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42〜世界を変えた男〜

  42〜世界を変えた男〜

 

 確かに人気でアメリカン・フットボール、バスケットボールに溝を開けられている印象のあるベース・ボールなれど、歴史の厚みは並みじゃないんだそう。スポーツ観戦熟練者に、いっつもご高説を賜るわけだけど、何を言われているのかサッパリ。スポーツ紙は読まないのではなく、目が慣れていないので“どこ読みゃあいいんだよ”という門外漢。なにせ野球中継なんて先日の日本シリーズを10年ぶりに見たくらいだ。ただTV中継でも実況、解説をカットして、球場の音だけ聞こえてくるとエキサイトします。ON時代からのジャイアンツびいきなれど、田中投手おめでとうなどと一見さん丸出し。でも野球映画はコンスタントに観ていて、大リーグのことはチョットだけ知っている。伝説の男ベーブルースのも観たし、球団GMの話も、スカウトの話も、ダメチームに喝を入れるコメディも好きだった。

 

 さらに知ったかぶりですけれど、第二次世界大戦中は女性だけのリーグがあったことも「プリティ・リーグ」に教えてもらった。今回は合衆国に“ニグロリーグ”があった事実でまたまた情報更新。リンカーン大統領が必死こいて、合衆国憲法修正第十三条を下院議会で批准させても、キング牧師の公民権運動が実るまで、合衆国には人種隔離政策があった。南アフリカのこと言えるのかよ、と鬼の首取った気でアメリカ人批判するのは止めにして、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」に類する“人々が忘れたがっている1本”として記憶。オリヴァー・ストーンが親切心で“我が国が合衆国の衛星国として認識されている”と教えてくれたように、「知らねえなぁ」というアメリカ人の若造に「あんたの国のことだぜ」と・・・。でも大リーガーは忘れないし、本作は全米ナンバー・ワンだから、ジャッキー・ロビンソン氏は敬愛されている。

 

 そりゃあそうだよね、オーナーのブランチ・リッキーが支えたとしても、1人で差別に立ち向かわなければならない場面がほとんどだ。一緒にプレーする仲間とて差別が当たり前の時代に生きている。マイケル・サンデル先生の白熱教室で紹介されていたけれど、当時の白人は人種差別を指摘されても、何を言われているのか分からない様子が記録されている。「マルコムX」から「リリィ、はちみつ色の秘密」に至るまで差別が描かれると、どうしてもムカムカする。もし今20代だったら、すぐに血迷って、「フィリーズの試合を見るのは止めだ」、「フィラデルフィア出身のやつとは口きかない」、「ケンタッキーなんか糞くらえ」と悪意のスパイラルへ一直線。一役買っているのが仇役を演じる面々で、「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」の美人たちと同じで実力発揮。

 

 際立っているのがフィリーズのベン・チャップマンで、演じるアラン・デュディックは実に憎々しげに、人種差別を体現する人物になりきっている(きっとアラン自身は差別をかなり憎んでいる)。試合中にあの罵声は後世まで語られたって仕方ない。ただ同時に映画は怖いなぁと思い知らされる。だってジャッキー・ロビンソンはみんながユニフォーム着て称えてくれるし、オーナーだってWikipediaに載ってる。祟るよなぁ、鉄の女はまだニュートラルだったけど、ヒトラーはまず未来永劫悪人で、ラドヴィン・カラジッチも然り(日本のアニメーションにまで描かれてる)。ホントは政治家だからリンカーンだって善悪両面あるはずなのにモテモテで、吸血鬼ハンターに変身したりする。翻って彼の仇討ったつもりの連中は、「声をかくす人」で“こいつらひでぇぜ”と描かれてしまう。

 

 差別した側を弁護する気は毛ほどもないけど、いつ自分が属するか分からないと刻む方がまだマシ。「クイズ・ショウ」のラストに映し出される人々と、自分は同じなのだとトシ取って踏まえるようになった。だって流れに乗じて人種差別主義者を悪党呼ばわりすれば、同じ穴のムジナでしょ?差別と日本人には我が国にだって厳然と差別があることを教えてもらったし、TVの情報だけで生きていれば、いつの間にか魔女狩りに加担していそうでヒヤヒヤする。酔ったとしても「月はどっちに出ている」で萩原聖人が演じたサラリーマンみたいなことは慎みたい。差別された記憶がないということは、無意識に差別側にいる可能性もあるわけで、「マイウェイ12,000キロの真実」なんて思い出させてくれる苦い良薬です。出演者の一人はつい最近魔女狩りに遭ってたけど。

 

 時代背景が厳しいから、自然にジャッキーがタフで高潔な人物として映る。演じるチャドウィック・ボーズマンは男前でなりきっているし、奥さん役が可愛らしいニコール・べハーリー(「SHAME-シェイム-」ではセクシーだった)。ジャッキーが抱える幾多の困難を、2人が支えあって乗り越えたという事実も映画に刻まれている。またシャワールームのシーンはジャッキーがチームメートを気遣っていることを表していて、ちっちゃいけど感動をおぼえる。“センセーションを起こす”、“がっぽり儲ける”のが先だけど、オーナーにも本当の理由があって、語られる場面がいい。ワシなんかにとってはずっとヒーロー(ソロ船長ジョーンズ教授)だったけど、ハリソン・フォードもジジイが似合うようになりましたな。実況アナウンサーでジョン・C・マッギンレー(「ドクソルジャー」)がチラッと出るのも美味しかった。

 

 ジョブズ氏の映画化は3度目くらいでアカデミー賞にノミネートされるかもしれないけれど、本作はどうかな?確かに“人々が忘れたがっている”差別を描いているけれど、ワリと距離を置いているように見える。マーク・アイシャムの楽曲も控えめで、過度に人々を刺激しないように配慮している印象を持つのは、トシを取ったせいですかねぇ。ぜひ本人出演の「ジャッキー・ロビンソン物語」を拝見したいけれど、ソフトないんだよね。タイミングとしては今なんだが、メーカーに商売っ気がないとしか思えない。合衆国の歴史を刻むスポーツはやはりベース・ボールで、“厚みが違うんだな”は再確認させられた。だからさ、まるで賞に縁がない「人生の特等席」が不思議で仕方ないんですよ、くどいようですけれど。

 

現在(11/13/2013)公開中
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関連作

  プリティ・リーグ

 

 第二次世界大戦時、男は兵隊に取られてしまい野球の試合が継続不能になった。そこで急遽結成された女性によるプロリーグ。もちろん期限が限られているので、「父親たちの星条旗」のラストに似た寂寥感が待っている。主題歌の“This Used To Be My Playground”が、その辺を代弁しているようでお気に入りだった。マドンナはそれほど好きじゃないけれど、このシングルは買ってよく聴いていたものだ。またこの実話から時代が変化していることも見えてくる。現在も合衆国は戦時下のはずなんだけど、メジャー・リーグは維持されている。

 

 監督のペニー・マーシャルは「ビッグ」がサイコーの人で、トム・ハンクス起用も納得。ぜひご覧になってご確認していただきたいんですけれど、トムの××ー××が異様に長くて、映画史上最長なんじゃ?と思えます。プロだけに選手に扮した出演者たちはキッチリ投げて、キッチリ打ってる。セリフ少ないけれどマドンナは良かったし、ジーナ・デイヴィスは背が高いし、まさにチームの柱。仲違いしてしまう妹役でロリ・ペティが出てくるんですけれど、この時期の彼女は好きだったなぁ、「ハートブルー」「フリー・ウィリー」も。
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