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ボーン・レガシー

  ボーン・レガシー

 

  前三部作は文句なしに面白かったジェイソン・ボーンのシリーズ。本作公開に合わせて鬼のように123も順調に貸し出されております(ありがたい)。今回は主演をもうトントン拍子に出世(「ハート・ロッカー」「アベンジャーズ」)しているジェレミー・レナーを抜擢。ただ主演交代でお色直しかと思いきや、続編でもスピン・オフでもない形式を試している。シリーズは付き合ってもスピン・オフはことごとくパスしている人間だけに一安心。数字見ている人たちだって間抜けではないから、スピン・オフはどうもいかんなと思ったのかもしれない。レンタル屋の棚は正直で、気の毒なくらいピタッと止まっちゃってる(タイトルは内緒)。

 

 で、どんなことを試しているかというと、「ボーン・アルティメイタム」の後半部分を併走させてスタートさせている。だから前日譚でもないし、スピン・オフっぽいけれど後々合流も可能な構造を持っている。「プロメテウス」に感じたのもこの下心で、たぶん現場は「シリーズなんか止めて、もっと新しいことしろよ」と詰め寄るけれど、安定した売上が最優先、甘いこと言ってられません。たださ、ジジイの監督たちなら新しい映画を生み出せるけれど、観客が映画通ばっかりじゃないし、新しい映画を見せて当たるか?というと不安要素でいっぱいだよ。そんなことみんなの生活がかかっているんだから・・・の間に落ち着いたかは判然としませんが、みんなの要求をすり合わせるとこの結論に達したかもしれない。実に民主主義的帰結。

 

 でも中身は前シリーズを脚本で支えてきたトニー・ギルロイ(「フィクサー」)だから文句なしです。スタイルは既に確定していますから、それを踏襲するのは当然。格闘シーンもカーチェイスもジェイソン・ボーン・シリーズの持ち味。当たり前ですけれど役者はボクサーでもプロレスラーでもありませんから、映像テクニックを駆使して、すごい場面を展開してお客さんに手に汗を握ってもらう。ゆえにソダーバーグ「エージェント・マロリー」を撮ったと言えるかもしれない。でも監督の持ち味は薬物に関するところで、前作はあまり強調されませんでしたけれど、これは野心的。「ディプリシティ」は×××薬の特許に関してのスパイ合戦で笑えましたけれど、本作は完全無欠の兵士にするための改造。合衆国ではクスリを題材にした作品は「バイオハザードX」などを筆頭にけっこう作られている(「リミットレス」「デイブレイカー」)。

 

 ただ“薬物投与によって改造された元スパイが悪の組織の魔の手を逃れて・・・”あれ?どっかで聞いたことあるお話だなと思ったら「仮面ライダー」にソックリ。それも美男俳優が出世のステップにしている今のではなく、〜仮面ライダー本郷猛は改造人間である、悪の秘密結社ショッカーと戦う〜の初代。後半炸裂するバイク・アクションはキタッて感じでした。ただ「ナイト&デイ」でもやっちゃって、なかなか新味を出すのがホント難しい。前シリーズとの違いを出すため、今回は地球の反対側で展開。欧州を巡るのではなくアメリカ大陸縦断した後フィリピンへ脱出。冒頭はアラスカで、つい最近寝ている間に飛行機から放り出されて、狼と死闘を繰り広げる「THE GREY 凍える太陽」がありましたが、装備万端だと互角に渡り合える。国だか秘密結社だかの都合で作戦中止になり(「フェア・ゲーム」そのもの)、突然追われる身になった主人公=アーロンは自分を改造した博士を頼りに本国へ。頼りにされる博士がレイチェル・ワイズで、相変わらず美しい。ただ役割は「アレクサンドリア」のように勇ましい方面ではなく、「コンスタンティン」のライン。「レスラー」 の監督ダーレン・アロノフスキーの奥さんかと思いきや、なんと現007 =ダニエル・クレイグの妻とは!(顔つき変わってました)

 

 で、2人を“沖縄の次に米軍基地が想定されている”フィリピン(内田樹氏に毒されまくっている)まで、しつこく追跡する得体の知れない組織を仕切っているのがエドワード・ノートン。ただ素朴な疑問なんですけれど、たった2人をとっ捕まえるために、やたらと人も金もかかっている様は限りなく無駄ではないか?部屋の中に20人は確実に詰め込んでいて、どこの空港に現れたとか、ここを通ったとか最新テクノロジーをフルに活用して経費の無駄使い以外の何ものでもない。この辺が監督の見せ所でしょう、前シリーズではあんまり気にならなかった。ただリーダーにして悪役のエドワード・ノートンは「ミニミニ大作戦」とご同様で、どうもこの手の役にハマらない。追われる役の「インクレディブル・ハルク」の方がとも思いますが、やはり被り物ジンクスでしょうか、被らず出演したジェレミー(「アベンジャーズ」)は涼しい顔でステップ・アップしている。

 

 外勤と内勤に信頼があれば、うまくいくスパイ活動ですけれど(「スパイ・ゲーム」)、改造して手に負えなくなると消しにかかる。スパイ映画が量産されているのでなかなか新味を出すのが難しい。ただ監督はほとんどフォーマットが決まっている売れなければならないシリーズに、果敢に挑戦していたように見えます。アクション、物語で前シリーズを超えるのではなく、継承することには成功。さらにサウジアラビア(「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」)でも中国(「ミッション:インポッシブル3」)でもなく、韓国であるとかフィリピンであるとか、ニュースにされないけれど実は某国の秘密結社が着々と“悪の根を張り巡らそうとしている”国にスポットを当てたのかもしれない。失敗を隠蔽するのに国費を使っている様を、まざまざと見せつけるのは真骨頂。「プロメテウス」ほどヤバくはありませんが、どう転ぶかまだ分からないパターンも試した。プッツリ終わらせたのもコレだけ売れて、期待されているシリーズだけに無理もない。

 

現在(10/4/2012)公開中
オススメ★★★★☆

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 スパイ・ゲーム

 

 「マイノリティ・リポート」と似たようなものだけど、本作も“見ていたのに、その魅力を見逃していた1本”。30代になっても映画を見ていなかった自分に恥じ入るばかりです。さて今(2012)となっては若きブラッド・ピットと枯れてなおダンディなロバート・レッドフォード共演のスパイ映画。後の「ボーン・アイデンティティー」「ソルト」に影響を及ぼしたのは再見するとよく分かる。ただジェイソン・ボーンのシリーズとは違って、現場と後方支援双方に師弟関係が成立しているのがミソ。

 

 2人の仲はベトナム戦争にまでさかのぼり、ドイツであるとかベイルートであるとか全世界を股にかけて任務を遂行してきた。新旧美男対決と宣伝されていいて、まんまとそこしか見ていなかったけれど「ザ・シューター 極大射程」の要素まで入っている。また「ウェルカム・トゥ・サラエボ」のスティーヴン・デイレーンなどが嫌味なエリート然としていたり、つい最近見た「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」とか「プロメテウス」でも印象深いベネディクト・ウォンなども出ていてお得です。更に亡くなってしまったトニー・スコットがスピーディな場面展開の監督というイメージが災いして実は世界の現実をキチンと作品に盛り込んでいた人だということがコレを見て再確認させられました。ぜひ特典映像をご覧頂きたいんですけれど、ベイルートに関してトニー・スコットはまともな見識を語っている。
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