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 アカデミー賞の宣伝効果も切れてしまったのか、周りに聞いても反応の薄い本作。インディペンデント・スピリット賞も獲っているし、フォックス・サーチライト社製だし、万年映画青年ジョージ・クルーニーが主演だし、といった感じで安心材料満載。データベースを漁ると「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」の製作総指揮もしている監督は「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン。ワイン映画から7年経ったけれど、楽しみだった。取り上げているテーマも描き方も完全に好みで、更に感動作なのに泣かずに済む上品さもある。

 

 一抹の不安は主演のジョージ・クルーニーで、「マイレージ、マイライフ」のように製作にタッチしていないと演技のプロに徹しますが、関わりが深くなると過剰になる場合がある。コーエン兄弟の作品(「オー!ブラザー」)や「ヤギと男と男と壁と」が猛烈に分かりやすいんですけれど、肩に力が入るんじゃなく顔面が力んでしまう。もっとも最近は抑制が効いてきて「ラスト・ターゲット」とか、監督作では出番の少ない悪役を嬉々として演じる余裕も出てきた(「スーパーチューズデー〜正義を売った日〜」)。製作にタッチせず、演技者としてのみの参加ですから映画俳優ジョージ・クルーニーの実力を披露。ファンの方々必見です、ここまで繊細なごく普通の彼はなかなか拝めない。

 

 いきなり人生のツケが回ってきた男の典型で、仕事中毒が祟って次女と触れ合ったことはないし、ボート事故起こして意識不明の重体になった奥さんとは疎遠。おまけに一族の家長だから莫大なハワイの資産をどうにかしなくちゃなんなくて・・・。なんとか奥さんが回復したら、“今までの時間”を取り戻そうとしみじみ思っていたけれど、実は浮気されてたことを長女から暴露されちゃう。この長女役のシャイリーン・ウッドリーが本作最大の収穫で、今後まず間違いなくブレイクしそう。全寮制の学校に閉じ込めておいても、バッチリ今風の女の子に成長。芝居は「JUNOジュノ」エレン・ペイジに近いけれど、目元がもうナタリー・ポートマンの再来に見えた。プールで母が回復不能であることを告げられるシーンが素晴らしい、ぜひごらんになってご確認を。彼女と「ラブ&ドラッグ」のチラリ出演も良かったジュディ・グリアがたまらなくて、この監督の女優選択眼は信頼できる。それは「サイドウェイ」のバージニア・マドセンもしかりです。

 

 邦題も悪くないけれど、原題の“THE DESCENDANTS”=末裔たちが肝心で、舞台はハワイでなければならなかった。家族の絆を描く場合、本国だとどうしても「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」のような展開になりがち。ポリネシア圏にはまだ残っている“一族”という概念が重要(「クジラの島の少女」)。実は去年亡くなった祖母には介護サービスとかいろいろと手を尽くしたのだけれど、未だに気持ちの整理ができない“果たして本人はどう思っていたのか?”。ま、あの世に行って聞くしかないので、こういう時は“あの世”というものの考え方に助けられる。本作は亡くなっていく本人がケリをつけているけど、残される家族にとっては悲喜こもごも。実に優れた内容で、身内の死に直面した人々を独特のタッチで描ききっている。残された父と娘という内容だと「さよなら、いつかわかること」だけど、「別離」に負けず劣らず冷静に描き、「おとなのけんか」みたいな要素もある。

 

 この監督に万年映画青年が惚れ込むのも当然で、「サイドウェイ」に出たかったんだって(パンフレットのインタビューは笑えます、ぜひご一読を)。監督に応えようとジョージ・クルーニーはホントに繊細な演技を見せた。突撃隊長被り物ヒーローも演じた男が情けなくもごく自然なフツーの男に化けた。もちろん観ている人にとっては浮気の部分であるとか、資産売却の部分であるとか、失われる自然であるとか抱く感想は様々でしょう。人によって“思いは違って当然”の映画を、ハワイの“売れ線景色”を使わず、音楽で風通し良くして描いた監督はさすがです。超大作は大丈夫か?と感じる昨今の合衆国映画、インディ系はぜんぜん元気ですね。

 

現在(5/23/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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 共演女優になぜかモテモテのジャック・ニコルソン。「恋愛小説家」くらいまでは色男ぶりを発揮していましたけれど、定年退職した後、所在なさげな老境の男が意外に可愛らしかったりします。人々が期待するこの人の老人役は、棺おけリスト(「最高の人生の見つけ方」)ながら、フツーの人も難なく演じていてさすが。とにかくインディ系の淡々と進むテイストが良く、「サイドウェイ」に通じますが安っぽくなく、アレクサンダー・ペインが映画祭で人気なのも肯ける。娘役のホープ・デイヴィスも「ワンダーランド駅で」の時は素敵でしたが、問題のある家族に嫁ぐ寸前での平凡さもまた良い。嫁ぎ先一家の大胆なおばさん=キャシー・ベイツにあのジャック・ニコルソンが押されているところは笑えるし、一番印象に残っている。突然奥さんも亡くなって、どーしていいか分からない老境の男ながら、最後に救われる部分があるので、ぜひご覧になってご確認を。まさかこの人の映画で感動しちゃうなんて。もっともアクの強い作品しか観てこなかったせいだけど。(「ア・フュー・グッドメン」とか「バットマン」とかね)。
オススメ★★★☆☆

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