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Virginia/ヴァージニア

  Virginia/ヴァージニア

 

 娘のソフィアが活躍しているから(「SOMEWHERE」)、監督はしないのかな?と思っていたフランシス・フォード・コッポラ。ところが店には「コッポラの胡蝶の夢」、「テトロ 過去を殺した男」が入ってきて、あの「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」の巨匠がインディ系?と不思議だった。ところが「コッポラの胡蝶の夢」が絶品で、いやはやヴィム・ヴェンダースの「パレルモ・シューティング」にしろジジイの方が“新しい映画”を撮っている!と驚かされる。それはクリント・イーストウッドもウディ・アレン(「ミッドナイト・イン・パリ」)もロマン・ポランスキー(「おとなのけんか」)もマーティン・スコセッシ(「ヒューゴの不思議な発明」)もスティーヴン・スピルバーグ「タンタンの冒険」)もご同様で、衰え知らずのこの人たちは恐ろしい。

 

 ロバート・アルトマンの「今宵フィッツジェラルド劇場で」なども、あんまり映画に詳しくない人が素で見て、面白いと言っていたくらいだから、やはりある年代以上の監督の方が、映画の作り方を良く知っているのでしょうか。お気に入りのデヴィッド・フィンチャーとかスティーヴン・ソダーバーグとかコーエン兄弟とかは、作品の中に律儀な義務感みたいなものが漂ってしまうのに対して、涼しい顔で大胆なことを試してしまうのは、“老練な”ということだけでは説明できない。早い話がたまたまふらっと映画館に入って観ても面白いし、予備知識があるとより面白い。どう転んでも楽しめる映画というわけ。若手はシリーズを手掛けて稼いでいるけれど、ジジイたちの方が最終的には黒字になる映画を作り続けている。レンタル屋ですから骨身に染みて知ってます、長持ちする映画ってホントに貴重。

 

 あっても良いし、なくても構わない予備知識ですが、図書館でアメリカ文学史のエドガー・アラン・ポーの部分を読んで本作を観ると“おおっ”という気持ちになれるかもしれません。江戸川乱歩の名前の元になった(「RAMPO」のDVDリリースされないものか)、アメリカ文学の重要人物をモチーフにした幻想的な世界は好事家にはたまらんでしょう。ホラーは見ませんが、オカルトものはイケるのでちょいちょい見ています。で、「ザ・ライト エクソシストの真実」が分かりやすいんですけれど、昨今の作品は現実寄り(真面目)で、映画寄り(ホラ)ではなくなってしまう。さじ加減というか感性というか、観客を惑わす技量は持って生まれたものなのか?事前に「コッポラの胡蝶の夢」を見ていたから、冒頭は美麗な映像を予想していたけれど、なんと「マチェーテ」みたいに古臭い。ところが「インフォーマント!」と違って、コレを効果的に使っている。観客が最初に眺めるのが古臭く描かれた現実世界なんだけど、怪しい時計塔がある田舎町なんて雰囲気プンプン。で、自分の本を“手売り”している飲んだくれ作家は不思議な世界へ迷い込んでしまう。迷い込んだら幻想的な世界が待っていて、映像はモノトーンの妖しい雰囲気に包まれる。

 

 作家を演じるヴァル・キルマーはオッサンが板についてきたけれど、「5デイズ」などを見ても悪くない。あのアイスマン(「トップガン」)もとうとう親父役ですよ。作家の背負っている過去と、田舎町の隠された秘密と、エドガー・アラン・ポーを交えて、観客はスクリーンから目が離せなくなってしまいます、ぜひご覧になってご確認を。観ているこちらは想像力を駆使して展開を読もうとするんだけど、臭わせ方が実に上手くて作品に酔いしれることになりました。作家の妄想が産み出す物語かもしれないし、「ラブリー・ボーン」のような問題を扱った物語かもしれないし、吸血鬼映画かもしれない・・・。そこに大きな役割を果たしたのがヴァージニアを演じたエル・ファニング2012年に注目の人々の中で最年少ながら、代表作を獲得。ポーの生涯を知っていると彼女の役名にビビーンときますし、「Vと呼んで」には吸血鬼映画好きとしてたまらないものがある。お姉さんのダコタ・ファニングは「ランナウェイズ」などに出ているわけですけれど、姉妹ともども“今でこそ演じられる”役に次々挑戦していくのかな?

 

 現代もIT機器を当然のように盛り込んで、笑いを交えてキチンと描き、妄想世界と自然に無駄なく対比させる。「抱きたいカンケイ」のアイヴァン・ライトマンも“様々な要素が入っているような気もするけれど、1本筋が通っていてスッキリしている”ように見えましたが、コッポラも年期の違いを見せつけました。コレだけ盛りだくさんな中身なのに上映時間89分で見せきってしまう。更に技術導入もしているらしく、アチラでは3Dだったんだって(詳細はパンフレットをどうぞ)。これが小規模公開というのが信じられません・・・、ではなく“日本アニメーションの新しい試み”「LIGHT UP NIPPON 日本を照らした、奇跡の花火」と同じで、公開期間の短い作品に当たりが潜んでいるのかも。少なくとも字幕担当が戸田奈津子さんなのが、ワシの場合何よりの安心材料だったりして。前日に「アベンジャーズ」を観て当るだろうと思ったけれど腑に落ちなかった。「ダークナイト・ライジング」クリストファー・ノーランでさえ、この余裕を獲得するには時間がかかりそう。ひょっとするとジェイソン・ライトマン「ヤング≒アダルト」)は将来獲得するかもしれない“すまし顔”ながら、やはり「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 のポール・トーマス・アンダーソンが次代を担う監督なんですかねぇ。

現在(8/16/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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 コッポラの胡蝶の夢

 

 「レインメーカー」以来本作まで監督から遠ざかっていたフランシス・フォード・コッポラ(詳細は「ヴァージニア」のパンフレットをご参照ください)。海千山千の監督だけに(「ランブルフィッシュ」)、インディ系の持ち味を活かして優れた1本をやすやすと撮ってしまう。この作品には大好きな要素(モータル/イモータル)やナチス(「ミケランジェロの暗号」「善き人」)、世界をまたに駆けた知的探求が自然に溶け込んで片時も目が離せなくなってしまう。カメラが絶品で、ハンガリー、スイス、インドなど美しく描かれている。主人公は各国を旅するわけですけれど、ジョーンズ教授のような冒険ではなく、過去に遡行する知的探求も含めた旅というのがワクワクさせてくれる。「レッド・バイオリン」とか「シルク」、ちょっと趣は違いますけれど「マイウェイ12,000キロの真実」などに近く、観客は主人公と共に激動の時代(1938年〜1969年)、長い旅を追体験する。

 

 雷に打たれた主人公の面倒を見るのがブルーノ・ガンツで、ヒトラー(「ヒトラー 最期の12日間」)も演じましたが、思慮深い人物(「愛を読むひと」「バーダーマインホフ 理想の果てに」)が似合います。またローマから呼ばれてくる教授役でマーセル・ユーレス(「ピースメーカー」「GOAL!」)が出てくるのも嬉しい。義理堅いのか、「レインメーカー」の主役マット・デイモンもチラリ出演(「小説家を見つけたら」にしてもこの人律儀です)。更に運命のヒロインを演じたアレクサンドラ・マリア・ララは原題が“YOUTH WITHOUT YOUTH:若さなき若さ”というくらいで、老けたり若返ったり変幻自在です。この人美人だなぁと思ったら出演作をけっこう観ていて、「ヒトラー 最期の12日間」、「コントロール」、「愛を読むひと」、「セントアンナの奇跡」、「バーダーマインホフ 理想の果てに」、「フェアウェル さらば、哀しみのスパイ」。特に「ヒトラー 最期の12日間」ではあの秘書役の人だから、ルーマニア出身のこの人は売れっ子だったのです。

 

 そして主役はティム・ロスでなければならなかった。老人から若返っていくとは「ベンジヤミンバトン 数奇な人生」みたいですが、「海の上のピアニスト」のイノセントな感じが本作でも活かされている。雷に打たれて大やけどを負い、庇護を必要とする(「潜水服は蝶の夢を見る」)サナギのような状態ですが、歯が生えてきたりして若返っていくドミニク・マティ。元は探究心ゆえに女性に去られた過去を持つ学者ながら、知的能力も向上して多重化した人格までコントロール。ナチを逃れてスイスで別の人生を送っていると、ひと癖もふた癖もある男に化ける。ほとんど「ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間」のライトマン博士みたいですけれど、有名テレビドラマの後に出演したのかと思ったら本作が先。超大作の要素をコレでもかと詰め込んでいるのに、無駄なく描けるのは予算が限定されているインディ系ならではで、巨匠フランシス・フォード・コッポラは自らにその枷をはめて、若手が真似できない優れた作品を撮ってしまった。もちろん列車の撮れる監督は一流も証明していて、ぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★★☆

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