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ドライヴ

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 “依頼仕事は黙って完璧に仕上げる”プロのドライバーが主人公の犯罪アクション。昨今この手のネタが劇場で観られなくなって、残念な思いをしていたところへ出現しました。“〜(作品名)に賞をあげられた〜賞”の色合いが濃い昨今の映画祭。本作はアカデミー賞インディペンデント・スピリット賞などで話題が盛り上がり、見事映画館で拝むことが出来た希少品。平日なのにけっこうお客さん入っていました。

 

 犯罪者を現場からパトカーの追跡をかいくぐりながら逃がす、すぐに思いつくのは「ザ・ドライバー」。ライアン・オニールはそれまでのイメージを覆すかのように、ウォルター・ヒル印のアクションで新境地を開拓。ま、パロディとまではいきませんが、同じネタで勝負のジェイソン・ステイサム主演「トランスポーター」はヒットしてシリーズ化。では2012年が当たり年になりそうなライアン・ゴズリングが無口なドライバーに扮するとどうなるか?一見使い古されたネタをデンマーク出身の監督ニコラス・ウィンディング・レフンは現代に通用するように料理。冒頭はもう完全に「ザ・ドライバー」 の踏襲かと思いきや、警察無線をきっちり聞きながらパトカーの動きを察知。ヘリコプターだって巻いてしまう。走り屋が言ってたけど、集会もヘリのおかげで簡単にとっ捕まっちゃうんだそうです。監督は主人公の腕前を披露するこの部分で、あっさりした味付けをして独自路線、無関係に車がひっくり返ったりしない。

 

 デンマーク出身の監督は「未来を生きる君たちへ」のスサンネ・ビアくらいしか知らないけれど、「光のほうへ」とか店にも並びだした。スウェーデン勢も「ぼくのエリ200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソンが「裏切りのサーカス」を撮ったり「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」は合衆国でリメイクされたり、注目度が上がっている。ヴィム・ヴェンダースが健在(「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」)なドイツ勢も若手は活躍している。昨今はヨーロッパ勢が合衆国に血を入れている時期なんでしょうか?ニコラス監督の前作「ヴァルハラ・ライジング」は未見だけど気になる。

 

 無口で素性の知れない男は“表の顔”がスタントマン&修理工。このキャラクターは余分な説明を省くのに役立って、車をかっぱらうのはお手の物だし、最も車の動かし方を知っている“顔のない男”。しかし腕前を知っている彼のボスはレースに出そうとする。カー・レースは金がかかるのが常で(「デイズ・オブ・サンダー」)、ヤクザ者に金を借りるところできな臭さが漂ってくる。それと同時にふとしたきっかけで、同じ階に住む子連れの女と知り合いになる。女を演じるのがなんと先月観た「SHAME-シェイム-」のキャリー・マリガン。「17歳の肖像」で絶滅危惧種=夢見る少女を演じた女の子が、あっという間に刑務所に入っている夫を待つ奥さん。

 

 物語はかつてステイーヴ・マックィーンが演じると様になった内容だけど、21世紀の今はライアン・ゴズリングでなければならない。可愛い顔だけど、どこかに凄みを秘めている感じが出せるのは彼ならではでしょう。また地元のヤクザ者って感じで出てくるのがロン・バールマン。彼が出てくると、お喋りをとったタランティーノというか、北野武作品に近い印象を獲得。トム・ウェイツに似ているから、ジム・ジャームッシュ「ゴーストドッグ」とかも思い起こされる。面持ちが強烈だからこそなんだけど、「ヘルボーイ」とか「デビルクエスト」方面とは反転した悪役も難なくものにしていた。

 

 そして肝心のカーチェイスは派手さを抑え、音で勝負。既に「コラテラル」がハイヴィジョンを導入して“夜の景色”に新味を出していたので、この戦略は吉と出た。「僕が結婚を決めたワケ」では電気自動車に、わざわざエンジン音を轟かせる技術を売り込んでいたけれど、桜木町にあるブルク13の音響スペックだからなのか、強烈で素晴らしい(アカデミー賞もこれでノミネート)。デンマークの血がではなく、「ザ・ドライバー」と同じロスアンゼルスを舞台にして似たようなネタで堂々と勝負した監督の度胸は見上げたもの。アカデミー賞の効果もあって、ヒットしそうです男性向けのハードボイルド最近少ないから。

 

現在(4/2/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  フランス特殊部隊GIGN 〜エールフランス8969便ハイジャック事件〜

 

 実際に起こったハイジャック事件を基に、突入部隊GIGNを中心に描くアクション。「アントニー・ジマー」でも特殊部隊が出てきますが、描かれ方は地味で渋い。合衆国ですと派手でカッコ良い「スピード」とか「S.W.A.T」になるし、「スペック」「外事警察」にも突入部隊が描かれますが、本作の実態に近づけるような描写は新鮮。隊員に召集がかかって、自転車で参上するところなど生々しい。 

 

 仕事として“勇気のいる職務”を遂行している面々と平行して、テロリストと命令する側が出てきますが、ここが考えさせられる。事件発生は1994年なれど、冒頭は「ユナイテッド93」とほとんど同じ。ハイジャック犯の目的は・・・、ぜひご覧になってご確認を。この事実を政府要人とかは知っていたわけだけれど、フランスは未然に防げて、合衆国はあの悲劇に直面することになった。確かにあまり大っぴらに知らせれば、“テロリストの教科書”にされてしまうからまずいけれど、ネットワーク化が進んでいるテロリストの先手を今後取れるのか? 

 

 実際の映像を交えると効果はあがる。「パッセンジャー57」とか「ナイト&デイ」みたいに狭くとも大立ち回りが出来るのはそれこそ“映画の中だけ”。当事者にとってはツライかもしれないけれど、TVに写し出された映像の向こうで、“何が起きていたか”を観客は見せつけられる。隊員の一人に焦点を絞って、エピソードを拡散させないのはさすが。ヒーローは登場する隊員全員だ。政治的意図、その気配もなく、事実を可能な限り映画として再現して見せている。「5デイズ」「バンバンクラブ」「戦場カメラマン」などと同じく、断然おススメの傑作です。くれぐれもパッケージで敬遠されないように。「ジャック・メスリーヌ」もやたらタイトル長いけれど、GIGNだけじゃあ分からないもんな。
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