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サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ  サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ

 

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 実際にカメラを使う撮影監督たちだって、そもそも技術者なんだから新しい機械をハナから否定したりはしない。「ラストエンペラー」のヴィットリオ・ストラーロも「グッドフェローズ」のミヒャエル・バルハウスも「ディア・ハンター」のヴィルモス・ジグモンドも技術者魂の人たちだなぁと感心。そんな中で「スラムドッグ$ミリオネア」を担当したアンソニー・ドット・マントルはある意味キー・マン。彼の撮った「セレブレーション」が映画にデジタルカメラの流れを作ったのだそう。映画運動“ドグマ95”が起点で、作品は「幸せになるためのイタリア語講座」しか見ていないけれど、確かにそれ以前の映画とは違って見える。「未来を生きる君たちへ」の監督スザンネ・ビアも参加した一人だ。それにしても「スラムドッグ$ミリオネア」の撮影風景には驚かされる。極小カメラをマックのノート・ブックに取り付けて撮影しているんだから。

 

 カメラだけでなく、さっさと仕上がった映画を編集する側も技術習得を迫られる。大変だけど慣れたわよと語るアン・コーツは「アラビアのロレンス」を担当した人で、かの傑作の名シーンについて触れているところが実に印象的。監督も撮影も編集も前からあった映画の重要なパートですけれど、デジタル化に際して出てきた技術者がカラリストなのだそう。その技術が未知の領域だけに自信たっぷりで、「私のスイッチひとつで作品が変わる」などと豪語している。コロッと騙されたのは「オー・ブラザー!」で、てっきり撮影監督ロジャー・ディーキンスの技量が全てだと思い込んでいたら、なんとなんと後付けで色変えられるのね・・・。ま、「AVのモザイク処理みたいだろ」などと言ったら見当違いも甚だしいけれど、ITを自在に使いこなす人特有の、自信たっぷりな言葉は野心的で心強い。

 

 野心的(生意気)な若者が次々に映画界に進出してくるのは健全かつ自然。そしてデジタル化の波は全てを覆い尽くしてしまう。とっくに脱アナログしていた音楽と映画の時差みたいなもので、EV.Caf 超進化論 (p37あたり)をご参照頂きたいんですけれど、先端の音楽家坂本龍一氏からみたら、「戦場のメリークリスマス」の撮影現場は19世紀的だったそうな。80年代のあの本では予見されていた事がもうすぐそこ。ただしそれはもうちょっと後のことで、現時点ではない。作中語られているのは、デジタルの情報量は映画にまだ不十分なのだということ。強引だけど、レコードとCDの関係に例えることができるかもしれない。利便性においてCDは優れていた。ホコリも静電気も気にしなくていいし、汚れがついたら拭き取るだけ。ただし拾える音域が狭くて、実は音がクリアにもかかわらず“足りなかった”のだ。CDを長年聴いてきてmp3を試した時の印象も「あれ?音悪いな」だった。ただしこれもmp4になったら改良されて、スマート・フォンの音は申し分なく、映画まで見ている始末。

 

 裏方がほとんどの中で俳優も2人ほど出てくる。ジョン・マルコヴィッチはデジタル化を歓迎「待ち時間短いし、テンション維持できるからいいね」と語るが、「抱きたいカンケイ」に出ていたグレタ・ガーウィグなどは電車の中でスマート・フォンを使って見ちゃうのねと複雑(やってるだけに申し訳ない)。鑑賞する環境も多種多様になっているけれど、本来お披露目の場である映画館にもデジタル化が急速に侵攻している。ここでもジョージ・ルーカスが立役者で、“奴のせいでミニシアターが・・・”とは思わずに、同意見。彼が言うには「みんな劇場で見てみろよ、ひどいもんだぜ」は力強く頷いてしまう。いち早く劇場に駆けつけるのは今では“ネタばらしで、人に嫌がらせをするため”だけど、以前はフィルムの劣化が原因。公開されてすぐの時はキレイでも、時間が経つとだんだん汚れてきたのだ。ですから、金のかかるデジタル化にするのではなく、ブルーレイで上映するという決断(「ヤバい経済学」など)もミニシアターには必要。だからジャツク&ベティはエライ。

 

 最近目にする映画はどうも過情報だなぁという印象が拭えなかった。全部ではないけれど、納得できる材料をこのドキュメンタリーは提供してくれた。作品の醍醐味を減殺してしまうので、メイキングなどはなるべく見ないで劇場に行く。しかし鑑賞後はあれどうなってんだろう?という興味から覗いてみたくなる。ただし、単品ではプロモーション映像となんら変わらないから退屈。実に待ちに待ってた中身で、ドキュメンタリーでワクワクするとは。欲を言えばあと2人、リドリー・スコットとヴィム・ヴェンダースの話が聞きたかった。YOU TUBEを元に「JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]」を製作したリドリーの仕事は21世紀的だし、ヴェンダースはここで語られている技術革新をかなり早い段階で試行してきた一人。「夢の涯てまでも」でハイヴィジョンを取り入れ、「パレルモ・シューティング」では写真の色彩加工を描き、「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」では3Dに挑戦。ま、とっくにビデオで映画を撮っていたジャン=リュック・ゴダールがもっと先端か?言いだしたらきりがないな、認知度低いけれどスピルバーグ「タンタンの冒険」 なんか・・・。ただし、デジタル技術が進化しようとも画家の資質がなければ「リトル・ブッダ」 は撮れないのだ。IT化は“早く余地なく固まっていく”事態を招来するけれど、目まぐるしく新作をリリースしていては、TVドラマとなんら変わらない。最近ハマっている「THE MENTALIST メンタリスト」 を中身で圧倒する作品に来年は何本お目にかかれるか。

 

現在(12/25/2012)公開中 
オススメ★★★★☆ 

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 THE MENTALIST メンタリスト 

 

 お節介にも海外テレビドラマを大量に借りていく方には「いっぱい見たからって褒められたりしませんよ」などと言ったりする。もちろんそれは継続して来店していただきたい下心もあるけれど、見過ぎるのは目に良くないし・・・。ところがこのTVドラマはほとんど麻薬の如き効力があって、気がついたら半日見ているという有様。

 

 魅力はもちろんサイモン・ベイカー扮するパトリック・ジェーンで、ハンサムかつ切れ者。頭の良い役は「キラー・インサイド・ミー」でも「マージン・コール」でも演じたけれど、魅力的な笑顔は女性に受ける大切なポイント。もっともヤツだけがワシの目的ではなく、ちゃんと華が用意されているからこそで、リスボン役のロビン・タニーとヴァンペルト役のアマンダ・リゲッティが文句なし。「バーティカル・リミット」のあの妹もチームを束ねるボスとは月日の経つのは早い。

 

 名探偵が通用しなくなった21世紀、「ライ・トゥ・ミー」のライトマン博士は人の表情で嘘を見抜きますけれど、コチラのジェーンはもともと霊媒師。ただし、霊感なのか?手品なのか?まだ第一シーズンしか見ていないから、“種明かし”はされていなくてついつい見入ってしまう。とぼけた感じでズバリと確信に迫る、という展開は昨今の現実的な映画に絶えて久しいですから、その飢えを満たす意味でも人気があるのかもしれません。また「名探偵MONK」も少人数のチームで事件に挑みますが、脇で良い味を出すチョウもリグズビーもお気に入りだけにしばらくは目が離せなくなりそう。
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