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ダイアナ

  ダイアナ

 

 「クイーン」が2007年で、アチラでは英国王室を描きつつ、マスコミ被害を訴えていた。で、騒動の元になったダイアナを1人の人間として捉えたのが本作。対を成しているというか、本作の後にもう一度アチラをご覧になるのも良いかもしれません。映画の並行観賞は史実を多角的に眺めるには適していて、「リンカーン」の後に「声をかくす人」とか、終戦のエンペラー「マッカーサー」「私が愛した大統領」を同じ週に見るとか。ただ宣伝を見ただけでは、はっきり言って、“あっそ”てな感じでスルーする題材。ナオミ・ワッツも出ているし、DVD でいいかなどと思っていた。ところが監督名を見たとたん、“ヤバイ、行くしかない”となった。なにせオリヴァー・ヒルシュピーゲルですよ。素晴らしかった「レクイエム」なんてレンタル屋ストレート、見逃すわけにはいかない。

 

 合わせて「es[エス]」も見てみましたけれど、この人の映画には底流にヒューマニズムがあるものの、感傷的な部分がほとんどない。“硬質な映画”という印象を本作でも持つことになった。資料をかき集めたのか?かなりの量の取材をしたのか?ダイアナの描写にドラマティックな味付けがほとんどない。ただし、ドキュメント・タッチでもなく淡々と迫ってく。描かれる時期は“マスコミ騒動の最中”と合致するけれど、なにせああいうの嫌いで、目を背け、耳を塞いでいたから、真実味のあるコチラを脳内に刻むことになる。王様とて人間で、克服しなくちゃなんないことは山ほどあると「英国王のスピーチ」は描きましたが、プライバシーがまるで存在しなくなった前世紀末。TVで生々しく映されるから、お父さんの見舞いに行くだけでも「あっダイアナだ」と注目を集めてしまう。

 

 人前に出る仕事として政治家になるならまだ覚悟しますけれど、生まれつきとなると周囲の気配りがなくちゃ。それこそルーズベルト大統領の家にジョージ6世が訪ねて行ったって、お百姓さんは見向きもしないのが、正常なのにと思えてきます。もちろん新聞とかTVがなくなるのはもっと怖いけれど、人々に“知らせなければならない事”の比率が低いままだと消滅。じゃあインターネットはと言えば、ヤフー・トピックスの作り方に書いてあったんですけれど、シリアスな話題のアクセス数って少ないんだそうです。ですからダイアナの成した仕事は我々にとって重要で、貴重なものだった。地雷のことをより多くの人々に知ってもらうための、あのシーンは恐ろしかった。命懸けなのにカメラマンは美味しそうに眺めているんだもんね。もちろん我々はもっと後ろのTVの前にいたのだ。

 

 武器に人道もクソもありませんが、クラスター爆弾は戦争の終結を妨げ、憎しみの連鎖を永続させてしまう。それこそココ・ヘクマティアルが良いか悪いかではなく、“強硬手段に訴えるしか道がなくなった”ってエライ人達の口実に使われそうでさらに怖い。ナオミ・ワッツはちょっと前に電車の中で眺めていた「ハッカビーズ」だとお店のキャンペーンガールで、「フェア・ゲーム」も描かれている本人ヴァレリー・プレイムになりきっていて、「キング・コング」ではアクションまで体当たり。でもダイアナに見えるんだよなぁ、実は写真を見比べればソックリではないけれど、仕草を通して彼女だと人々に思わせるのは大切でしょう。スキャンダラスな写真とかの記憶をこれで上書きできる。年相応のスッピンも披露して見事に体現。

 

 そして女優ナオミ・ワッツの実力は恋人との切ない恋を描く上では必須だった。もうほとんどの人が忘れちゃったけど、事故で一緒だったドディ・アルファイドが想い人ではないんだよね。お忍びで逢瀬を重ねる2人なんて、悲劇として帰結するけれど、恋愛映画の年に相応しい本作の重要なパート。実際にあった大人の恋が描かれていて、それをロマンティックな視線ではなく、あくまで大人向けとして描けるオリヴァー・ヒルシュビーゲルはさすが。スキャンダル絡みの話題しか知らない男が観ても、ズッシリくる中身を持っている偉人伝。今更“マスコミが殺した”とか“チャールズ皇太子が悪い”なんて強調せずに、ダイアナの成した仕事と悲しい運命を映画にして残した。そしてこういう作品の出現の仕方は、人々に浸透するには良いかもしれない。クドクド連続して熱を帯びてではなく、“実際は恐らくこうだったのだ”と記憶するためにも。忘れた頃に「The 11th Hour」を見て、環境問題を思い出すみたいに。

 

現在(10/25/2013)公開中
オススメ★★★★☆

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  es[エス]

 

 ナチの国ドイツでこの手の映画を撮るとは、オリヴァー・ヒルシュビーゲルはかなり度胸がある。実験自体がドイツ人が忘れたがっている記憶を呼び起こしそうだし、次の作品が「ヒトラー/最期の12日間」なんて。ただ2作品に共通しているのは、新人監督が知名度を獲得するための題材っぽいけど、その後は“いろんなの撮れるぜ”という品に移行していく。「インベージョン」はおとなしかったし、「レクイエム」はドイツと全く関係がないにもかかわらず素晴らしかった。で、全世界に彼の名を知らしめた作品を、遅まきながら見てやっぱり驚かされた。単純に「CUBE」のように低予算でも見せる工夫のために、閉鎖空間を利用したのではない。ま、“実際にあったら怖いけど、ありそう”と思わせる実験なれど、裏エピソードを拡散させずに済ませている。

 

 囚人と看守に分かれて擬似監獄の集団心理実験だから、どうなるかはだいたい予想がつく。もっとも元ジャーナリストの主人公タレクが引っかき回すから、見ているこちらに余計なストレスがかかる。扮しているのがモーリッツ・ブライブトロイで、本作は彼にとってステップ・アップとなったでしょう。「ソウルキッチン」で笑わせ、「ミケランジェロの暗号」では主役、その後「ワールド・ウォー Z」とか「360」まで活躍はワールドワイドになっていく。見ていてイライラするけれど、観賞継続の原動力はタレクと“一夜の関係”を持ったドラとのつながり。刑務所ものは潜水艦ものと同じで男しか出てこないから、“外で待ってる美女”の描写はホントに息抜きになる。よってオッサンくさいけれど「塀の中の懲りない面々」を思い出しちゃうんだよね。
オススメ★★★★☆

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  The 11th Hour

 

 環境問題を毎日考えるとヘトヘトになるけれど、忘れた頃に見るには良いドキュメンタリー。特に“他罰傾向の心理”に陥った時には良薬だ。実に深刻なんだけど、クドクド言われると、貝みたいに人の心理は頑なになるもの。実際これを見る人には環境に対する意識があるわけで、受け売りで周囲の人に触れて回ったところで逆に相手にされなくなってしまう・・・。ま、「不都合な真実」が2007年で、自然が良くなったとはお世辞にも言えない昨今。挙げた例がシロクマ君だったのがいけないのか?それとも原子力発電を推進する連中にとって好都合だったのか?本質はどっか行っちゃうのが常で、色々な人が説得力のある説明をする本作は、元副大統領アル・ゴアだけのプレゼンテーションより広範囲の人々に訴えるかもしれない。

 

 科学技術は“行き過ぎているけど、止められない”、自然が“どう考えたって、ヤバイに決まってる”ことは誰でも知ってるし、指導的立場にある人たちも分かっているはず。で、昨今思うのはなんで彼らに絶望しているかというと、彼らが自分たちの写し絵だからかも。本作にも込められているメッセージで、一番飛びつきやすい“〜が悪い”、“悪い〜をなくして”に傾斜しがちな心理を捨てて、踏み出さないと人類も一巻の終わりだ。自殺願望があるならまだしも、地球環境を人間が完全に破壊することなどはまず無理。で、訴えている人々も、人類に対して警告を発していると気がつくのが肝心。そしてあんまり無視し続けると、庶民にはもっと怖いことが起こる。だって為政者も人々に訴えている奇特な賢者も上流階級出身がほとんどだぜ。

 

 もし奇特な賢者が“持てる者の義務”を放棄したら、結果「エリジウム」まで行ってしまうわけで、映画は実にいろいろなヒントを散りばめている。男性ストリップ映画「マジックマイク」まで込めたハリケーン被害は切実だ。企業の行き過ぎは「ザ・コーポレーション」でも描かれているが、“売れないものを作る企業”は有り得ないので、“いらん物でも踊らされて買うクセ”を直せば一歩前進。だいたいさ、TVをつけると薬、保険の宣伝が延々と続いて、ニュースもバラエティ番組も病気を次から次へと探し出してきて、あんなの一日見てたら確実に病んでしまう。運悪く食事中にTVを見なければならない場所で暮らし始めたので酷な毎日。“TV見ているバカ”と人を見下さないためにも必見。
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