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いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜

いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜  いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜

 

 「ビューティフル・アイランズ〜気候変動沈む島の記憶」に唸らされて、“気になる監督”に登録の海南友子。劇場で彼女の作品に触れられるのは楽しみだった。ま、「大丈夫であるように-Cocco 終わらない旅-」と同じで、監督の名前でこの作品を観に行く人は少ないでしょうけれど、劇場はけっこう大人で占められていた。いやいや、40代のワシより若い人を見かけなかった。「だれもがクジラを愛してる。」「リンカーン弁護士」と同じ公開日(7/14)なのにもかかわらず、衰え見せないこの盛況ぶりは劇場の立地(銀座)だけでは説明できない。やはり描かれている画家、いわさきちひろへの不変的とも言える人気の成せる業。

 

 恥ずかしながら絵画に関しての感受性はゼロに等しい。絵画に興味がないから、画家が主人公の映画なんて「宮廷画家ゴヤは見た」とか「バスキア」くらいしか見たことがない。でも投資対象として絵を金庫にしまったりするのは、アホだとも思っているし(「プロヴァンスの贈りもの」)、20世紀の始めはイカす芸術家でモテモテだった(「モダーンズ」)みたい。しかしそんな分からんチンでも、いわさきちひろという人物を知らなくても、彼女の絵を見れば「ああ、あれか」となってしまう。その絵がどのように出来上がっていったかを垣間見る素晴らしいドキュメンタリー

 

 画家いわさきちひろの生涯を知ることで、彼女の絵に対する理解は深まり、同時に生き抜いた時代も浮き彫りになる(「ミラル」「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」)。大恐慌を前にした輝けるパリ(「ミッドナイト・イン・パリ」)ではなく、第二次世界大戦後の東京で“筆一本”で生きていこうという決意は尋常じゃない。身内の年寄りの誰に聞いても「戦争はしちゃいかん」、「とにかく食べるものがなかった」と耳にタコができるくらい、延々と言われてきた信じられない時代。自らの内には地獄を抱え、食べることもままならない世の中で、自らの絵を作り上げていった画家。あの絵からは想像もできない壮絶な人生です、ぜひご覧になってご確認を。さらに彼女の功績はそれだけではなく、作者の権利を守り通す(使われた絵が返却されないと言うのには驚かされた)。時折差し挟まれる彼女の絵はどれも素晴らしく、映像もさすが「ビューティフルアイランズ」 の監督だけに絶品で、そこんところは映画好きとして楽しんだ。最期に画家いわさきちひろはベトナム戦争に遭遇してしまうわけですけれど、戦争体験がある人だけに、使命感に突き動かされた仕事(戦火のなかの子どもたち  )が命を縮めてしまったんでしょうか?

 

 実に贅沢な時間を過ごすことができるドキュメンタリーにして偉人伝。技量だけではダメだ、選ぶ題材も必要だ、そして魂が込められていなければ。3拍子揃った素晴らしい1本。なぜ今いわさきちひろなのか?この題材を映画監督海南友子が選んだのかは、傑出した画家への想いだけではないでしょう。前作はプロデューサーが是枝裕和だったわけですけれど、本作は山田洋次。「京都太秦物語」の監督もやはり失われてはいけないものを残すのが、映画の役割だと切実に感じているのでは。「ちいさな哲学者たち」「未来の食卓」とは違ったアプローチで、大人たちに“子供たちのこと”を訴えるメッセージにもなっている。今年の日本映画はホントに充実していて、硬軟どちらも秀作が続々出てきて、唸らされてしまう。もっともたまたま遭遇したに過ぎないかもしれないけれど。

 

 なお自慢になりますが、出演者の一人、黒柳徹子さんには会ったことがあります。店のお客さんだったので2度ほど来店。“「アマデウス」のF・マーリー・エイブラハムは面白い人よ”と教えてもらいましたが、ふと「世の中には悲惨なことがいっぱいあって・・・」と漏らした時の表情は本作と重なる。もちろん監督の才能に惚れただけでなく、いわさきちひろが描いた絵を見るためにも美術館に行くことになりそう。最近江古田に行く野暮用が増えたから、ちょっと足を伸ばしてね。

 

現在(8/10/2012)公開中 
オススメ★★★★☆   

 

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関連作

 京都太秦物語

 

 「珈琲時光」への関西からの回答がこれだ、日本映画だって負けていない。列車の描写がやはり絶品で、「奇跡」「僕達急行 A列車で行こう」と見比べるのも一興です。「珈琲時光」の時は“外国人に素晴らしい日本映画を撮られた”などと書いているけれど、さすがは「隠し剣 鬼の爪」の山田洋次監督、後進の育成も含めて、素晴らしい下町人情劇。「いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜」のエグゼクティブ・プロデューサーだし、ドキュメントタッチを組み込んでいる。ドキュメントの部分で語られるのは大映京都太秦撮影所に関してで、映画好きとしては興味津々。

 

 またドラマ・パートの恋模様が「ダンス・レボリューション」みたいに可愛らしくも泣けてくる。お笑い芸人を目指す豆腐屋のせがれがEXILEのUSAで、踊ると一発でスーパー・スターに変身ながらイメージのみでその輝きを封じ、さえない男に化ける。警備員のアルバイト先になんと田中泯(「外事警察」「ナイト・トーキョー・デイ」)がいて笑ってしまった。ありがちな三角関係“頭でっかちな研究者と幼馴染に揺れるまじめな乙女!”だけど、街に焦点が当てられている場合この描き方は実にピッタリくる。幼馴染と恋仲で、人情残る下町の店を継ぐって、サラリーマンの方々は案外憧れかも。見ていて“継げる店があるって幸せだぜ”と思った人は確実にいるハズ。

 

 毛嫌いしているわけではないけれど、関西の街並みが描かれたものは「ココニイルコト」「幻の光」くらいしか見たことない。でも都会出身者だけに、心の中にある原風景のような錯覚があって、しみじみします。そういや修学旅行とは別に京都に行った時、すき焼き食べる時にビックらこいた。塩をスコップで目いっぱい入れるから“正気か?”と思ったら砂糖で、結構いけるんだよな。下町人情は何もテレビ局が近くにいっぱいある東京にだけ存在するわけではありません、素晴らしいです。ぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★★☆ 

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