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プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

  プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

 

 ライアン・ゴズリングは特に好きな俳優じゃない。ただ店のお客さんで彼を熱狂的に支持する人がいて、意識の外側にいかない。彼女に言わせると「ブルーバレンタイン」を見ると切なくなるのだそうな。で、なぜか連続して作品を拝むことになる俳優さんで、昨年が「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」「ドライヴ」を同じ日に観賞。今年は「L.A. ギャング ストーリー」が先月で、本作は予告編で“こりゃあ良さそうだぜ”という予感はあった。そしてもちろん冒頭からため息を漏らすことになる。

 

 「PARKER/パーカー」にも出てきた簡易遊園地(正式名称知りません)、その喧騒の中を、ライダース・ジャケットを着た男が歩いている。このなんの変哲もないシーンが絶品で、一気に作品世界に引き込まれる。「セレステ∞ジェシー」でキュートなラシダ・ジョーンズに釘付けになったが、バイクの曲芸乗りに扮したライアンは、久しぶりに男を感じさせる。トムブラッドジョニーでさえも、なぜか乗り物(馬、車、バイク)が似合わない。ところがライダース・ジャケットを着こなす、それほど美形ではないこの男はピタリとハマるのだ。バイクに関してはここ最近女の子に軍配が上がっていて、「アイ・アム・ナンバー4」のテリーサ・パーマーも、「ドラゴン・タトゥーの女」ルーニー・マーラも颯爽としている。しかし森を疾走するバイクのシーンは「汚れた血」にも劣らない。

 

 パトリック・ジェーンもサーカスの一員でしたけれど、彼らは各地を転々とする生活を送っている。男臭いバイク乗り=ルークはもちろん女に不自由しないので、その土地その土地で“一夜のカンケイ”していたのでしょう。ヤった女を訪ねるとそこには自分の息子がいる。一夜の女=エヴァ・メンデスがまた実に生活を感じさせる疲れを、その表情に刻んでいて申し分なし。「アザーガイズ」のではなく、「アンダーカヴァー」の彼女を思い出す。曲芸の才能はあっても、堅気の生活は無理なルークは銀行強盗に手を染める。前日に「セレブの種」を見ていたせいか、ジョン・タトゥーロのセリフ「金に困れば悪いと知っていても・・・」がまさに現実化。話を持ちかける修理工が、どこかで見たことあるなと思ったらベン・メンデルゾーン。「ジャッキー・コーガン」でもショボい強盗が似合っていましたがこの人も得難い。息子への思い、“帰る場所”が欲しかった男なれど、犯罪は悲劇として帰結する。それにしても追い詰められるシーンが迫真で、逃走シーンは手持ちカメラの効果でしょうか「NARCナーク」のようだ。

 

 なかなか出てこないと思っていたブラッドリー・クーパー扮するエイヴリーが次のチャプターを担う。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のように、ルーク殺害によって地元のヒーローにはなる。ただケガから復帰した善良な警官には、21世紀の現実が待っていて、徐々にその正義が失われていく。ここでレイ・リオッタが、警察組織の腐敗を代弁しているかのような男をきっちり刻む。殺された強盗の家に行って・・・、ありそうな話で怖い。ヒーローになったけど、腐敗弾劾もアダになって警察内部で孤立するのか・・・。ところが彼には狡猾さがあって、まんまと生き延びることができる。「世界にひとつのプレイブック」とも違って、ブラッドリーがやけにツルツルした顔をしているなと思っていたら、それは後の仕掛け。さらにココまでの過程でパソコンのモニターや、使い捨てカメラを使っているところで気がつくんだけど、物語は今ではないのだ。そして最終章は15年後に移行する。

 

 取引上手のおかげでまんまと出世したエイヴリーなれど、仕事中毒には家庭の分解がつきもの。年代記は悲劇が接点になった者たちの息子の代になる。見方はそれぞれでしょうけれど、子供に大人が“目を向けていない証拠”のような2人の息子はこの監督ならでは。演じるディン・デハーン、エモリー・コーエンは将来性がある役者さん。レオナルド・ディカプリオに似ているデインもだけど、エモリーは「WIN WINダメ男とダメ少年の最高の日々」のアレックス・シェイファーに負けず劣らず芸達者。また21世紀のツールIT機器により、子供たちは“大人が隠している事実”にやすやすとアクセスしてしまう。底辺層が金に困って犯罪に手を染める、取り締まる組織は腐敗している、子供たちは放ったらかし。年代記にしてこれらを淡々と描く、監督デレク・シアンフランスの力量は計り知れないですな。

 

 「裏切り者」「トゥー・ラバーズ」のジェームズ・グレイのようになるのかな?の予感は的中で、賞を獲らないことも勲章ですよ。ニューヨーク州といっても合衆国はエラク広いですから、自然がたっぷり残る退屈な土地だってある。作品ホームページを覗いたら、撮影が「ひかりのまち」「SHAME-シェイム-」のショーン・ホビット。絶品の景色も雰囲気を醸し出すのに大いに貢献、好きになっちゃうわけだよね。父のバイクを継いで彼方へ走り去るジェイソンの辿る運命が、「イントゥ・ザ・ワイルド」のようにならないこと祈るのみ。

 

現在(6/6/2013)公開中 
オススメ★★★★☆

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関連作

  汚れた血

 

 天才レオス・カラックスによるエイズを題材にした傑作。公開当時世界が震えあがった後天性免疫不全症候群(エイズの正式名称)、いち早く合衆国では「フィラデルフィア」(93)が作られたが、流行が人為的な側面もあったことを「運命の瞬間」(93)も描いている。たださすが先進国にして、映画発祥の国フランスだけに、本作は86年に公開されている。さらに“免疫の”を強調するのではなく、愛のないセックスによって感染する“STBO ”とするところなど、映画にしか伝えられないやり方を十分に発揮させている。ま、監督に尋ねたら怪訝な顔をされるかもしれない。ボスニア紛争をモチーフにした「ポーラX」も早い段階で出てきたし、天才は先読み。

 

 顧客満足度は完璧な映画作家だけに、20年以上たってもその映像美は脳裏に焼き付いて離れない。色彩の鮮やかさ、特に黒地に浮き立つ赤はどうだ。ジュリエット・ビノシュの美しさはどうだ。彼女に限って言えば、監督の恋人だっただけあり、以後本作以上に美しい彼女にお目にかかる機会には恵まれていない。自分のこめかみに銃をつきつけて“人質”ってのはギャグなんだろうけれど、監督の分身=ドニ・ラヴァンの見せ場もデヴィッド・ボウイが流れるトコ、腹話術も刻まれている名シーン。またバイクを描かせると絶品で、合衆国映画がなかなか越えられないのだ(「プレイス・ビヨンド・パイン」が肉迫)。ジュリー・デルピーも確実に少女の美しさで、ジュリエットとご同様に彼女の出演作も良く見たな。ラストシーンは永遠。

オススメ★★★★☆

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  ランズエンド -闇の孤島-

 

 渋いキャスティングで、無視できないレンタル屋ストレート。だってポール・ベタニーとマーク・ストロング共演ですよ。合衆国だとジェームズ・グレイ(「アンダーカヴァー」「裏切り者」)の雰囲気に近い。監督のニック・マーフィーは「アウェイクニング」も手掛けており、この手のサスベンスは得意そうだ。タイトルがBLOODというくらいで、血脈と言うか一族にまつわる物語が可能なのはアイルランドならでは。「レクイエム」なんかそうだし、「ザ・ガード西部の相棒」も。ポールはやり手の刑事で、「マージン・コール」「ツーリスト」とは違った芝居をご披露。マークは「ぼくのプレミアライフ」なんて発見で、「キック・アス」みたいな悪役が期待されるかもしれないけれど、思いやりのあるお医者さんとかが似合いそうだ(いつか見てみたい)。連続殺人犯を島民から頼りにされている刑事一家の兄弟は果して・・・。ぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★☆☆

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