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欲望のバージニア

  欲望のバージニア

 

 学生時代に聞いた話ですと、禁止を表す“prohibition”は合衆国ではそのまま法律名=禁酒法になるのだそう。禁酒法時代を描いたものはギャング映画の題材になって、「アンタッチャブル」とか「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とか豪華キャストの超大作が代表格(ワシの知ってる範囲内で)。気楽な「シティヒート」とも違って、実話を基にしたのが本作。印象としては「アメリカン・アウトロー」に似ていて、あんまり凝ってないけれど、若手スターのお芝居にお任せしている。更にシャイア・ラブーフを筆頭にした人達も魅力的ですけれど、本作観賞の決め手は裏方。監督のジョン・ヒルコートは「ザ・ロード」の人で、脚本まで担当しているニック・ケイヴが気になった。

 

 「ベルリン天使の詩」で実にカッコ良いライヴ・シーンを見せてくれたニックは、「ジェシー・ジェームズの暗殺」だけでなく「ザ・ロード」にも携わっていて、ジョー・ストラマー(「ポイントブランク」)のようになっていくのか。監督、脚本、音楽担当が既にオーストラリア勢で、悪役のガイ・ピアースもヒロインのミア・ワシコワスカも豪州出身。英国勢もゲイリー・オールドマントム・ハーディが参加と、合衆国の歴史を描くのに多国籍で臨んでいるのは興味深い。ただし肝心な部分はもちろんアメリカ人で抑えられていて、三男坊役を演じたシャイアだけでなく、ジェシカ・チャスティンにメロメロにさせてもらい、デイン・デハーンを再発見。

 

 2ヵ月前に観た「L.A. ギャング ストーリー」は取り締まる側からで、本作はとっ捕まる方。ところが間に入っている組織=警察の腐敗は同じで、21世紀まで絶えない。ま、公僕すべてがあんなんだったら困っちゃうけど、連邦捜査官ってアメリカ映画では揶揄されることが多い。独立を重んじる国民性なんですかねぇ、宮仕えは変態チックにされちゃう。一身に引き受けているのがガイ・ピアースで、「プリシラ」の素地があるとは言え、前日に「ロックアウト」見ているだけに化けっぷりには驚かされる。カメレオン俳優には見えないけれどやってます。ま、どこぞの局の長官が真性の変態だからして。

 

 舞台になった1930年代のバージニアは牧歌的で、隠された何かが潜んでいるワケではないど田舎。合衆国憲法なんてどこ吹く風で、保安官も密造酒作っているボンデュラント兄弟もヨロシクやっている。製法はその家それぞれで、山々に灯る火がなかなかだ。ところが法律を引き締める名目で、私腹を肥やそうとしているネチネチした連中が来ると、世知辛くなってくる。国か?ギャングか?の選択もかの国らしさでしょう。ギャングに扮したのがゲイリー・オールドマンで、出番が少ないけれど出過ぎると若手を食っちゃうもんね。で、ゲイリーと2本(「裏切りのサーカス」「ダークナイト・ライジング」)共演を拝ませてもらったトム・ハーディは、どこに出てきても違って見える。三兄弟で次男坊がしっかりしているのはワリと世の常らしく、「レジェンド・オブ・フォール」でのブラッド・ピットもそうだった。

 

 堅実で稼業を仕切っている次男坊に迫るのがジェシカで素晴らしい(横顔が特にステキ)。CIA分析官とか貞淑な妻とかアホな女とかを経てきて、やっとこの人の魅力を堪能させていただきました。「L.A. コンフィデンシャル」のキム・ベイシンガーを超えてます、オジサン大満足です。最近は色っぽいシーンに飢えていたのか、画面に目が釘付け。そして三男坊のシャイア・ラブーフと、幼い恋を展開するミア・ワシコワスカも、「永遠の僕たち」っぽくて良い。そして発見が三男坊のダチに扮したデイン・デハーンです、この人は今後要注目になりました。順番を逆に見ていることになるけれど、昨年から気になっていた“Chronicle”に出ているとは。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」でピンときたけれど、「ギルバート・グレイプ」の時のレオナルド・ディカプリオに重なる(ビッグになるぜ)。

 

 ツメが甘い、三男坊があまりに間抜けだ、とは思うけど実際はあんなんだったのでは?実話だし、やり過ぎてもポイントは絞れないもんね。タイトルがlawless=無法で、法律のおかげで堅気が悪事に手を染めちゃって、マフィアの勢力拡大にも一役買ってしまったのは事実。RVRで村上龍氏が指摘してたけど、“江戸時代から続いている相撲を、文部科学省があれこれ指図できるのか?”に近いかもしれない。後々スターとして大成していくはずの人たちが、大挙して出ている2本立ての1本としては上出来ですよ。シャイアは次世代型として出遅れたかな?と心配になったけど、ノア・テイラーみたいになったら、よりキャリアを築けそう。本作ではボコボコにされたギャングの手下ですけれど、「シャイン」「アドルフの画集」「ライフ・アクアティック」「チャーリーとチョコレート工場」と順調です。

 

現在(7/2/2013)公開中 
オススメ★★★☆☆

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関連作

  シティヒート

 

 よく見るサイトで、アクセスランキング上位になっていて(たぶんTVで放送されたのだ)、そういやHDDに突っ込んだまま見ていないな、と思い覗いてみたら恐るべき珍品だった。「コップアウト」に出たブルース・ウィリスに負けない代物に、巨匠も既に出演済みか。なるほどキャリアが長ければ避けられない道・・・。とは言ってもトシのせいか呆れつつも笑いながら最後までイケました、酒の肴にはピッタリ。クリント・イーストウッドという人が脇役に向いてないことを思い知らされる。バート・レイノルズが役不足というより、アレのパロディに見えちゃいけないから、なかなかキャラクター造形できないのだ。弾が何発当たっても人が死なないのは「ゾディアック」でも驚きましたが、締りのない銃撃戦であるとか、気楽にご覧になることをオススメ。禁酒法時代を扱った「アンタッチャブル」とか「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とはまるで違いますし。

オススメ★★★☆☆

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  プリシラ

 

 荒野にはためく衣装が圧巻のドラッグ・クィーン映画の代表作。「東京ゴッドファーザーズ」にもハナちゃんが出てくるけれど、主演の3人が揃ってクイーンというのは清々しい。後に合衆国でリメイクされたけど、やはり本家に軍配が上がります(ぜひ見比べていただきたい)。扮したのはテレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィービング、ガイ・ピアースで、皆さん入魂の芝居をご披露。自然に彼女たちになりきるのは至難の業のはずなんだけど、オーバー・アクトがない。演技力が認められたからこそ、その後ガイは「L.A. コンフィデンシャル」に、ヒューゴは「MATRIX」へとステップ・アップしていく。テレンスはむしろマッチョなオヤジに変身したのが驚きだったりして(「イギリスから来た男」)。

 

 バスを使ってのロード・ムービーだから「宇宙人ポール」も真似たんだろうけれど、「マッドマックス」の荒野を行く彼らの道中は山あり谷ありで、じんわりくる。女子供が排除される“最も男らしい人たち”の映画なのに、“家族の絆”が描かれている。ここがなんと言っても本作の優れたポイントで、ぜひご覧になってご確認を。冒頭の“愛はかげろうのように”、“Go West”、“Finally”などはよく聴いていた。劇中ネタにされるABBAの“Mamma Mia”を経て、ラストの“Save The Best For Last ”に至るまでサントラが完全にストライク・ゾーンを直撃。“案外オレにもそのケがあったのか?”という気もしてくる。「ダンシング・ヒーロー」が92年だから、ヒット曲を織り交ぜつつ描くのが、この時期のオーストラリア映画だったのかも。

オススメ★★★★☆

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