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声をかくす人

  声をかくす人

 

 映画青年ぶり発揮のベン・アフレック監督作「アルゴ」の後は、元祖万年映画青年ロバート・レッドフォード待望の1本。なんでそうなのかと言うと、題材もキャストも一級品なんだけど、相変わらず公開されるかどうかが心配だったゆえ。最初の報に接したのが去年の始めだし、「善き人」みたいになってしまうのか?賞にノミネートされないと苦戦するけれど、洋画は入らないのかなぁ(レンタル屋ストレート近似値作品が増えている)。

 

 おまけに映画好きとして厳しい現実を突きつけられて、ショック。切符売り場に行ったら「閉館なんですよ」と言われて“銀座テアトルシネマさよならカウントダウン5”などというチラシを渡されたりして。4月に観た「ルート・アイリッシュ」の時もそうだけど、ここの作品選択のセンスはキチンとしているし、ちゃんとお客さん入っているのに・・・。トシだから愚痴っぽくなるけれど、映画館に通っていれば当たっちゃうものなのか(シネセゾン渋谷)。

 

 劇場も厳しく、公開も遅れて(カナダ公開が2010年で合衆国が2011年)、「アメイジング・グレイス」みたいにズレたかと思いきや、昨今はリンカーン大統領がモテモテらしくて、「リンカーン/秘密の書」が公開されているし、スピルバーグもとなるとタイミングとしては悪くないかも。2008年の「大いなる陰謀」は多角的な視点をもって合衆国の現状を描いた傑作だったし、ロバート・レッドフォードの若々しい感性は健在。

 

 賞とは無縁ながら、クリント・イーストウッドのような済まし顔(「J・エドガー」 )とは違った、ストレートな真剣勝負で臨む歴史の1ページ。ジジイの監督だけに持ってくる題材は“合衆国で最初に死刑にされた女性メアリー・サラット”。AV女優のプロフィールまで事細かに綴られているウィキペディア(日本版)でもまだ載っていない(11/9/2012現在)。同盟国(親分)の歴史を知る目的ではなく、もっと普遍的なテーマが本作にはある。

 

 ハッキリ言って国家と“世間様の風潮とか流れ”に殺された女性。人々の支持を集めた偉大な大統領エイブラハム・リンカーン、暗殺の実行犯を処刑するのはごもっともながら、出入りしていた下宿屋の女主人まで殺っちまうのはやり過ぎ。観ていて良かれと思って実行しているのに、140年経ってワルとされる面々はお気の毒様。ケヴィン・クライン(「抱きたいカンケイ」)が実にわかりやすい悪役=陸軍長官で、国のために殺すと宣言しているようなもの。

 

 ご丁寧に主人公がそもそも弁護する気もない人物フレデリック・エイキン。北軍大尉として南北戦争で戦って、南部の人間は大嫌いだし、出来レースの裁判だと理解している。ところが演じるジェームズ・マカヴォイの見せ場で、いやいや押し付けられたにもかかわらず、被告に接し、裁判を通じて結果的に正義に目覚めてしまう。「ア・フュー・グッドメン」の時のトム・クルーズみたいに観客は彼にシンクロしていく。

 

 裁判の過程は詳細に描かれているがゆえに、どれだけデタラメだったかが浮き彫りになる(「ジャック・サマースビー」と似たりよったり)。裁判国家=合衆国だけに、見ているアメリカ人には幼稚であからさまな茶番劇に映ったか?は今ひとつ判然としませんが、弁護士の奮闘は伝わってくる。

 

 “動の弁護士”に対して“静の被告人=無実の人”がロビン・ライト「プリンセス・ブライド・ストーリー」から年月を経て、チラリ出演の「ドラゴン・タトゥーの女」「マネーボール」も美人に映っていたけれど、化けております、やつれた母親になりきっている。また娘役のエヴァン・レイチェルウッドも“美人の遺伝子を受け継いでいる”と言わんばかりの美貌が堪能できてよかった(「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」では無理だからね)。

 

 史劇的コスプレながら、効果的なCGも交えつつ、小ぢんまりしているのにみみっちくない。「Virginia ヴァージニア」のコッポラともども年期の違いを見せつけています。裁判では正義を追求することができず、ジャーナリズムにその歩を進めたジョン・グリシャム(「評決のとき」)のように、主人公フレデリックもワシントン・ポスト紙に身を移す。21世紀では生贄を血祭りに上げていくマスコミなれど、まだ信じられたのだ。映画の作り方は知っているけれど、“済ました顔”で批判するのとも違うロバート・レッドフォードは若々しい感性の個性的な監督さん。

 

 そしてひょっとすると若手が出るとその後調子を崩す、“被り物ジンクス”をジェームズ・マカヴォイ(「ウォンテッド」)は破ってしまうかもしれない。演技派に劣らずの芝居を披露し、映画を背負った。後で「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」を見たんだけど、マイケル・ファスベンダーともども悪くなかったんだよね。“頭に血が上ると見境ない”のは人のこと言えた義理ではないので、ひたすら“流れ”に警戒する昨今。合衆国の愛国者=ロバート・レッドフォードが憂いているのはもちろん斜陽の超大国ながら、“似たような病”は我が国にも蔓延している。もっともワシにとっては、こういう作品を上映する映画館がなくなる方が深刻。

 

現在(11/7/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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プリンセス・ブライド・ストーリー 

 

 データベースを漁るとロビン・ライトのデビュー作なのだそうな。今(2012年)も美しい彼女だけれど(「ドラゴン・タトゥーの女」)、この当時には当然のように可憐さがある。「スノーホワイト」クリステン・スチュワートとどちらでしょうかねぇ(想像するだけで楽しい)。モロに史劇的コスプレ・ファンタジーかと思いきや、形式は一捻りしてある。寝込んでいる孫にじいさんが本を読んで聞かせてあげるスタイル。またじいさんがなんとピーター・フォーク(チラリ出演なんだけど渋い)。「ネバーエンディング・ストーリー」と「エバー・アフター」を思わせる楽しい味つけ。

 

 最初は敵で後で味方になる間抜けな2人組みが楽しくて、白馬の騎士が実に非活劇的にあのアンドレ・ザ・ジャイアントをチョーク・スリーパーでやっつけたりする。やっつけるケイリー・エルウィズがまた美貌の青年で、物凄く分かりやすい。もっともこの後メル・ブルックスの「ロビン・フッド/キング・オブ・タイツ」で“白馬の王子”を逆手に取った。監督のロブ・ライナーは「恋人たちの予感」がベストながら、この手の軽めの作品が上手い。
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