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ローン・レンジャー

    ローン・レンジャー

 

 事前に観た店の若い人が“イマイチ”と言うと、顔がほころぶようになった。偏屈なオッサン化に拍車がかかっております。「どアウトですよ」と言われた「風立ちぬ」も完全にストライク・ゾーンだった。2011年の「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」以来、ジェリー・ブラッカイマーが映画製作するわけだし、“中身が薄い”と批判されても、面白いに違いないと自分に言い聞かせていた。で、トシ取ると姑息になるのが人間の常で、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のゴア・ヴァービンスキーだろ、奴で1本ズッコケたのがあるし、と不安材料もあったので「ランゴ」を劇場に行く数時間前に見て確認。“大丈夫だ、今の彼ならつまらんものは撮るまい”と、カメレオンが主役のCGアニメーションのおかげで、劇場に運ぶ足が軽くなった。

 

 元ネタは1933年まで遡るラジオドラマなのだそうな(劇中にもこの年代は使われている)。ラジオドラマを映画にしたのはアレック・ボールドウィンの「シャドー」くらいしか知らないけれど、DVDレンタルないんだよね。そして国民的人気が持続している「ローン・レンジャー」はテレビドラマになったり、映画化もされているのだそうな。ところが全て確認できない、名前は知っているけれどホントのところは果てさて?昨今「スパイ大作戦」「宇宙大作戦」「特攻野郎Aチーム」「チャーリーズ・エンジェル」「ダーク・シャドウ」もリニューアルされているけれど、そんなに長く生きてないから特攻野郎Aチームくらいしかリアルタイムで見ていません。ただ合衆国の人にとっては人気なんだろうなぁという程度の知識。年配のお客さんに「ローン・レンジャー面白かったですよ」と話を振ってもリアクションは薄い。

 

 ま、若いアメリカ人にとっても似たような事情だろうから、西部劇ネタの一つ。先行する「ジャンゴ 繋がれざる者」に足りなかった要素を全開に出来るのが大作の強み。やりました、人馬一体の冒険活劇になっております、ワクワクしながら画面に釘付け。西部劇じゃないと、この手に汗握るアクションの展開がどーしても嘘っぽくなっちゃうのよ。近未来SF「プリースト」が分かりやすいけれど、全編CGなのがモロに出て、“こりゃ漫画だから”と一歩引いて楽しむことになる。「リンカーン秘密の書」吸血鬼映画だけに、人間離れした技を繰り出してもスルーできる。現代の場合、実物を使って上手くいったのが「アンストッパブル」。ただ時速100Km以上で疾走する列車に馬が追いつかないだけでなく、カメラだって観客だって追いつけない。「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」以来かなぁ、おっきたきたってなっちゃう感じ。

 

 馬の部分はさすがに全部をCG処理にするわけにもいかず、ローン・レンジャーに扮したアーミー・ハマーが乗りこなしていました。笑いのテイストもまぶされているから、「マーヴェリック」っぽくて楽しい。ホモ臭全開かと思えば、浮き立つ美貌をフルに活かしての王子様にも変身、この役はこの人にピッタリでしたね。出てきた時は笑ってしまいましたが、ガタイ良いし、輝く美貌を封じるのにマスクは最適。で、相棒のトントが乗り物が似合わないジョニー・デップ。実はマスクが脱着可のローン・レンジャーとは違って、全編メイクを落とさないから素顔は一度も拝めないのだ。「デッドマン」の時はインディアンに導かれていたけれど、今回は兄の復讐を誓う男をズッコケながらも助ける。いつの間にかこの人も兄貴分が板についてきましたな(「21ジャンプストリート」)。

 

 復讐もテーマの一つながら、もう一つはトントが被った“割に合わない契約”。見事ネイティヴ・アメリカンを騙してきた史実を、作品に込めることに成功。「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」でも合衆国の傲慢さをチクリとやりましたが、ジェリー・ブラッカイマーはディズニー映画なのに平気なんだね。「ランゴ」の監督ですからやってくれるだろうと予感的中。英国はアフリカでせっせと線路敷いてますけれど(「ゴースト&ダークネス」)、開拓時代の合衆国では、鉄道会社を“敵対的買収”する悪党の金の出どころは実に胡散臭い。ま、実際はどうだったか不明ながら、これはもう21世紀にピッタリのお話です。大統領を称揚する作品(「リンカーン」「エンド・オブ・ホワイトハウス」)がある一方で、国家を利用している悪党も描かなくちゃ。ワルは兵隊すら味方につけますからね。

 

 悪役の面々がやる気満々でストリップ映画の片鱗も見せないのがトム・ウィルキンソン(「声をかくす人」)、歯並び大丈夫か?のウィリアム・フィクトナー(「デート&ナイト」がオススメ)も良いし、手先の兵隊にされるバリー・ペッパー(「7つの贈り物」をぜひ)など揃いも揃って楽しませてくれます。おまけにヘレナ・ボナム=カーター(「英国王のスピーチ」)がねぇ、姉さん役に無理がなくなっちゃったのね。かなり豪華な人々を自在に配置できるのは大作の強みだし、実話を元にした作品も大切だが、意外に“現代の悪”を暴露する役目もキッチリ担っている。そして勧善懲悪という現実にはありえない結末も、まず現実にはありえないアクションも見せてくれるのが娯楽作の王道。で、あともう少し上映時間が短ければ完璧。ジジイの監督たちならスパッと切っちゃう部分が批判の対象なんだろうなぁ。

 

現在(8/10/2013)公開中
オススメ★★★★☆

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  ランゴ

 

 CGアニメーション作品は「トイストーリー」から数えて20年近く経過した。「ウォーリー」からピクサー社製はご無沙汰しているけれど、人気が定着しているからチビっ子たちは嬉しそうに借りていく。ま、「シュガー・ラッシュ」とかは30代以降のゲーム世代まで虜にするんだから、ニクイ戦略だなと感心してしまう。予算軽減にもなるし、派手な映画には欠かせなくなったし、CG不使用の大作を探すのが難しい昨今。ただ存分に使いこなしているのがスティーヴン・スピルバーグ「タンタンの冒険」だとすると、この特撮技術を“目くらまし”にして、なかなかの内容にしてくれたのがゴア・ヴァービンスキー。

 

 “「パイレーツ・オブ・カリビアン」三部作の監督が主演のジョニー・デップと再びタッグを組む”が売り文句になるのは当然なれど、劇場で観るのをスルーしてしまった。そして「ローン・レンジャー」に行く前にちょっと覗いてみようかな、と思って見始めたら面白くて後悔することになった。だってメインテーマは“水資源の独占”なんだから。体裁は“マカロニ・ウェスタンをカメレオンに演じさせる”になっていて、お約束がたっぷり詰まっていて楽しい。無理やりくっつけたような空中戦も「ラストエグザイル/銀翼のファム」みたい。ペットだったカメレオンが砂漠に放り出されて、ジャンゴならぬランゴを名乗って貧困に喘ぐ人々(いろんな生き物)のために立ち上がる。

 

 ランゴを演じるジョニーは声優になっても文句なしで、実際の彼を模したかのようなカメレオンの動きも見ごたえ十分。声優陣はなんでこれだけ豪華なの?というくらいだが、街を牛耳るワルの亀が町民を使嗾、扇動して私腹を肥やす物語に惹かれたのは間違いない。実写でやるとなると独占するのは石油で、それは「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」が既に描いている。そこまで堕ちたか・・・の世界企業の営為は「ザ・ウォーター・ウォー」だけでなく、007でもドキュメンタリーでも描かれていて、子供向けのようで侮れないこのCG(目くらまし)の使い方は有効。もっとも圧倒的なピクサー社製と違って、在庫が1枚になっちまったんだよなぁ、「タンタンの冒険」も然りでちょっともったいない。
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