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ソウル・サーファー

  ソウル・サーファー

 

 昨年の後半予告編に接して、“良かった上映されるのか”と嬉しくなった実話を基にした感動作。ま、たしかに実話ネタは恐ろしい現実(「ルート・アイリッシュ」とか)か、感動(「君への誓い」とか)の二択になってしまいがちですけれど、本作は優れている。描かれている人物が並じゃあないから。だって事実自体が信じられない。鮫に腕を食い千切られて、それでもサーフィン辞めなかった少女の物語なんて、その根性に圧倒される。「ブルー・クラッシュ」はど根性娘を描いていて爽快だったけれど、タイトルが魂だけに“人の心に響く芯”が本作の原作者にして主人公=べサニー・ハミルトンには通っている。

 

 この事実を知りませんでしたけれど、若い人には「ああ、原作読みましたよ」と言われたりして。なるほどね、サーフィンしていれば当たり前か、生きる伝説なんだもの。サーフィンに近寄らなかったのは根性も運動神経もないからで、実際はかなり過酷なスポーツ。一見華やかですけれど、身体つきを見れば一発です、体脂肪率が低くて全身筋肉の塊。オッサンですから若い俳優に目がいかなくて、親の役で出てくるデニス・クエイドとヘレン・ハントに驚いた。両親役だから、浜辺から見ているだけかと思いきや、なんとちゃんとサーフィンしている。身体つきも実に説得力がある。デニスは「ライトスタッフ」、ヘレンは「ウォーターダンス」以来見てきた役者さんだけど、サーフィン映画には出ていないはず。ちなみに「ビッグ・ウェンズデー」を見ておくと、親父のスタイルが古いものだということが分かります。

 

 さて本編の主人公べサニー・ハミルトンに扮したアナソフィア・ロブ、「チャーリーとチョコレート工場」に出ていたそうな。女の子の役者さんにとってティム・バートン作品は出世コースかも?「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコワスカちゃんが分かりやすい(「ジェーン・エア」)。オッサンの役者まで実際にサーフインしているんだから負けるわけにはいきません。やってます、素人目には鮮やかな波乗り以外の何ものでもない。効果を盛り上げるためにCGを使っていますけれど、添え物に徹している。サーフィンのテクニックだけでなく、意志の強い目元は魅力的。幼いのに映画を引っ張るんだから本物。

 

 「ブルー・クラッシュ」は主演のケイト・ボズワースだけやってましたけれど、親友役のアラナも凄いったらありゃしない。扮しているのがなんとジャック・ニコルソンの娘ロレインですよ。またライバル役のソーニャ・バルモレス・チャンは目をつけた関係者はけっこういそう。で、ラストまでいくと納得するんですけれど、映し出されている映像はそのほとんどが、ハミルトン一家のホームビデオを基にしている。“絵コンテ必要なかったかもね”というくらい本編の映像と使われているビデオ映像は酷似。実話を元にしているだけでなく、実際の映像まで元にしている。

 

 もちろん女優アナソフィア・ロブの挑戦はサーフィンだけではなくて、“どうしていいか分からなくなった現実”を生きる娘を体現。頭が下がります、脱帽です。だって腕を失ってもすぐに大会に出ようとするんだよ。ここからスポ根映画の王道パターンなんだけど、一度はくじけた彼女を立ち上がらせたのは“津波被害にあったタイの人々”。凄いよね、片腕でも困っている人々を支援するなんて。今となってみれば「ヒアアフター」が上映打ち切りになったのは“何で?”となりますけれど、日本人って“そんなに腫れ物に触るよう”に注意しなくちゃいけないくらいヤワなのか?惨状を目の当たりにして原発動かしちゃうくらいアホな為政者たちと、アレだけ大挙して被災地に行ったロック・ミュージシャンとか・・・。いかん清々しさが一気に死んでしまう。

 

 つい最近「ファミリー・ツリー」を観ましたけれど、アレとは違ってハワイ特有の“家族の絆”を真正面から描いている。クサいに決まっています、感動作の王道なんだから。でももうたまらんのです、分かりやすい感動作にはめっぽう弱いし、年取ったから涙もろい。「リアル・スティール」も何回見ても同じところで泣いちゃう。ただ多くの“実話を基に”映画が“ずいぶん作ってるんじゃないの?”と邪推可能な余地(エセ評論家のよって立つところ)がある一方で、惜しげもなくエンディングでその素材を公開している。凄いよなぁ彼女、始球式でちゃんとキャッチャー・ミットに届くまでスパっと投げちゃうんだから、といった感じでまた号泣。憂鬱なことで一杯の日本にこのど根性は響いて欲しい。不思議なことに、日本映画は本年度ナンバー・ワン候補(「レンタネコ」など)が続々出てきているけれど、洋画は「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」くらいだったから、本作は最有力。ポロポロ泣いたけれど、元気出ました、女の子にこそ21世紀の希望がある

 

現在(6/14/2012)公開中
オススメ★★★★★

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関連作

  ビッグ・ウェンズデー

 

 前々から見よう、見ようと思っていたサーフィン映画の代名詞。縁のない題材には見向きもしないけれど、どんなものやらと眺めてみたら、行きなり引き込まれる。撮影のブルース・サーティース(「ペイルライダー」)が写し出す波の映像は圧巻。78年の作品だし、“古臭かったらしんどそう”という予想は簡単に覆る。時代は合衆国がベトナム戦争に突入している65年。「ディア・ハンター」とかを並行してご覧になると、分かりやすいかもしれません。いつまでも若くはなくて、プロ根性を発揮してサーフィンアイドルを続けられる時代ではなかった。軍隊に入るのも、地道な仕事をするのも当たり前。この背景があるので、多くの人にアピールしたのでしょう。圧巻はラストのとんでもない波で、巻き込まれたら“確実に死ぬな”とビビる。しかしジャン=マイケル・ヴィンセントもゲイリー・ビューシィもウィリアム・カットもさすがです。「沈黙の戦艦」とかでは悪役だったけど、「ハートブルー」にゲイリーが出ているのはもちろん本作のゆえ。 
オススメ★★★★☆

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