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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 

 

  レオス・カラックスの新作「ホーリー・モーターズ」は見逃しちゃったよ、ホントに観客が忙しくなった21世紀。「もうひとりの息子」の時と同じで、おすぎさんが“おすぎのビデ・シネプレビュー”で紹介してくれなかったら、見逃すところだったジム・ジャームッシュ最新作。「リミッツ・オブ・コントロール」が2009年で、出演作の「あまり期待するな」がレンタル店に並んでいるけれど、4年が経過しているのか。リリース期間が短すぎるのは胃にもたれるけれど、間隔が開き過ぎると心配になる、観客とはほんとに勝手なものです。

 

 ただこの人の場合、テレンス・マリック(「シン・レッド・ライン」)に事情は近く、「コーヒー&シガレッツ」「ブロークン・フラワー」などでやっと、“ジャームッシュ慣れ”してきて、前作に参ってしまっただけに新作は待望だった。おまけに吸血鬼映画をこの人が撮るとは意外です。で、中身はというと「ゴースト・ドッグ」が近いかもしれない。フォレスト・ウィテカーのアレは殺し屋映画だけど、テンポが他のアクション映画とはまるで違って新鮮。それを言ったら、馬がテレテレ歩いている「デッドマン」だって似たようなもんなんですけれど・・・。

 

 ニール・ジョーダンの「ビザンチウム」が9月にあって、フランシス・フォード・コッポラの「Virginia/ヴァージニア」は去年で、トワイライト・シリーズが完結しても絶えないモンスターもの。インディ映画界の巨匠(allcinemaに書いてあった)のアプローチはというと、生活感漂うインテリっぽい中身になっていてやはり個性的。身近にいてもおかしくない吸血鬼という点で、岩井俊二の「ヴァンパイア」は先行している。ではジャームッシュ版の特徴はというと、知性的な面が強調されている。不滅のヴァンパイアだけに、知識の蓄積は人類を軽く凌駕する。

 

 エラく長い時間を生きてきたわけだから、歴史的瞬間に立ち会っていても不思議じゃない。最初はヴィンテージのギターで、バイロンなどの名が語られ、あの劇作家の真実も知っている吸血鬼たち。ケン・ラッセルの「ゴシック」が今あれば、参考になるし一緒に楽しめそうなんだけど(DVDレンタルありません)。「ハイランダー/悪魔の戦士」が大好きな理由もココで、気の遠くなるような時間を旅する役は「オルランド」でティルダ・ウィンストンも演じている。彼女が演じるイヴがI-Phoneで、デトロイトにいるアダムと画像を交えて話しているのはまさに21世紀の時代記号。

 

 テンポは実にジャームッシュっぽく進み、事件は発生するけれど(「SHAME-シェイム-」みたい)、吸血鬼は超人的なパワーも超能力もなく(この辺は笑えます)、アンダーグラウンドに生きる。この点もらしさで、匿名の音楽家として生息しているアダムが体現。実体化しているのがトム・ヒドルストンで、「アベンジャーズ」だとボコボコにされるロキだけど、このスタイルだったら女性ファンが急増しそう。「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」のスチュワート・タウンゼントとか、「シンパシー・フォー・デリシャス」のオーランド・ブルームとかがタイプの女の子はいるもんね。

 

 やらかす妹のエヴァをミア・ワシコウスカ、あえなく餌食になってしまうアントン・イェルチンと幼いと思っていたらあっという間に成長で、オッサンびっくりです。ミアは既に「ジェーン・エア」で大人っぽかったし、「スター・トレック/イントゥ・ダークネス」ではまだ少年っぽいチェコフなんだけど、アントンもあの「アトランティスのこころ」の少年でしたからね。でも重鎮のジョン・ハートはすごいよなぁ、「インモータルズ/神々の戦い」「裏切りのサーカス」を最近観たなと思っていたら、ティルダ・スウィントンも出演する「スノーピアサー」がストックされている。

 

 資源枯渇でにっちもさっちもいかなくなった「デイブレーカー」より、本作はさらに深く21世紀の世界を考察している(と勝手に解釈)。よく考えなくなった人類の血は汚れるばかりで、吸血鬼にゾンビ呼ばわりされる。「石油が終わったら今度は水を奪い合ってる」と言われちゃうって情けないよな。内田樹氏のツイッターで反知性主義的傾向と出ていたけれど、インテリのジャームッシュから見たら“世も末”なんでしょう。蛇足ながら、ジェフリー・ライトが出てきてビビるところはなかなか。夜しか映らないから「ナイト・オン・ザ・プラネット」っぽいし、2〜3年で新作撮ってくれないかな。

 

現在(12/30/2013)公開中
オススメ★★★☆☆

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  巨匠ニコラス・レイ教授の「映画の授業」2 あまり期待するな

 

 てっきりジム・ジャームッシュが出演しているから、新作公開を待たされている観客に向けてのタイトルかと思いこんでいた。だが、映画に触れる機会をくれる見ごたえあるドキュメンタリー。映画監督ニコラス・レイの作品は見たことがないハンチクな映画好きなれど、「アメリカの友人」、「ニックス・ムービー」でその忘れられない風貌はくっきりと記憶している。彼の映画作りを追い、その実像に迫り、合衆国の時代背景(70年代)までも知る手掛かりになる。おまけに“師と弟子”のあり方を垣間見せてくれます、ぜひご覧になってご確認を。

 

 優れた映画には役者の演出が何より重要で、技術はそれに従うのだは「モンスターズ地球外生命体」を観ても分かるし、ヒッチコックの映画を見てもクリント・イーストウッドもウディ・アレン(「ローマでアモーレ」)も一目瞭然。監督とは「役者の心理を操る術が不可欠なのだ」が第一義。従うはずの映像技術もおろそかではなく、既にビデオの時代に突入していて(「ブギーナイツ」を参考までに)、新しい映像表現も可能になってきていた70年代。教え子たちと共に「ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン」を四苦八苦しながら製作。

 

 21世紀の今、彼が撮るとしたら果たしてどんな作品が生み出されるか?という想像は楽しい。映画に惜しみなく自らを投じる人は大勢いても、技術が伴わなくては無理。破滅型の人間が向いているわけではないけれど、人に対する好奇心がやはりカギなのだを再確認した。「アワーミュージック」のジャン=リュック・ゴダールが彼を評した言葉は核心を突いていて、映画の最後に登場するビクトル・エリセ(「エル・スール」)も失敗作とされた「ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン」について語っている。ヴィム・ヴェンダースがただの憧れで「アメリカの友人」に出演させるわけもない。
オススメ★★★★☆

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