産の障害を乗り越える人を描いた作品、現実世界を描いた作品は資本主義の総本山=合衆国産とは一味違う。インターネットが自然に描かれているのも時代記号で、フィルムの感触が何より絶品だった。合衆国版庶民が主人公の「エイリアン・バスターズ」が面白かったよと同僚にオススメしたら、「底辺の人の話か・・・」と返されてしまった。でも映画は一般大衆に向けて作られているんだから、当然の流れなんだけど。ワシなどはTVを見なくなったから、経済吸血鬼とか、使嗾犯が操る政治家ばかりを見せる夢の世界からは遠ざかっている。「デイブレーカー」が今更ながら良く出来てたんだと痛感する資本主義の末期。

 

 アカデミー賞はかすりもしないが、インディペンデント・スピリット賞は獲得。受賞作品で2012年は独立系の映画祭に軍配が上がっている、と勝手に思っているので「ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜」が楽しみだ。底辺の人々ではなく、映画は我々の隣人を描く。劇中かかる曲がB-52'sのlove shackとkaty perryのFireworkで文句なし。「最強のふたり」もEarth Wind &Fireがたまらなかったけれど、ジャック・オーディアール監督作は「真夜中のピアニスト」からいくか。遅ればせながらは「ソウルキッチン」のファティ・アキンとか「未来を生きる君たちへ」のスザンネ・ビアの時と同じだな。現時点で本年度ナンバー・ワン。

 

現在(4/18/2013)公開中
オススメ★★★★★

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 エディット・ピアフ~愛の讃歌~

 

 フランスの国民的歌手エディット・ピアフの生涯を描いた偉人伝音楽方面。人々に喜びを与える音楽家は、どうしても幸せとは縁遠くなってしまいます。幼少期に辛い過去を持つのはレイ・チャールズジョニー・キャッシュもですけれど、この人もお父さんが軍隊に入隊して売春宿に預けられてしまう。ところがそこで彼女を育てるのが娼婦たちで、過酷な現実ながら愛される幸運に恵まれる。成長して街角で歌い、ナイトクラブのオーナーに見出され世に出ていく。見出すオーナー役でかの国を代表する名優ジェラール・ドパルデュー(「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」)まで出演。でもマリオン・コティヤールは一歩も引けを取らないお芝居で、化けっぷりは見事。

 

 代表曲“愛の讃歌”はもちろん何度も聴いているけれど、“水に流して(Non, je ne regrette rien)”は「インセプション」で何度も使用されているのだそうな(ウィキペディアばっかり読んでるな)。クリストファー・ノーランがマリオンを起用したのも本作によるものか。監督は「クリムゾン・リバー2」のオリヴィエ・ダアンで、撮影は「ミックマック」の永田鉄男と作品に馴染みがある人。1918年から1963年に至るまで描かれるのだから、第二次世界大戦の部分は?とも思いましたが、歌手エディット・ピアフに焦点を絞るためには割かなければならないでしょう、でないと3時間以上の超大作になってしまう。マレーネ・デートリッヒもチラリと顔を出すのみ。詳細はぜひウィキペディアをご参照ください。それにしてもプロボクサーと大恋愛とはマックス・シュメリングを思い出しちゃうんだよな。

オススメ★★★★☆

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