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ディクテーター 身元不明でニューヨーク

  ディクテーター 身元不明でニューヨーク  

 

 「ボラット」「ブルーノ」と確実に公開規模が縮小していきそうなのに、アダム・サンドラー(「ジャックとジル」)を差し置いて劇場でこの男を拝んでいる。下劣なフェイク・ドキュメンタリーと並行して「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」「ヒューゴの不思議な発明」などにも出演のサシャ・バロン・コーエン、日本での認知度が上がって欲しいような、欲しくないような。ただ「ボラット」を気に入った人いましたからねぇ。で、金正日の顔がデッカク映し出されて始まる独裁者のスチャラカ・コメディ、分かりづらい人も多いだろうけれど、好きな人にはたまらない作品となっておりました。

 

 アフリカ某国の独裁者は含み笑いをしながら核の平和利用を演説で訴え、せっせと核爆弾を作っている。自国のオリンピックではやりたい放題で、気に入らない人間は即座に粛清。ビン・ラディンを匿っていたりとか、TVニュースが封じている事実を笑い飛ばしている。原子力発電所と核爆弾はセットだし(押井守コミュニケーションは、要らない)、独裁者は平気で部下を殺せる(「ロード・オブ・ウォー」)。ただ残念なのがセリフで、英語を話している人だったら笑えるトコが不十分(ワシも多少は分かるけれど不十分だった)。字幕だから仕方ないんだけれど、今までだったらお笑いタレントの誰かが字幕監修して難を逃れることができた。ただ監修をお願いする人は難しいでしょうねぇ。世界事情に通じていても、笑いのセリフにするのはまた別なハードルがあるし、人種やら宗教の違いまでとなると大変です。それにしてもエディ・マーフィ(「ペントハウス」 )のセリフは字幕化がほとんど不可能に近いけれど、日本受けしたのは今となっては不思議。

 

 さて独裁者ですから権力の座は砂上の楼閣で、ナンバー2が狙っている。国連の呼びかけに嫌々応じ、行った先のニューヨークでハメられてしまう。ナンバー2に扮したベン・キングズレー「ヒューゴの不思議な発明」が素晴らしかったのに、アホなメイクで笑いをとってます。「デーヴ」の時もそうでしたけれど、嬉々としてコメディに体当たり。陰謀巡らす男は「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」でも演じましたが、変幻自在。ナンバー2の計略でヒゲを剃られて威厳もどこかにいっちゃった独裁者は、街に放り出されてしまう。ヒゲを剃るのがジョン・C・ライリー(「おとなのけんか」)で、もう一人のチラリ出演がエドワード・ノートン「ウソから始まる恋と仕事の成功術」も出番はホントにチラッとだけど、「ボーン・レガシー」が控えている演技派はものすごく情けない役。

 

 高級ホテルから放り出された独裁者は、「ボラット」でコケにしたポリティカリィ・コレクトネスそのものの自然な美人に助けられて、アホなことを繰り返しながら(9.11までネタにしてしまうとは)、仕立て上げられた影武者が国連で演説するのを止めることができるのか?独裁を守りぬくことができるのか?ぜひご覧になってご確認を。観賞前はタイトルが示す通り、あの傑作「チャップリンの独裁者」と、ニューヨークへ行くわけですからエディ・マーフィの「星の王子ニューヨークへ行く」の合体技だと予想していたらその通りだった。もっとも世を忍ぶ王子様と独裁者とではエラク違いますけれど。

 

 チャップリンの傑作はラストに独裁者のソックリさんが感動的な演説をして、涙が止まらないんですけれど、本作は本人が民主主義について語る。村上龍氏の「愛と幻想のファシズム 」で主人公鈴原トウジは“民主主義は疲労困憊している”と漏らす。真に受けて信じる人の心と、ツールとして利用する人(エライ人)の格差は賃金と似たような感じで広がる一方(「ケビン・コスナー チョイス!」 )。さすがに年だから信じるというより、“みんなで決めたことは背負うしかない”ってのが民主主義に対する認識。この題材を「ボラット」「ブルーノ」みたいなフェイク・ドキュメンタリーにしなかったのはよく分かる(俯瞰の映像はなかなかで、見応えアリ)。ニュースはもちろんドキュメンタリーだって語れないことをスチャラカ・コメディがやってしまうとは。もちろんものすごく好意的な視点に立って見てみるとです。×××の快感を覚えるところで「フォレスト・ガンプ 一期一会」の映像使うなんて冒涜だ。なお「エージェント・ゾーハン」のアダム・サンドラーも意外に端正な顔をしていますけれど、このサシャ・バロン・コーエンも結構ハンサムで背が高い。このままアホなコメディで貫くのか?英国出身だから「ザ・ガード 西武の相棒」みたいなのも面白いかも?

 

現在(9/10/2012)公開中 
オススメ★★★☆☆ 

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関連作

 星の王子ニューヨークへ行く

 

 つくづく水戸黄門の国の人間だなぁと痛感のエディ・マーフィー主演“お忍び”映画。アフリカ某国の王子様が嫁さん探してニューヨークにやって来る。スタジアムで正体がバレて、「あっあなた様は!」のところが大好きで、それは「英国王のスピーチ」とご同様。ハンバーガー屋の娘に一目惚れして真の愛を獲得しようとするプリンス。なぜかサミュエル・L・ジャクソンが強盗役で出てきて、王子様にやっつけられる。でもこのシーンは今(2012年)となってはかなり豪華。王子の指南役(武術)がアンセニオ・ホールで、彼の知名度がまるでないから「パッセンジャー57」でウェズリー・スナイプスが間違えられて迷惑顔のギャグが通じなかったんだよな。エディお得意の下ネタも王侯貴族だけに控えめで、下町の床屋に集った面々をエディが演じ分けているくらいでちょうど良い。監督がジョン・ランディスだけにミュージカル仕立ても込みで「大逆転」の二人もチラリ出演。「ビバリーヒルズ・コップ」を抜いて、傑作じゃなくとも何度も見ることのできる、日本におけるエディ・マーフィの代表作かも。
オススメ★★★☆☆

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  チョイス!

 

 疲労困憊している民主主義を現実的に描き、笑って感動する作品。今の時期(9/10/2012)にご覧になるには最適かもしれません。残念なのがタイトルで、検索機を使ってもなかなか商品に辿り着けない可能性がある。原題は“SWING VOTE(浮動票)”だし、「チョイス!」で良さそうだけど、主演のケヴィン・コスナーが先頭にくる。合衆国の政治ネタ映画は“THE IDEA OF MARCH”が「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」だったり、“WAG THE DOG”が「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」だったり。政治用語は外国人にサッパリ分からないのは“永田町”、“霞ヶ関”と同じ。でも本心を言えば、ジジイどもが使っている用語は、ガキどもが使っている“ビミョー”と似たようなもの。

 

 さて身につまされる主人公をケヴィン・コスナーが演じているんですけれど生々しい。あの「アンタッチャブル」とか「ロビン・フッド」とか演じてきたのに、「パーフェクト ワールド」より情けない、現実にいそうな最下層の男。賃金は低くても後がないから必死に働くメキシコ人(「ファースト・フード・ネーション」)に仕事を奪われる。ま、あの仕事ぶりでは無理もない。ダメ親父の娘はよく出来ていて(「アイ・アム・サム」「SOMEWHERE」)、将来の夢が獣医か連邦準備制度理事会の議長を目指す、賢い女の子がクラスメートに発表する演説は傾聴に値します。翻って「レスラー」ミッキー・ロークに負けずとも劣らないバカ親父は政治に興味はないし、娘との約束(投票)なんて呑んで忘れてしまう。ただ娘がオヤジの代わりにやったことが、全米を巻き込む大騒動に発展、果たしてどうなるか・・・はぜひご覧になってご確認を。ケヴィン・コスナーが討論会で語る部分に涙が止まらない、「フィールド・オブ・ドリームス」以来ですかねぇ彼の映画で泣かされたのは。

 

 たった一人の票を獲得するため、大統領候補2人が繰り広げる狂態は笑えるけれど、現実に起こっていること。ご機嫌伺いに熱心なため、宗旨替えするなんて当たり前。民主党も共和党も理念なんかどこ吹く風で、当選するためなりふり構わず。他人事だから笑っていられるけれど、悲しいのは我が国で、スタイルは極めてよく似ているけれど、宗旨がない・・・。「スーパーチューズデー」をもっと茶化したものなれど、実態に即している。失業問題、移民政策、環境保護、コロコロ失業者の戯言に左右されるマスコミと両選挙陣営。ただ一番身近な雇用の部分を主人公が語りだすと、TVニュースがあっさり切り上げる。我々が最も気になる部分はテレビ映りが悪い(「マイレージ、マイライフ」「カンパニー・メン」)。大人はみんな揃って自分のことしか考えていないから、子供のことなんて放ったらかし(「それでも生きる子供たちへ」)。

 

 主演の親娘も抜群なれど、テレビ局の顔となるポーラ・パットン(「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」)はやはり映画の華。「マチェーテ」でもロバート・デ・ニーロが嬉々として腐れ議員演じていたけれど、デニス・ホッパーもやる気満々で、“俺は一体何をやってるんだ?”という連続落選候補を真摯に演じている。反対陣営の選挙ブレーンに扮したスタンリー・トゥッチもレパートリィの一部(「メイド・イン・マンハッタン」)。賢い娘に“信念も何もない”などと突っ込まれて、気まずい空気が流れるところは楽しい。チラリ出演でも彼の作品は当たり確率が高い。
オススメ★★★★☆

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