関連テーマ

 
サイドボックス

ここにテキスト


出し

ルート・アイリッシュ

  ルート・アイリッシュ

 

 英国の映画監督で良く観ている人はマイケル・ウィンターボトム。彼のファンというより、“手掛ける題材”が引きつけるので「ウェルカム・トゥ・サラエボ」以来「イン・ディス・ワールド」、「グアンタナモ、僕達が見た真実」「マイティ・ハート/愛と絆」などを観てきた。テレビのニュースやドキュメンタリーでは、どうしても“突っ込めない所”を補えるのは映画の特権。情報の主流がテレビ・新聞だとして、本や映画で補っていかないと、唖然とする現実に直面しかねないのが21世紀。昨今はとにかくテレビは見ないし、新聞は“見出し”だけでご遠慮させて頂いている、という“体たらく”で世間様とのズレが増す一方。でもメッセージが強い本やら映画は“毒”が身体に回るわけで・・・(吉本隆明氏の「真贋 」は大変助かります)。

 

 ケン・ローチもCIAがニカラグアの内戦に関与したことを描いた「カルラの歌」(ごめんなさいDVDレンタルありません)を見ていたし、“お気に入り”になっていそうな監督。ところが巡り会わせが悪いのか、いっつも見逃してきた。ま、映画を観れば見るほど“映画を知らない自分を発見”します。本作も「ヴァルハラ・ライジング」の時、予告編を見てギリギリセーフ。何より気になったのは“民間軍事会社を描く”という部分。「ヤギと男と男と壁と」にも出てきましたが、かなり突っ込んでます。細かいことはパンフレットをお読みいただくのが一番ですが、知らなかったイラクの実情が書いてあって勉強になりました。“ターバン狩り”や“命令17号”は確かに大っぴらにはできない。「マクロスF」の主人公も民間軍事プロバイダー所属ですが、“死んでも名誉とは無縁”というシーンがありました(アニメーションは侮れない)。 

 

 もっともニュースに代わって“現実とのズレを埋める”側面は大きいですけれど、本作はきちんとドラマとしても成立している。留守番電話に残されたメッセージから始まっているように、“身内を失った”人々の物語。亡くなった人が残したメッセージは切ない(「マーサの幸せレシピ」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」)、それも親友フランキーを死地に誘ったのは他ならぬ主人公ファーガス。演じるマーク・ウォーマックは見たことのない人だけど「エル・スール」のオメロ・アントゥヌッティに似ているんだよな。フランキーの奥さん=レイチェル役の人も上手いけれど、見慣れない顔なので新鮮。ただ彼が活動するのが英国で、IT機器を駆使している(「ハンター」)。どーして現地に乗り込んでいって真相究明しないのか?とも思いますが、案外監督の戦略だったのかもしれない。もし戦闘シーンを描くとなると、「グリーン・ゾーン」「ハート・ロッカー」が分かりやすくて娯楽性が滲んでしまう。むしろウィキリークスの映像を流用することで、観客に“現実に起こっていること”として認識させようとしていたのかも。

 

 何でもかんでも“資本主義に任せりゃ良い”を繰り返してきて、とうとう戦争までお任せするようになっちゃった。さすがに政府の民営化はないだけに、議員定数だけは減らないけれど、民営化の果ては最も悪い“商人(あきんど)主義”が辿る道だから、ジ・エンド。こう言っちゃあなんですけれど、商人の欲なんてセコくて、“お客さんが来なくなったら店じまい”を知っているから無い知恵を絞ります(イッパイいろんな映画はありますよがこのページのテーマ)。でも“競争を勝ち抜く才能”を持つ人は“他者を蹴落とす”能力にも秀でているので、パイを細かくする(安売り競争しか頭に無い)。商いを始める人間は頭を使いますが、成功に便乗して後からやってくる有能な人は・・・。予感として“どうも先がないよな”と思いがちな心理は、我々が頭上に頂いている連中が揃いも揃って“細かくする”能力に長けているように見えるからかも(「マージン・コール」 )。

 

 早い話が不勉強なんですけれど、ずいぶんとニュースを見ていなかったんだなと痛感。テレビ、新聞はダメで、インターネットはというと上書き速度が秒進分歩で、真偽不明の“情報の洪水”で溺れそうになる。辿り着く先が本か映画というわけで、ちっとも21世紀っぽくない代物で情報収集。劇場初体験のケン・ローチ作品はドラマとして成立するだけでなく、見てこなかったニュースに触れる機会もくれた。あわてて「エリックを探して」を見たらやっぱり良く出来ていて、登場人物のセリフに込められた情報は新聞読むよりためになる。スサンネ・ビアの「ある愛の風景」は反戦映画だなぁと痛感したように、「別離」も凄かったし合衆国産ばかりでは、世界とどんどん無縁になってしまいますね。

 

 劇場の外に出ると、“小沢一郎 無罪”の号外が配られている。信じられないくらいの平和の中で暮らしているのが良いのかどうか?劇場は年配者で占められていたけれど、若い人に受けない題材?観に行った劇場の公開が3/31からだったので、ぎりぎりセーフかと思いきや、これからまだ上映される劇場もありますから、ご近所でお見逃しなく。それにしても銀座テアトルシネマは「レンタネコ」を公開予定で、「人生はビギナーズ」をまだ上映していた、センスの良さは継続中。「ワンダーランド駅で」とか「世界最速のインディアン」とかはココだった。

 

現在(4/26/2012)公開中
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

前のページ  次のページ

 

top

 

関連作

  バンバン・クラブ 真実の戦場

 

 もったいないけれど「戦場カメラマン 真実の証明」と同じくパッケージを見てスルーされちゃう可能性が大きい“実話を基にした”報道カメラマン映画。実は観に行こうとしていたのに、いつの間にか公開終了で、入荷してきてビックラこいた。この手のジャーナリスト を描いた作品は好物だし、テイラー・キッチュは旬の俳優のはず。超大作「バトルシップ」「ジョン・カーター」 が同時に上映(4/2012現在)されているんだから、大丈夫だろうと思っていたのが大間違い。

 

 描かれているのは南アフリカ共和国。時期としてはネルソン・マンデラが大統領になる寸前、アパルトヘイトが廃止された後から物語は始まる。この時期までは世界が注目していて、報道カメラマンが滞在していたわけだ。ご参考までに時系列でご覧になるには「エンドゲーム」「マンデラの名もなき看守」→本作→「インビクタス 負けざる者たち」といった感じでしょうか?

 

 主人公はライアン・フィリップで、順調なキャリアを築いている。「クラッシュ」「カオス」「父親たちの星条旗」「アメリカを売った男」と面白い作品に出てきた。ただし本作では脇に回ったテイラー・キッチュがかなり美味しい役どころ。「バトルシップ」「ジョン・カーター」でファンになった方は必見です。「キリング・フィールド」以来注目されるのはジャーナリストが追っている“歴史上の出来事”。ただ本作はその場にいたカメラマンにも、焦点が当てられていて新鮮です。カメラマンも人間で、悲惨な出来事を撮り続けていれば正気を失い・・・。ぜひご覧になってご確認を。

 

 テイラー・キッチュ扮するケヴィン・カーターは南アだけでなく、スーダン(「マシンガン・プリーチャー」を参考までにどうぞ)での写真がピューリッツァ賞を獲得する。「おとなのけんか」でもジョディ・フォスター が突っ込まれていましたが、ぬくぬくと先進国で暮らしている人間の側が“アフリカは悲惨なのよ”から“あの人たちの生き方って羨ましいよなぁ”になった時に案外変化があるかも?
オススメ★★★★☆ 

Amazon.com

DMM.com

top

 

  エリックを探して

 

 テレビ番組“FOOT×BRAIN”で紹介されて、気にはなっていたけれど、なぜか見逃すケン・ローチ監督作。「ルート・アイリッシュ」 に合わせて見てみたら、現実路線のファンタジーで舌を巻く。大人向けの辛口で、若い人が見たら“どこがファンタジーなんだよ”と突っ込まれるかもしれない。でも孫のいる爺さんでも“自分に打ち克つ”お話なんてめったにお目にかかれない。

 

 大枠で「幸せの1ページ」に近くて“妄想が弱気な主人公を勇気づける”。作家の創出したキャラクターではなくて、本作はマンチェスター・ユナイテッドのカリスマ・サッカー選手エリック・カントナが主人公を導く。“FOOT×BRAIN”で司会の勝村政信(この人は「ソナチネ」が忘れられない)が「人生立て直すのはあんただろ」と言っていたけれど、ファンにとってはすべてをひっくるめて神なのだ。「マラドーナ」が分かりやすくて、エミール・クストリッツァみたいにケン・ローチもファンなんだろうか?

 

 大人向け現実ファンタジーはとにかく辛い現実満載。ホントは“運命の人”のはずの最初の奥さんからは逃げまくって、後妻の連れ子は21世紀の子供の例に漏れずエライことしでかしてくれる。冴えない主人公は「ブロンクス物語」みたいに気骨もないもんだからギャングの言うなりになったりして・・・。そこでカリスマ選手がなんとか勇気づけてほんの少しだけど、前進するところは感動的。“一人でダメなら仲間がいるさ”というメッセージこそが21世紀には必要。悪党も倒したり殺したりするのではなく、懲らしめなくては(「ミックマック」)。

 

 問題提起の作品を撮るケン・ローチも英国人だけに、サッカーから無縁ではない。その辺はマイケル・ウィンターボトムの「ひかりのまち」などでも伺えます。セリフの中に資本主義への痛烈な批判があって、いちいちうなずいてしまう。彼の他の作品も遅ればせながら見たくなった。
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system