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スマイル、アゲイン

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 昨日の“最後にどうなるかまで知っている”「宇宙戦艦ヤマト2199」引き続き、結末まで分かりそうなネタ=家族の絆+スポ根の感動作。映画観賞とは“予定調和の確認を行っているに過ぎない”かもしれないけどさ、あまりに不確定要素で満ち溢れていて、信じられないスピードで進む21世紀ですもの、ホッとしたいじゃない。お目当てはもちろん監督のガブリエレ・ムッチーノが、どんな風に描いてくれるか?で、尊厳死と臓器移植貧困と雇用をアメリカ人とは異なる視線で描いた彼には期待出来るし、劇場で体験できるのが何より。

 

 もちろんストーリーはチラシにも書いてあるし、ホームページでも、予告編見ても掴めます。ただし出演者のごくフツーに化けた姿は楽しみだった。製作もしているジェラルド・バトラーは、暑苦しかったり下品だったり家族の復讐に執念を燃やしたり「エンド・オブ・ホワイトハウス」が6月ですし見逃した「マーヴェリックス」まで出っ放しの売れっ子です。まるで記憶にない「ドラキュリア」「サラマンダー」から10年以上を経て、シェイクスピア劇までとキャリアは順調。ま、英国出身のこの人を、てっきりオーストラリア出身と勘違いしていたくらい、カッとなると見境がないキャラクターは期待通り。ところが本作には別の魅力が発揮されていることが予想されるので楽しみだった。

 

 で、彼をとりまく女優陣はオッサンにとっては華盛り、決しておばさん軍団などと呼んではいけません。超大作で激しいアクションもご披露できる美女たちですが、予告編から察すると、彼女たちの自然な魅力を堪能できそう。“最後にショーン・コネリーをモノにした女優キャサリン・ゼタ=ジョーンズは昨今、「ロック・オブ・エイジズ」とか「噂のギャンブラー」とかで、おばさんキャラを笑いに使用しておりました。でも本来の美貌を目尻の皺なんか修正しないで登場。10代から妖艶だったユマ・サーマンは、金ばら撒いている亭主役のデニス・クエイド(「ソウルサーファー」とはまるで別人)ともども、お間抜け奥さんぶりを発揮。そしてジェシカ・ビールですよ、たまらなかったのは。「特攻野郎AチームTHE MOVIE」の“ザ美人”な捜査官が良かったし、「トータル・リコール」で激しいアクションにチャレンジ、「ヒッチコック」でまた化けているけれど、スッピンの美人で更に驚かされる。「スタンド・アップ」の時のシャーリーズ・セロンがそうですけれど、“ザ美人”の素顔はまた違った魅力が拝めてたまりません(旦那さん「TIME/タイム」のジャスティン・ティンバーレイクだったのね)。

 

 かなり豪華な面々を取り揃えて、どういうお話が展開するかというと、中流家庭の日常が展開する。本作は予想をことごとくスカしてくれる清々しさに貫かれている。元サッカー選手のジョージに扮したのがジェラルドで、英国人だし当然ちゃんと曲芸みたいなシュートも決められる。ところが舞台は合衆国のバージニア。「エリックを探して」とか「ぼくのプレミアライフ」などの予想がココでアッサリ外れる。確かにアルファ・ロメオに乗っているので、元花形選手を物語るんだけど、別れた妻と子供の近くに越してきて金欠。TV番組で解説者をやろうったって、合衆国ですからね「人生の特等席」みたいにはいかない。そしてひょんなことから、息子が所属するサッカー・チームのコーチになる。まぁ前任者の仕事ぶりを見れば、ダメさ加減は明白。何をするにもしょっちゅう電話かけてお喋りしているって、ダメな大人を象徴するよね(「ロビイストの陰謀」「おとなのけんか」)。

 

 そして元プロ・アスリートだけに、“お母さんたちの注目の的”になって、てんやわんやのお話になっていく。最初に迫ってくるお母さんがジュディ・グリアで、目立たないようでこの人好きだから、出てくると画面に目が釘付けになる。「ハート・オブ・ウーマン」からチラッと出てくる「ラブ&ドラッグ」を経て「ファミリー・ツリー」まで同じような役だけどなぜか魅入ってしまいます。で、キャサリンはやり手のテレビ局にコネもある美人ママで、仕事をエサにコーチに迫ります。ユマ・サーマンは「パルプフィクション」再びって感じの、お色気ムンムンでアパートに乗り込んじゃう。おまけに金ばら撒いている旦那もはた迷惑なことになったり。そんな騒動の中。ジェシカ扮する前の奥さんからはますます呆れられちゃうし、距離を縮めたい息子の気持ちもどんどん離れていっちゃうし。

 

 自分に自信のあるダメ親父はどうしても子供と上手くいかない(「リアル・スティール」「君と歩く世界」も)。子供を理解する努力はすれども、根が“子供のまま”だから、やらかしちゃう。ホラーを見せりゃあチビっ子は寝られなくなる。得意になってフェラーリ運転させちゃったら、後でお母さんの目を丸くするのです。子供がスポーツ・カーを嬉しげに乗るのは「ミシェル・ヴァイヨン」みたいですけれど、画面が緑豊かで全然合衆国っぽくない。むしろ監督の母国イタリアの車は“緑を基調にした自然美”に映えることを、車の国=合衆国で誇らしげに描いているような。また外見は自然美に溶け込んでいるけれど、その演技力でアホな笑いを女優たちにのびのび演じてもらって「ローマでアモーレ」のウディ・アレンのようだ。シリアスな感動作ではなく、ありえないラストに至るまで、ガブリエレ・ムッチーノという人はイタリア人気質をひた隠しにしていたのかも?

 

 確かに“家族の絆”“スポ根”の要素も入っているし、子供たちがサッカーを楽しむ場面は「コッホ先生と僕らの革命」のように目に優しく映る。でも陽気なてんやわんやを、資本主義にとことん荒らされた合衆国で((株)貧困大国アメリカをご参考までに)、風通し良く描いた監督の手腕はなかなかでしょう。「フィールド・オブ・ドリームス」は亡き父とのキャッチボールが感動的でしたが、親子3人のパス回しでこの一家のチャプターは次に移る。分かりやすい感動作の要素なれど、ほど良い味つけで涼しげに。美女の自然な仕草と思わせて、てんやわんやのギャグ満載。シリアスな結末が予想されるも、あり得ない楽天的なシーンでしめる。思い込みとか、予想とか、ことごとく外れて清々しいこともあるのです。

 

現在(8/29/2013)公開中
オススメ★★★★☆

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 ガキの頃は学校から帰ってきて、このTVシリーズを見ていたものだ。細かいところはサッパリ忘れちゃったけど、生意気なチビが監督つかまえて「くされバター」と呼んでいたのはクッキリと記憶している。往年のTVドラマを映画化する(元は映画だけど)パターンで、特攻野郎Aチームに近いでしょうか。本作で“腐れバター”ことモリス・バターメイカーに扮したのがビリー・ボブ・ソーントンで、“大リーガーくずれ”が良く似合う。倫理のカケラなんて微塵もなく、落ちぶれて害虫駆除の仕事をしている。また酒浸りで、成れの果ての見本のようだ。まさに「ハートボール」のサム・ロックウェルとご同様に、やる気満々で臨んでいる。本人はオシャレのつもりのダサい髭なんて、なかなかのアクセントだ。

 

 で、当たり前ですけれどヘッポコチームをなんとかトレーニングして、決勝戦まで進んでいくのはスポ根の王道です。このもう日本の時代劇を見ているような展開なのに、全然飽きない、目が離せない。元のTVシリーズからエッセンスを抽出していることは、おぼろげながら掴めるライト・ユーザーにとっては、楽しいリメイク。でもさ、チームの子供の母親にまで手を出すとはさすが映画ってところでしょうか。腐れバターとナニしちゃうお母さんが、マーシャ・ゲイ・ハーデンで、お母さん役が板についてきたけれど(「ローラー・ガールズ・ダイアリー」など)、「ミラーズ・クロッシング」から随分経つのな。

 

 「スキャナー・ダークリー」のような実験的手法も、「バーニー/みんなが愛した殺人者」のように一見まともで、実はこっそり新しい仕掛けを施しているのも撮れるけれど、ストレートなこの種の作品も難なく手掛けられる監督のリチャード・リンクレイターは幅の広い人だと再確認。もちろん21世紀の現実を知っているので、チームのチビっ子たちは多様な人種が混在している。仲悪そうでも仲間のために一肌脱ぐってシーンにオジさんグッときてしまうのです。もう寸分違わず「ハートボール」と同じ構造なんだけど、つい見ちゃう1本になるのは確実、「スクール・オブ・ロック」とご同様にね。

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