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パーフェクト・センス

 パーフェクト・センス

         

 この作品はホントにたまたま遭遇した1本が導いてくれた。意識せずHDに貯めておいた作品をタイトル未確認で見始めたら、テイストがあれ?これひょっとしたらスサンネ・ビアの作品じゃないか?と気づいた時には、虜になっていた。作品名は反戦映画の傑作「ある愛の風景」。主演しているコニー・ニールセン(「ハンテッド」)を、インターネットで辿っていって本作に至る。「善き人」はアダになりましたが、やはりネットは有効なツールだと再確認。“馬鹿とハサミは使いよう”です。

 

 さて“感覚が徐々に失われていく”というお話にまず魅かれる。「ブライドネス」は人々の視覚が失われ、閉鎖された空間で人間のエゴがむき出しになる、恐ろしくも圧迫感のある1本でした。しかし本作はパニック映画ではあるけれど、それは一側面に過ぎない。直近で「コンテイジョン」がありますが、インディ系だけに「アウトブレイク」のようなパニック大作のパターンからは自由でいられます。冒頭から監督の選んだテイストは「ひかりのまち」のように、街の描写を主にしていて好印象。

 

 主人公は料理店のシェフと感染症学者。シェフがユアン・マクレガーで学者がエヴァ・グリーンオビ・ワン=ケノービに扮したことはキャリアの枷にならず、順調に出演作を追加し続けているユアン。「ゴーストライター」も良かったし、今からメラニー・ロランと共演が楽しみな「人生はビギナーズ」は来月公開か。この人のファンじゃないけれど、ついつい観ています。過度な変身をしなくても彼ならではの役は固定しそうで、「ヤギと男と男と壁と」みたいなコミカルなのも、「天使と悪魔」みたいな悪役も演じて作品のバリエーションは豊富。SF超大作「アイランド」にも出ていたけれど、この手の作品でもちゃんと映画を引っ張ってる。

 

 そしてジェームズ・ボンド運命の女(「007/カジノロワイヤル」)=エヴァ・グリーンはお久しぶり。「コンテイジョン」でもマリオン・コティヤールとか、ケイト・ウィンスレットが医療のエキスパートとして出てきて、説得力がありましたけれど彼女でなくては。なにせSFパニックでありながら“デート・ムービー”としても成立するんだから。また脇で出てきてお楽しみはコニー・ニールセン(「閉ざされた森」)だけではなく、「ウェルカム・トゥ・サラエボ」のスティーブン・ディレインも良かったし、なんとスターウォーズのウェッジ=デニス・ローソンが料理店オーナー役で出ていた。あの「スターウォーズY ジェダイの帰還」でデス・スターに最後の一発をかましたX−ウィング・パイロットも年を取りましたな。

 

 単純に原因不明の“感覚喪失”だけを描いていくなら料理店は不要で、どことなく「マーサの幸せレシピ」より、忙しそうな「ディナー・ラッシュ」を思わせる部分を強調。ここで、「フード・インク」とか「未来の食卓」みたいなメッセージ“人類の嗅覚や味覚が失われたのは、食文化が資本主義によって侵されたからだ”が込められるかと思いきや、そっち方面に傾斜しない。むしろ嗅覚がなくなったら、舌の感覚でお客さんを満足させようという店の面々の前向きさに感動する。「コンテイジョン」にしろ過度に“〜が悪い”という描き方を慎むのは「呪いの時代 には案外重要。更に「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」 のような全世界の描写は予算削減にも繋がるけれど、21世紀の観客にはアピールする。ですから「アワーミュージック」にも通じる作品で、この監督は凄いのでは?と「トゥモロー・ワールド」の時みたいな衝撃があった。

 

 ところが“素晴らしい才能、監督のデヴィッド・マッケンジーは知らなかった”というのは思い違いで、恥ずかしながら作品は見ていた。ティルダ・スウィントンの裸が見たくて「猟人日記」、アン・ヘッシュの裸が見たくて「愛とセックスとセレブリティ」・・・やれやれ。ま、「猟人日記」の主演だったユアンが起用されるのは納得。更に画的には本作に受け継がれている「猟人日記」のテイストが素晴らしかったし。

 

 嗅覚→味覚→聴覚と喪失は進行して人々は絶望の淵へと追いやられるけれど、そんな中で希望と愛に満ち溢れるなんて凄い。「みえない雲」に近いでしょうか?もちろん人々それぞれに抱く感想は異なるでしょうから、ぜひご覧になってご確認を。この自由さはミニシアター系の特権。「黄色い星の子供たち」以来の新宿武蔵野館でしたが、心意気は貫いている。年配の人が多かったけれど、映画好きは2012年に過度に否定しない、上品な作品(「SOMEWHERE」「ミッション:8ミニッツ」)に遭遇すると幸せになれるかも。「ガタカ」の監督、アンドリュー・ニコルの新作「TIME/タイム」は果たしてどうなるのかな?

 

現在(1/10/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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ある愛の風景

 

 「未来を生きる君たちへ」からフィルモグラフィーを逆に見ることになったスサンネ・ビア。もう冒頭から彼女のテイストだと分かるくらい、その描写は完全に好み。合衆国に呼ばれるのも(「悲しみが乾くまで」)、この作品がリメイクされるのも(「マイブラザー」)、納得の反戦を訴える素晴らしいヒューマン・ドラマ。“悲しみに覆われた世界”は「未来を生きる君たちへ」にも通じる21世紀に重要なテーマ。合衆国でも「さよなら、いつかわかること」で遺された家族が描かれますが、本作は生還した兵士と家族の物語。死地からの生還を美談にすることなく現実的に描いている。その冷徹な視線はどこか戦争映画を“お祭り騒ぎ”として描いてしまう(「世界侵略:ロサンゼルス決戦」)男の監督とはやや趣が異なります。まるで別の視点ではなく、“やや趣が異なる”ここが肝心で、“見ている男”と“男を見ている”のとは違っている。

 

 アフガニスタンに兵士を派遣しているのは合衆国だけではないし、敵ですから容赦なく襲いかかってくる。ヘリコプターは特に的にされやすい(「大いなる陰謀」)。撃ち落されてなんとか生き延びたけれど、山賊みたいな連中には西側の法律なんて通用しない。「ディアハンター」より残酷で、恐ろしいことを強要され人間性を失ってしまうミカエル。物語の始めでは出所してきた弟を思いやる兄だったのに、戦争はそんな彼を変えてしまう。「戦場カメラマン 真実の証明」にも通じるこのPTSDという病はそう簡単に治せるものじゃないし、心の病は周囲に理解されにくい(「ツレがうつになりまして。」)。

 

 戦争が生む悲劇は破壊だけではない(「サラエボの花」「あなたになら言える秘密のこと」)、この動かしがたい事実を丁寧に描いたスサンネ・ビアは凄い。「ハートロッカー」のキャスリン・ビグローに驚いている場合じゃないですね。もちろん監督だけでなく、ミカエル役のウルリク・トムセンの実力が知れ渡るのも納得(「デビルクエスト」)。でもコニー・ニールセンは“この作品が元で”じゃなかったんだよなぁ。「ハンテッド」「閉ざされた森」に出た後なんだもの。
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