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英雄の証明

 英雄の証明

       

 かなり前からケネス・ブラナーはシェイクスピアの映画化をやってきた(「から騒ぎ」「ハムレット」)。ま、英会話教室が一杯あるからなのか、演劇好きの人が多いからなのか、シェイクスピア映画は公開されます。「マージン・コール」みたいなアカデミー賞ノミネート作はスルーされちゃうんだけど・・・。劇場には40年くらい前に演劇青年だった男性客をけっこう見かけたりして。物好きにも「テンペスト」を観たのは、監督がジュリー・テイモアだったからで、本作は主演と監督をレイフ・ファインズが兼ねるというところに注目。学生時代は嫌々だった劇作家の映画を、ボチボチ観に行くようになったのはケネス・ブラナーのおかげ。で、悪逆ナチ男(「シンドラーのリスト」)からシャイな青年(「オスカーとルシンダ」)、不気味な神様(「タイタンの戦い」)まで演じてしまう英国演技派が監督した本作はどうかというと、現代にシェイクスピアを再生させることに成功。

 

 超大作「ハムレット」 も大胆に舞台を改変したし、「タイタス」も現代人が入り込めるような背景を用意して目を楽しませてくれた。ただまさかシェイクスピア劇でコンバット・シューティングを展開するとは思いもよらず、伝統ある英国演技派はかなり挑戦的だなぁと感心。それもただ戦闘シーン入れたからすごいでしょ?という程度に止まらず、「5デイズ」とか「トゥモロー・ワールド」に負けない市街戦が展開。「ハート・ロッカー」に出ているのは伊達じゃない。敵対するオーフィディアスに扮したジェラルド・バトラーも先月観たばかりの「マシンガン・プリーチャー」で機関銃撃ちまくっていましたけれど、ハマッています。ただ髭面でワイルドだから、ずっとオーストラリア出身かと思っていたらこの人も英国出身。コリオレイナスVSオーフィディアスが展開する場面が「アワーミュージック」とか「ウェルカム・トゥ・サラエボ」 を思わせる場所で、21世紀の戦闘シーンに説得力がある。もはや大軍を率いてのドンパチではなく、小隊単位の戦闘こそが本物。

 

 無責任な大衆に毒舌を吐く英雄は戦闘に勝利して凱旋、周囲の期待に応えるべく政治家に転身しようとする。この部分も現代に置き換えて展開しても、ちっとも違和感を覚えないどころかTVニュースを見ているみたい。更に口が災いして追放されるところなどは、今の日本の状況そのものです。元々戦場では向かうところ敵なしだけど、非戦闘地域ではその能力は通用しない。平和な場では扇動者の方が、実績を積んだ者より強力。人々をだまくらかす護民官に扮したジェームズ・ネズビット、「レクイエム」以来見ていないけれどTVに出てきて「〜するべきだ」とおしゃべりしている連中の1人に化けた。

 

 新人監督レイフ・ファインズは“セリフさえ残せばシェイクスピアになる”のではなく、ごく単純に背景を移し変えただけで、21世紀の映画として通用することを証明。ま、劇作家で彼以上の知名度がある人はいませんし、本作はその才能を再確認させられた。でも現代に通じるシェイクスピアが凄いのか?17世紀から一向にやってることが変わらない人間に進歩がないのか?監督の目論見というか戦略は正しい。シェイクスピアの紹介なら「リチャードを探して」があるし、そのセリフを堪能するなら「ハムレット」などが向いている。今回“ザ・シェイクスピア”を体現していたのは大女優ヴァネッサ・レッドグレーヴで、2人の主演もやる気満々だった。ただ「ツリー・オブ・ライフ」 →本作→「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」 と確実にステップ・アップしていくはずのジェシカ・チャスティにとってはキャリアの彩り。

 

 “時を越えて人々を魅了し続ける劇作家の偉大さを知る”というと大げさだけど、とんでもない人だったんだなぁと改めて感心。確か授業で聞いた話だと舞台の袖で書いてたっていうし、「恋に落ちたシェイクスピア」を観ても用意周到に何世紀も通じる作品を書き上げたいという志があったわけでもない。だいたい編纂されなければ、どっかいっちゃてたかもしれないんだから。ただ舞台を21世紀に移し変えて、映画にしたいと思わせるんだからファンが絶えることがない。監督のレイフ・ファインズ ももちろんその1人で、あと2、3本この手口で映画化してもらえないものかと思ったりして。

 

現在(2/28/2012)公開中
オススメ★★★☆☆
(でも公開期間はやたら短いです、ご注意を)

 

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 ハムレット

 

 DVDでも前後編になってしまう超大作。休憩が入る映画はこれを入れて3本くらいしか観ていないけれど、劇場の女子トイレが小さくて後半の上映が少し遅れたのを良く覚えている。ま、それだけ世の女性が詰めかけていたのだ。たぶん目玉のスターもいなかったはずだから、皆さんシェイクスピアにご熱心だったのか。ここに出てくるケイト・ウィンスレットはオフィーリアだけに責め苛まれている。今(2012年)見ると幼いけれど、難役に挑戦で女優根性あり。

 

 もちろんもっと入魂はデンマーク王子に扮したケネス・ブラナー。スチャラカインディ系「世にも憂鬱なハムレット」とは真逆のマジ演出。もともとデンマーク王子は少年なのだそうで、いたいけな雰囲気まで出そうとしている。メル・ギブソン版を先に観て、ずいぶんとネチネチした話だなぁと思っていたけれど、本作の朗々と口にされるセリフがそれを払拭。絢爛豪華なオープニングから4時間退屈しないで観ることができたのは、セリフを活かし目を楽しませてくれた監督の技。
オススメ★★★☆☆ 

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