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007/スカイフォール

  007/スカイフォール

 

 全世界でヒット中だそうですけれど、新生ボンドの陣営が整えられつつある超大作になっておりました。監督がサム・メンデスと聞くと「アメリカン・ビューティ」の人だろ?とも思いますが、現在リニューアル中の007シリーズはインディ系も手掛ける監督が起用される方向みたい。前作の監督はマーク・フォースターですけれど、サム・メンデスとは「君のためなら千回でも」でプロデューサーと監督の間柄。2作が対を成していると考えると、とても楽しめる。前作で放棄されたお約束の数々が今回復活しています。Qが出てきます、ボンドカーも復活します、ボンドガールと熱い一夜を過ごします、マニー・ペニーまで・・・。

 

 マーク・フォースターのテイストはそのまま継承されていて、前作はフランス出身の演技派マチュー・アマルリック(「さすらいの女神(ディーバ)たち」)で、今回はスペインの伊達男ハビエル・バルデム。ちなみに「007/カジノロワイヤル」のル・シッフェルことマッツ・ミケルセンはデンマーク出身ながら、「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」にも出るけれど、「ヴァルハラ・ライジング」の主役までバリエーションの広い人。

 

 ハビエルが悪役だと聞いて楽しみでした。だって、ラテン系色男もお手の物(「食べて、祈って、恋をして」「それでも恋するバルセロナ」)ですけれど、尊厳死を扱った深刻な作品でも素晴らしいし、入魂の主演作も。ただ「ノーカントリー」で、ターミネーターみたいな殺し屋を演じていますから、どんな感じに化けるか?マチュー・アマルリックは前作で「頭剃りましょうか?」と監督に聞いたそうですけれど(パンフレットをご参照ください)、21世紀のワルは「オースティンパワーズ」みたいでは笑われてしまいます。

 

 ボンド映画のお約束は復活しますけれど、今回彼が飛び回る国は少なくて、トルコと中国と本国=連合王国。ただしこれはルーツへの旅でもあって、今回観客は彼の出自に触れることになる。ロジャー・ムーアの「007 私を愛したスパイ」から観始めたシリーズですけれど、スパイだけにどこの出身で、肉親は誰か?とか、背景に触れることは殆どなかった。しかし新生第1弾でなんで抜け目のない男になったかに触れ、第2弾で非情さに磨きがかかり、第3弾にしてついに・・・というのは王道でしょう。

 

 サブタイトルがスカイフォールと聞いて、作戦名かと思いましたけれど見事にスカされました。ぜひご覧になってご確認ください。英国出身の監督サム・メンデスだけに、ロンドンの地下鉄で縦横無尽にボンド氏を活躍させる。「パーソン・オブ・インタレスト」などを見ると合衆国はとっとと対応していますが、名探偵が活躍した19世紀からの大都会も負けていません。テロは何もニューヨークだけのものじゃない、サッチャーだって吹き飛ばされそうになりましたからね。もっともテロを未然に防ぐことを必死にやってもらいたいので(「外事警察 その男に騙されるな」)、我が国では進まなくてもけっこうです。

 

 今回は派手なアクションも展開しますけれど(相変わらずガラスを突き破って痛そう)、陣営を整えつつある新生ボンド氏の脇役が魅せます。なんでレイフ・ファインズが出ているのかなぁも最後に納得だし、てっきりボンド・ガールだと思ったナオミ・ハリス(「マイアミバイス」の彼女はなかなかだ)は××ー・××ーだし、Qも素晴らしくリニューアルです(「テンペスト」のエアリエルから化けた)。ただし、ピアーズ・ブロスナンのジェームズ・ボンドに不可欠だったジュディ・デンチは残念な気持ちと、仕方ない気持ちがない交ぜ。

 

 彼女とダニエル・クレイグの相性は必ずしも良くなかった。それまでの甘さを新生シリーズは削いでしまったために、Mの位置が厳しかったんだよね。Mとボンドの間に緊張関係が生まれてしまう。ただ今回のジュディは「ペイド・バック」のヘレン・ミレンに負けず劣らず、かなり激しい銃撃戦を展開。またアルバート・フィニーがねぇ、美味しいのだ。最近お客さんで「いつも2人で」ない?と聞かれてパッケージ見たら出ているじゃないですか、若き日の輝く笑顔でオードリー・ヘップバーンと共演している!「ミラーズ・クロッシング」とか「エリン・ブロコビッチ」の彼は特にお気に入り。

 

 映画好きとしては美味しい人々が“お待たせしました”といった感じで出てくるのがなんとも監督の采配のニクいところ。「007かよそれ」と突っ込まれても仕方ありませんが、前作と並行観賞するとボンド・シリーズに回帰しているのです。オカマチックな悪役のハビエル・バルデムはボンド氏と対を成す存在で、目立たない場所に潜んでいる21世紀のワルは案外あんな感じかもしれません。アジトにあるサーバの形状は箱じゃないところがミソで、あの部分で語られるセリフが興味深い。戦争の武器は核爆弾ではなく、“デマとシステム”。

 

 英国人が立っていても違和感を覚えない上海の高層ビルも、中国で西洋化が進行している時代記号ですし、まさに過情報の超大作。公開初日の9:40に観ましたけれど、“映画の日”だけに9割入っている。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の時も平日に小学生を見かけて心配してしまいましたけれど、どんな反応なのかチト心配。だってかなり面白いんだけど、“分かっていなくちゃなんない”ことはたくさんあるし、盛り沢山なだけに上映時間は長いしね。ただ少なくともダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドをあと1作観たい。MI6の陣営も整ったし、監督も悪役も21世紀に対応するだろうし、なんと言っても新生に欠けているシャレの要素が欲しい。

 

現在(12/1/2012)公開中 
オススメ★★★★☆

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関連作

 パーソン・オブ・インタレスト 

 

 “9.11”以後にはありそうな設定で、情報量が過剰なので、映画に向かないネタだけにTVドラマになるのも納得の作品。世界の裏側で何が起こっているかを知るにもうってつけ。スパイ映画でも情報収集できますけれど、時事ネタをすぐに取り込めるのはTVドラマの特権。“先月のニュースで取り上げられたようなトピック”だってエピソードに込められる(「Lie to me」にもあった)。

 

 仕掛け人がJ・J・エイブラムス(「SUPER8/スーパーエイト」)と「ダークナイト・ライジング」脚本担当のジョナサン・ノーラン。カードを頻繁に使い、パスモやらスイカやらで個人の行動、居場所の特定などは、かなりやすやすと出来そうな装置が揃っているIT世紀。“テロを未然に防ぐ”という大義名分なら、この手のシステムがあっても不思議じゃない。それにしても被害者、加害者にかかわらず、犯罪に関与しそうな人を特定するなんて、怖がりのアメリカ人なら考えそうだ。携帯電話の盗聴など、見ていて損はない描写は多々ある。合衆国の場合、映画やTVドラマで描かれていることは“当らずとも遠からず”。

 

 元CIAと天才システム・エンジニアがタッグを組んで、非合法そのものなれど正義を遂行していく。「ホワイトカラー」よりハードかつシリアスに見えるのは、2人とも“孤独な人”だからだろうか。信頼で関係が出来ているわけではなく、“弱みを握ってやらせてる”。今のところ2までしか見ていないので、元特殊工作員:リースと天才エンジニア:フィンチに信頼関係が築かれていくかは不明ですけれど、リース役のジム・カヴィーゼルは「オーロラの彼方へ」が好きだったし、「デジャヴ」以来ご無沙汰していたから嬉しかった。フィンチ役のマイケル・エマーソンはぜひ映画でお目にかかりたい。ご無沙汰といえば「ワンダーランド駅で」の監督ブラッド・アンダーソンまで演出で参加、TVドラマも侮れない。「ニューヨーク、アイラブユー」とかオムニバス映画のノリを想像すると近いのかも。
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