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スティーブ・ジョブズ

  スティーブ・ジョブズ

 

 騙されている方が、騙している「グランド・イリュージョン」をまた観て、メラニー・ロランにデレデレの後は偉人伝IT 方面。主演のアシュトン・カッチャーはメディアに出まくって、茶の間に至るまで浸透させる営業宣伝は頭が下がる。既に「バトル・オブ・シリコンバレー」でアップル・コンピュータの創設者については知っているつもりになっていたけれど、印象はずいぶん違う。アチラは製作年が1999年で、存命だったし、マイクロソフトが覇権を握っていた(という言い方が妥当なのかな?)時期で終わっていて、iPodもiPhoneもiPadも出現する前。ライバルIBM、マイクロソフトと対峙する形で描かれたイノベーターではなく、人物スティーブ・ジョブズを中心に据えている。

 

 アップル・コンピュータにはまるで縁がありませんけれど、持ってるよと公言している人、使っている姿が映っている人は第一線のアーティストだったり(坂本龍一氏)、作家だったり(村上春樹氏、村上龍氏)。人々の想像力を引き出すマシーンがアップルコンピュータで、どこまで行っても事務器(元は電卓)の延長線上なのがその他の機種・・・。なんでそんなつまらん思い込みがあるかと言うと、触ったことがないのが大きい。使っている人たちはなにか誇らしげで、「画像が面倒なんですよ」とぼやいたら「アップルじゃないからだよ」などと言われたものだ。このページは“店に貼り出すPOPをそのままインターネットにシフトできないか?”と思って作り始めていて、3年前だと画像のサイズ調整するのが面倒だった。画を描く感覚で作れたらなぁなどと“ないものねだり”の願望があったものです。

 

 で、アップル持ってないし、スティーブ・ジョブズを敬愛しているわけでもなく、ましてやアシュトン・カッチャーのファンですらない(「バタフライ・エフェクト」は面白かったけど)。じゃあお目当てはというと監督さんです。「ダイアナ」と同じで、「チョイス!」のジョシュア・マイケル・スターンの手腕に期待。ケヴィン・コスナーのてんやわんや選挙映画は楽しくもあり、感動的でもあり、ポイントは悪くなかった。では実際に本作はというと、消化不良という評価がありそうだ。これは公開当時存命だった「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」に事情が近いかもしれない。関係者で生きている人は多いし、残っている映像資料もしかり。“評価が固まる頃”というのはもっとずっと先で、利害関係にある人がいなくなり、資料を元に作り手の自由が担保される頃を指すのかも。

 

 ただ秒進分歩の21世紀だけに、さっさと映像作品を残しておかないと、人々がとっとと忘れちゃう。3度目の映画化あたりで、“これぞジョブズと時代を捉えた傑作”と評論家に太鼓判押されてアカデミー賞にノミネートされるのかな?ただWindowsユーザーのくせに申し訳ないけれど、ビル・ゲイツ物語は想像しにくい。ビルの場合、ずいぶん前にNHK で放映していた“電子立国日本の自叙伝”という番組があったけど、アチラが似合いそう。我が国のエレクトロニクスを支えたオッサンたちが、やけにカッコ良く写ってたのを記憶している。今年“マウスの父”=ダグラス・エンゲルバート氏が亡くなっていますが、トピックとしてコンピュータを通じて作業して来た者に限定されてしまう。仕事に遊び心をという“ブレーク・スルー”を起こしたことが何よりジョブズ氏を際立たせているのでしょう。端折られているけれど、「トイストーリー」の生みの親とも言えるしね。

 

 見所は会社の看板機appleUの次代機Lisaがポシャって、Machintosh開発に着手するスティーブがスタッフを集める箇所にはワクワクする。天才といえども1人でマシン開発が無理なのは、骨身に染みている(スティーブ・ウォズニアックが欠かせなかった)。「マネーボール」で惹きつけられるのも強引にブレーンを引っこ抜いて、チームの改革をする場面だ。もちろんアレキサンダー大王みたいな強引さは、劇薬なので副作用があり、人は離れていく、ドンドン本人は空っぽになっていく(真似したってただのパワーハラスメント)。「ソーシャル・ネットワーク」が辛辣なのは、開発過程のワクワクする部分を削いでいるためだ。自動車産業が衰退した後、合衆国経済を牽引してきたIT産業。褒め言葉になるけれど、ジョブズ氏のやったことって“概念の創出”でしょ?同時に既存のそれは破壊されるわけで、iPodおよびitunes storeは仮想空間に“全て揃っている店”を設けているわけだし、人々に理解されないうちは波風立たない。

 

 その先には「野蛮なやつら/SAVAGES」が待っているかは分からないけれど、オリヴァー・ストーンはかなり辛辣さも含めてジョブズ氏をあの作品に投影していたのかな?憧れを持つロケットボーイズと決定的に違うのは、生々しい会社の現実が描かれているトコ。エンジニアの側面だけを描いたのでは、スティーブ・ジョブズ伝にはならない。それにしても英国王室の権力闘争か?というくらいCEOやら役員が次々に現れては消える。演じる面々は「マイレージ、マイライフ」のオーディオコメンタリーでミューズと称されたJ・K・シモンズとか、マシュー・モディーン(「ダークナイト・ライジング」)とか「だれもがクジラを愛してる。」のダーモット・マローニーとか。冒頭にずいぶん老けたジェームズ・ウッズ(「サルバドル」の時はカッコ良かったのだ)が出てきたりと脇役は美味しかった。

 

 1つの劇映画としては“知識が空っぽ”ではとてもついていけないから落第でしょう。ただ21世紀の視聴環境を考慮した場合、観客に委ねる余地を残しているから合格かもしれない。家でチラチラ脇見(スマート・フォン使ってWikipediaを覗き見)しながらには向いている。何より21世紀の偉人として記憶されるスティーブ・ジョブズの実像だし、今の会社のあり方は露骨です。ですから、グローバル化を控えているし、若い人に見せて心構えさせるには良い教材。たぶん行き着く先は「コズモポリス」だろうけれど・・・。で、日本のサラリーマン事情知るなら、断然森繁久彌の社長シリーズがオススメ。だって40年前とちっとも変わらないし、日本人には合ってるのよ。偉い人たちもグローバルとかコンプライアンス遵守とか、口で唱えているだけ。

 

現在(11/11/2013)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  バタフライ・エフェクト

 

冒頭“バタフライ効果”について触れられていて、“風が吹けば桶屋が儲かる”といった構造なのかな?と予測していてまんまと裏切られる上級品。若い人の支持があるのは、トラウマが形成される幼少時の描写がポイントだったのでは。続編も出来たし確かにこの仕掛けは捨てがたい。で、結構この手のものは好きで見ていたし、記憶に関してだと「×××××××××」とか「×××××××××」かな?と見当をつけていた。ダンカン・ジョーンズの「×××××××××××」も良かったしね。

 

 ところが進んでいくと、「××××」「××××××」の要素も含まれていて贅沢。トム・クルーズにも「バニラスカイ」があるが、製作総指揮を兼ねているアシュトン・カッチャーは挑戦しがいがあるでしょう。敬遠していたけれど、「ジャスト・マリッジ」「抱きたいカンケイ」などは素晴らしい。パッケージに書いてある通り、感動のエンディングが待っていて、まさに「××××××」に近い、支持されるわけだよな。×部分はぜひご覧になったあとでご確認を。
オススメ★★★★☆

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  コズモポリス

 

 「危険なメソッド」で哲学的思索に傾斜したのか?デヴィッド・クローネンバーグの本作は一見、無内容な“お話し映画”の様子だ。ただし、「ヨルムンガンド」であるとか、畑違いのようで「SPEC〜零〜」とか、自分の中の21世紀に対する“時代平衡感覚”が、本作を記憶の中からデリートさせない。資本主義の果てには“虚しさだけが待ってる”ことは、ワリと皆さん気づき始めた。「アメリカン・サイコ」が能動的な人物だとすると、本作の主人公は他動的となる。たぶんCEOとされる社会的位置にある人物だから、色々な人が彼に働きかけようとする。ジュリエット・ビノシュ(「トスカーナの贋作」)には驚かされて、マチュー・アマルリック(「さすらいの女神たち」)もクローネンバーグ作品に“出たかったよ”という印象を残す。

 

 監督の息子ブランドンの「アンチヴァイラル」も、後付けで認識できる代物ながら、父親の作品も観賞後、何故か風呂に入っている時にフツフツと気になって仕方なくなる。単純に“金持ちが床屋に行きたい”ってだけの物語なのに、いろいろと21世紀の現実を垣間見せてくれる。登場人物のセリフに観客それぞれが“肯けるポイント”はあるはず。それにしても家柄って言うんですかねぇ、ジェイソン(「マイレージ、マイライフ」)はアイヴァン(「抱きたいカンケイ」)、ソフィア(「somewhere」)はフランシス(「Virginia/ヴァージニア」)、と育った環境に学んだ跡が作品に刻まれている。「抱きたいカンケイ」ではないけれど、デヴィッド・クローネンバーグはまさか息子のブランドンと“穴友”ってことはないよな、主演女優のサラ・ガドンが「アンチヴァイラル」と本作の両方に出ているとしても(冗談です)。
オススメ★★★☆☆

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