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おとなのけんか

 おとなのけんか

        

 「ゴースト・ライター」で映画の作り方を見せつけたロマン・ポランスキー。描く対象に余計な遠慮をしないのは、クリント・イーストウッド同様にさすがな人です。年期の入った余裕とはまさにこのことで、前作を見たお客さんと一緒に「余裕だよね」というところで、うなずき合ってしまう。ところが本作は一転してエラク軽めで、予算が低めの作品に挑戦。間違いなく晩年だし、“円熟期の1本”とか“集大成的作品”を撮っても良いはずなのに、ジャッキーさんの××××に指突っ込む役(「ラッシュアワー3」)で出てくる巨匠は、予想をスカす茶目っ気もある。新人監督だと荻上直子とかイザベル・コイシェ(「ナイト・トーキョー・デイ」)がやってくれるのは微笑ましいんだけど、すごいです。

 

 出演者はたった四人、ジョディ・フォスターにジョン・C・ライリーにクリストフ・ヴァルツにケイト・ウィンスレット。ところがワシにとっては常軌を逸して豪華、名前だけで“客寄せ効果”は絶大です。史劇的コスブレも、サスペンスも、従軍看護の文芸ドラマも可能な4人なのに、情けない親のバカらしさを熱演。「幸せの1ページ」以来のジョディ、ここんとこよく見ていたジョン・C・ライリー(「僕の大切な人と、そのクソガキ」「俺たちステップブラザース 義兄弟」)、「コンテイジョン」の凛々しさに参ってしまったケイト、そしてあの「イングロリアス・バスターズ」 の悪逆ナチ男=クリストフ・ヴァルツがすっとぼけた顔でコメディに出る。

 

 原作は戯曲だそうで、芝居見ないから良いか悪いかは分かりませんけれど、骨格はちゃんとしているのがよく分かる。子供同士が喧嘩して、一方に怪我を負わせる。親同士が会って話するというだけで、笑える箇所は全編に散りばめられる。舞台を尊重したのでしょう、本当だったら画面に映らない工夫も出来るんだけど、ほとんどのシーンを4人は同じ部屋で演じる。最初はスローなスタートだから、展開にイライラするんだけど、徐々にヒート・アップしてくると、スクリーンに向かって“ないない”って突っ込んでいる。

 

 4人が4人ともに火が点くところがあるし、地味に見えたジョン・C・ライリーが一杯呑むと、奥さんのジョディに本音むき出しで不満を漏らす。ポリティカリィ・コレクトネスっぽい彼女に「スーダンに安っぽい同情するな」とか。ケイト・ウィンスレットなんかゲロ吐いちゃうし、見ていてトイレ行けよって突っ込みたくなる。「コンテイジョン」も良いけれど、「愛を読むひと」なんかでも女優としてステップ・アップしている彼女はコメディで見たことないけれど、やってます、笑いとってます。ホントだったら年齢的に離れている実力者に混じってやる気満々。ジョディ・フォスター「マーヴェリック」の頃はキュートさで笑いをとり、「幸せの1ページ」では作家の奇癖で笑わせてくれたけど、青筋立てて凄いよね。

 

 ヒート・アップしていく面々の中で“我関せず、心ここにあらず”のすっとぼけ顔を維持しているクリストフ・ヴァルツ。ワシの目玉はなんと言っても彼で、「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」もやりたそうだったけど、悪の張本人だから抑えていた。「グリーン・ホーネット」もどことなくコメディっぽいのやりたい、という気配がチラリ見えた。今回は炸裂ですよ、顔は悪役経験者だけに端正なんだけど、ずーっと周囲の迷惑なんかお構いなしに電話かけまくって、妻が詰め寄れば知らぬ存ぜぬ顔。

 

 この4人で困難に立ち向かう学校とか病院の映画なんか作ったらとも思うけれど、笑いがもっとも難しいのでしょう。監督にお任せされたであろう4人は素晴らしかった。映像テクニックとかをまるで感じさせない巨匠なんだけど、シンプルな作りだからこそ才能が見えてくるわけで、安上がりゆえに実力を見せつけているとも言えます。済ました顔でかなり深刻かつ笑える題材クリント・イーストウッドは撮りましたが、過酷な人生を生き抜いてきた巨匠は、少人数で軽めのコメディを涼しい顔で撮ってしまう。後はウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」だなぁ。

 

現在(2/20/2012)公開中
オススメ★★★★☆

 

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関連作

 愛を読むひと

 

 哀しくも切ない物語です。こういった主人公を演じさせたらレイフ・ファインズはしっくりくる、「オスカーとルシンダ」の彼だからして。彼のファンもこの作品がお気に入りで、感動したとのこと。「ヒトラー最期の12日間」「バーダーマインホフ理想の果てに」などに出てくるので、ドイツを代表する名優ブルーノ・ガンツはかの国の十字架を背負っているよう。少年と大人の女の関係は、官能的な雰囲気を醸し出すにはうってつけだが、後々明らかになっていく事実の凄さを倍化させる。少年と関係を持つ大人の女には元ナチだった、という隠さなければならない過去があり、戦後は糾弾されることになる。

 

 もっとも加害者側であるにもかかわらず、彼女も犠牲者だと観客に訴える作品であるから、「めぐりあう時間たち」の監督のスティーヴン・ダルドリーも丁寧に追っていく。ケイト・ウィンスレットは影を背負った年上の女を演じきって、いつの間にか大人になっていた(アカデミー賞獲得)。「4分間のピアニスト」などを観てもナチは実に広範囲に渡って暗い影を落とす。やけにキレイな画だなぁと思っていたら、なんとワシのお気に入り撮影監督ロジャー・ディーキンス(「ノーカントリー」)とクリス・メンゲス(「スタンド・アップ」)がクレジットされていた。タイトルがなぜ“読むひと”なのかはぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★★☆ 

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