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 宣伝は完全に目くらましで、てっきりトム・クルーズが殺し屋と思い込まされていた、まんまと騙されました。ところがコレが爽快で、なんだ中身は遊びもある昨今珍しい乾いたテイスト。監督のクリストファー・マッカリーはオマージュと自身のテイストをリー・チャイルドの原作を土台にしてやりたい放題。後に化けそうだし、現時点でこき下ろす事は控えたい(「プロメテウス」)。ま、ずいぶん“つまんねー”と思い込んでいた作品が絶品だったことを思い知らされる昨今、「レッドブル」みたいに、珍品として記憶領域にしまいこむことはやめとこう。

 

 本作は全編に渡って、クリント・イーストウッドのテイストに貫かれていると感じる。冒頭がまさに「ダーティハリー」で、ライフルのスコープには何気ない日常が映っている。巨匠を感じたのはそれだけではなく、たぶんフィルム撮影されたのでしょう、画面に落ち着きがある。技術革新のおかげで、デジタル・ハイヴィジョンで夜の暗さも明るく捉えることができる21世紀に、過情報ではなく“差っ引いた画面”は貴重。銃声が鳴り響き、無辜の人々が殺害される。「バンテージ・ポイント」とか「ブレイキング・ポイント」とか多角的な展開も可能ながら、軸になる登場人物がいると物語は拡散しない。軸になる主人公がトム・クルーズ扮するジャック・リーチャー。事件発生から呼ばれもしないのにやって来て、事件の核心をいきなり突いて真相に迫る。世の中の実像を知る謎の男にトムが扮することで、賛否が分かれるかもしれない。

 

 役者トム・クルーズにとっても挑戦で、皺が刻まれた顔をアップで捉えたりして。昨年のアホ丸出しミュージカルとは格段に印象が違います。スティーヴ・マックィーン(「ハンター」)は渋かった、クリント・イーストウッドだってそうだ、と思っていると“なってない”ように見えますけれど、渋い主人公って難しいです。もしブラッドジョージベンあたりだと同じように物足りなさを感じそうだし、デンゼルとかベニチオなら文句は出ないかもしれないけれど・・・。ただ計算ずくのキャスティングより、思い切りで勝負した方が良い場合もある。TVを見るとき、“真に受ける”か、“けなす”かの選択ではなく、“参考にする”という距離をおいた見方は有効で、毛嫌いしてても大丈夫なことを床屋さんで確認した(刈って貰っている時ついてるからね)。お話の中身も真に受けたら騙されるし、先入観を持っていると真実から遠ざかる。複雑な様相を呈する構造の事件で(「トゥルー・クライム」を感じたのがココ)、距離をおいてよく見ることが肝要で、テンポを抑え目にしている理由だと推察される。ずっと食い入るようにはいかないけれど、緩急はつけられていて、格闘シーンとカーチェイスはなかなかだ。

 

 監督の持ち味はキチンと作品に反映されていて、直前まで「誘拐犯」を見ているだけにニンマリ(スマート・フォンを使って電車の中で、不埒だなぁ)。車のアイディアとか、ジジイの「生き残るには訳がある」のセリフは流用ですね。カーチェイスはトムの顔がモロに映っているからたぶんノー・スタント。格闘シーンも「ボーン・レガシー」が華麗に映る泥臭さがある。目当てにしていたリチャード・ジェンキンスも良かったんだけど、触れると台無しになるから割愛。もう1人楽しみだったロバート・デュヴァルは出番がなかなか来ないなぁと思っていたら、トムと一緒に映っているのを見た途端にガッツポーズ。「デイズ・オブ・サンダー」の師弟コンビですからね、ニクいサービスだ。もちろん華のロザムンド・パイクはグラマー美人を久しぶりに堪能させてくれました、“気になる女優”にはない魅力です。「リバティーン」とか「17歳の肖像」ではそれほど印象に残っていないけれど、「007/ダイ・アナザー・デイ」が強すぎたのかな?

 

 宣伝は殺し屋映画みたいだけど、乾いた感じは昨今珍しく、つまりはハードボイルドってことか。その魅力を半減させてしまう、スパイの七つ道具=IT機器はなるべく前面に出さないで、公衆電話をジャック・リーチャーは使用(普段まず使わなくなった)。サスペンスですから中身に触れるわけにはいきませんが、「ジャーヘッド」「ザ・シューター極大射程」「ルート・アイリッシュ」などは参考までにオススメできます。“当らないイラクねた”と呼ばれている作品群の1つになりそう。海外TVドラマを見慣れた人なら、帰還兵について触れているエピソードを持つ「LAW & ORDER ロー&オーダー」 、「パーソン・オブ・インタレスト」 ですでに“目を背けたいけれど、そこにある現実”をご存知のはず。真に受けたり、けなしたりしないで、“参考にしよう”という慰みもの=フィクションと距離を取れる方ならイケるはずの、絶えて久しいハードボイルド。

 

現在(2/4/2013)公開中
オススメ★★★☆☆

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 説明が多く、ドラマとして合格点ではないかもしれないけれど、事件を通じて“合衆国の今”を描いているのが人気の秘密でしょう。「ミッドナイト・ラン」以来お気に入りのデニス・ファリナが出ていることで見てみたけれど、緻密な描き方に舌を巻く。いまのところDVDの2までしか見ていないけれど、事件現場と裁判所、刑事と検事の2場面で構成されている。合衆国ではシーズン20まで進行しているようで、“ニューシリーズ1”と銘打ってパッケージ・リリースされたのは実際にはシーズン15。このシーズンの第1話「鮮血の十字架」はイラクに端を発した事件。米軍兵士の捕虜の扱い、拷問の復讐などを刑事は捜査し、司法の場で争われる。セリフの中に我々の意見は込められていて、頷いてしまうこともしばしば。「ブルー・スティール」のロン・シルヴァーや「レッド・オクトーバーを追え!」フレッド・ダルトン・トンプソンなど映画で見慣れた顔も出ている。と思っていたら、「キリング・フィールド」のシドニー・シャンバーグを演じたサム・ウォーターストンが、主役の検事ジャック・マッコイで驚いた。
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