関連テーマ

 

 

 

 

サイドボックス

ここにテキスト


出し

もうひとりのシェイクスピア

   もうひとりのシェイクスピア

 

 2012年の今年、前作の予言は幸運にも当たらなかったローランド・エメリッヒ監督の新作。サイボーグ対決とか太古の歴史とかパニック超大作を撮ってきたこの人が、まさか史劇的コスプレに挑戦とは。もっとも“ホントかよ、大丈夫かよ”という好奇心に突き動かされて劇場に足を運ぶハメに。でも歴史劇としてちゃんとしていました。

 

 学生時代聞いた話ですと、ウィリアム・シェイクスピアが歴史的傑作を書いたかどうかについては諸説があり、“ひょっとするとベン・ジョンソンではないか”というのもあるのだそう。冒頭いきなりそのベンがとっ捕まったので驚いた。ワシの学生時代はベン・ジョンソンと言えばドーピングで世界最速記録を剥奪された選手なんだけど、若い人には無理か・・・。それにしても現代都市の俯瞰映像から始まったので、劇場間違えたのかと思っちゃった。もちろんすぐにデレク・ジャコビ(「ハムレット」)が出てきて、我々を16世紀に導く。

 

 ウィキペディアを参照しても良いし、既に「恋に落ちたシェイクスピア」がありますから、当時の感じはだいたい掴める。俳優は全員男性で、セリフが肝心で、大衆から支配階級に至るまで娯楽といえばお芝居くらいしかなかった16世紀。本作の焦点は“歴史的傑作のオリジナルが存在しない”ところに当てられている。しかしそれもダシで、宮廷劇を絡めているところに真骨頂がある。タイトルが作品テーマそのもののanonymous=匿名で、コチラを使った方がカッコ良いとも思えるけれど、それじゃあお客さん来ないもんね。座付きの俳優兼作家が、どうして何世紀も継承される作品を書くことができたのか?タイムマシンがない以上確認できない隙を突き、シェイクスピアの履歴がところどころ消えていることも利用して、やりたい放題の余地がある。

 

 ローランド・エメリッヒ監督のイメージは“スケールをでかく、派手に”だったけれど、そのまま突き進んでも際限がないし、いつかは飽きられてしまう。そこで詳細が不明な歴史上最も有名な劇作家と宮廷劇の合体技で勝負。監督の持ち味はなんといっても大ボラ吹きなんだから、SF超大作じゃなくたって、構わないのだ。で、宮廷劇で引っ張り出されてきたのがヴァージン・クィーンのエリザベス1世で、ケイト・ブランシェットも演じていて知名度は高い。そこにリス・エヴァンス扮するオックスフォード伯との関係が・・・。ぜひご覧になってご確認を。

 

 「英雄の証明」にも不可欠でしたが、エリザベス1世はヴァネッサ・レッドグレイヴでピタリとはまる。つい最近「憧れのウェディング・ベル」でおっさん化しましたけれど、「アメイジング・スパイダーマン」のトカゲ男よりリス・エヴァンスにはコチラの方がしっくりくる。また彼の若き日を演じるのは女性必見のジェイミー・キャンベル・バウアーで、「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーンPart2」の吸血鬼役だから美貌はお墨付き。キャストも抜かりがなく、大胆な大ボラですけれど伝えたいことはシェイクスピアの書いた戯曲と、その時代への賛歌だと思う。確かに大胆すぎるけれど、シェイクスピアを教えている先生なら、笑って生徒に勧めるかもしれない。だって史実と違うところが教材になるもんね。

 

 「ヴェニスの商人」にしても21世紀に通用してしまう内容で、唸ってしまいますけれど、カテゴライズは後の人たちの解釈。ごく単純に観客を沸かせるために必死で書いたものが、時に悲劇と判別されたり喜劇だったり。結果的に500年も愛され続けていた劇作家はまだまだモテモテ。でもご本人が現代に現れたらなんと仰るやら。21世紀まで通用している様を見て「あんたたち全然変わってないね」などと言われるかも。ま、ローランド・エメリッヒは路線変更がうまくいったから、次はどんな手口で来るのかが今から楽しみ。

 

現在(12/26/2012)公開中
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

前のページ  次のページ

 

top

 

関連作

 ヴェニスの商人 

 

 レイフ・ファインズはコンバット・シューティングを展開して、21世紀にシェイクスピア劇を再現しましたが(「英雄の証明」)、コチラはオーソドックスに映ります。もっとも冒頭に仕掛けがあるようで、16世紀でもユダヤ人は迫害されている様子が刻まれる。見ているこっちは“なんだ差別は昔からで、何もナチだけではないのか”という印象を持つ。このバイアスによって、喜劇と称されている歴史的傑作が悲劇に感じる。監督も意図しているのか、莫大な遺産を相続した娘が、花婿選びする部分が息抜きに見える。“肉1ポンド”は20世紀末には実行する連続殺人犯がでてきますが(「セブン」)、裁判のシーンで実に効果的に使われる伏線。

 

 アル・パチーノ が劇作家の代名詞=シェイクスピアに並々ならぬ思い入れがあるのは知っていましたけれど、「恋に落ちたシェイクスピア」で本人に扮したジョセフ・ファインズや、善人の方が確実に合っているジェレミー・アイアンズまでキャストは豪華。でもリン・コリンズがもうたまらない、遡って見ている(「ジョン・カーター」「ハーフ・デイズ」)この人の魅力が全開。ま、彼女が演じるのは誰で、どこで目が釘付けになるかに触れると台無しになってしまいますので、ぜひご覧になってご確認を。男装の麗人には弱くて、シェイクスピアってやるねと感心。言葉に物語を乗せ、生きた時代を刻むことができる作家はやはり天才なんでしょう。時代に則した描き方をされれば、継承されて不滅。もっとも金への執着とか差別などなくなるくらい人類が進化すれば別だけど。
オススメ ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system