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ヴァルハラ・ライジング

  ヴァルハラ・ライジング

 

 この作品を観に行く引き金になったのはもちろん「ドライヴ」。データベースで監督の過去の作品を漁ったり、紹介部分で“〜で注目されハリウッドでブレイク”などと書かれていると生理的に反応します。公開されている作品の前作はたいてい店にありますから、ワクワクしながら見て“時代に遅れているぜオレ”を認識したりして。「ソウル・キッチン」のファティ・アキンとか「未来を生きる君たちへ」のスサンネ・ビアとか。観れば見るほどつくづく、“全ての映画を観るのなんて不可能だよな”を実感。

 

 さて「悲しみが乾くまで」のサスンネ・ビアと同郷のデンマーク出身監督ニコラス・ウィンディング・レフン。「宇宙人ポール」のグレッグ・モットーラの処女作が観賞不可と同様に、彼の処女作も幻ながら、運よく「ドライヴ」の前作を観ることができた。これは昨今まれな体験で、渋谷のヒューマントラストシネマはエライ。そういやいつまで経ってもDVDレンタル・リリースされない「シリアスマン」もここだった。確かに本作を観れば、“もっと金やれば、こいつ凄いの撮れそうだぜ”と関係者が思うのもうなずける。

 

 VFXの自由度が増して「テイク・シェルター」は、インディ系にパニック映画の要素を盛り込むことが出来た。本作が展開するのはやたらと金がかかる“史劇的コスプレ”。ところがVFXを使用するのではなく、自然の風景をこれでもかと利用してインディ系の安っぽさを払拭。それにしても見事な自然がデンマークには残っているんですねぇと感心、抑揚に欠ける進行でも飽きずに観ることができます。「ハンター」もタスマニアの自然が良かったけど、デジタル上映ならではの感触でしょうか。これに比べると既存のコスプレはCGなどの修正を施さなくちゃなんないし、手つかずの自然が残る場所まで行く時点で金かかります。

 

 「テンペスト」がイケたのは自然描写と、出演陣が巧い人で占められていたからなんだけど、本作は主人公がキモ。無口な片目の男=“ワン・アイ”は「北斗の拳」のケンシロウそのもので、凄みがある。見たことないなぁというのは間違いで、演じるマッツ・ミケルセンの出演作は結構観ていた。「007/カジノロワイヤル」で敵役のル・シッフェル、「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」ではロシュフォール。「キングアーサー」にも「タイタンの戦い」にも出ていて、スサンネ・ビアの「しあわせな孤独」、「アフター・ウェディング」にも・・・。デンマーク出身で気がついたのは「デビルクエスト」などにも出ているウルリク・トムセンだけど、注目されているのはスウェーデンだけじゃないんだよなぁ(「ぼくのエリ200歳の少女」)。

 

 “エルサレムへ行く旅”というのが本筋なんだけど、“原始の時代”を表すための設定にしか見えない。それはキリスト教しかりで、遠く離れた極東の島国の人間にはピンと来ません。ま、“史劇的コスプレ”の売り“チャンバラ”を盛り込んでくれたから申し分なし。北野武「座頭市」で血しぶきをCGで描いていたけれど、本作でも無駄なく使いつつ、殺陣は素早さで勝負していて見応えあり。「最後の戦い」でリュック・ベッソンが世に出てきた時より、格段に映像表現は進化している。巨匠が問われるのは映像技術の活かし方に止まらず、たぶん時代感覚と余裕かもしれない。リドリー・スコットとか負けてないもんね。もちろん既存の作品にSF方面だけでなく、“史劇的コスプレ”方面からもチャレンジする人が出てくるのは映画好きとしてはありがたい。

 

現在(4/13/2012)公開中
オススメ★★★☆☆

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関連作

 ビューティフル アイランズ 〜気候変動 沈む島の記憶〜

 

 主流の日本映画に魅力を感じなくとも、注意していないと見逃してしまう才能があることを、まざまざと見せつけられたドキュメンタリーの秀作。是枝裕和がエグゼクティブ・プロデューサーを努めているんだから、少しは気にしておかなくちゃいけなかった。お客さんで最近は「エンディングノート」くらいしか見てないなという方がいて、辿っていけばまたまた“時代を遅れ取り”。「不都合な真実」 はものの見事に理屈をすり替えられて、“白熊くんのために、二酸化炭素を減らすのか、アホ”という認識を人々に植え付ける結果になっちゃった。人は“信じたい嘘に便乗したがる”。ここでは“温暖化”とも“二酸化炭素”とも言わないで、事実=気候変動をありのままに見せている。もちろん回避するロジックならいくらでも出てくるだろうけれど、ベニスの光景は冗談ごとではないでしょう。

 

 2010年にはちゃんと公開されていて、冒頭は最初に沈むとされるツバル。そういえばドニ・ラヴァン主演のユニークな一本、「ツバル」は2001年で「恋愛睡眠のすすめ」みたいなテイストが良かった。監督はさすが是枝裕和と仕事していただけあって、出てくる子供たちはごく自然に可愛らしく、活き活きしている。海亀ひっくり返して遊んだりしている光景は微笑ましいし、ココナッツも美味そうだ。「ビン・ラディンを探せ! スパー・ロックがテロ最前線に突撃!」 でモロッコで晩御飯ご馳走になるところがあるけれど、ここで出てくるご飯の光景は素晴らしい。ところが水の都ベニス、合衆国のアラスカと進んでいくと・・・、その辺はご覧になってご確認を。

 

 自然美を現在の技術を駆使して、可能な限り映像として残す。映画監督海南友子の実力はなかなかで、「シルビアのいる街で」に迫っている。「劇場版SPEC〜天〜」が“テレビ映像の中でしか生きなかったもの”を劇場で上映しているなぁ、などと驚いている場合じゃないですね。TVのドキュメンタリーではいくら真摯に作っても“うそ臭い”。しかし映画ですと“信じられない”事実をありのまま見ることができます。環境問題に目覚める云々じゃなくて、自然を残しておかないと、「ヴァルハラ・ライジング」みたいなことも不可能になる、それだけは困る。周防正行の「ダンシング・チャプリン」 は傑作ですが、こちらも重要な日本映画 です。

オススメ★★★★☆

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