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 「ロスト・イン・トランスレーション」以来ご無沙汰だったソフィア・コッポラ。俳優としてはなんと言っても超大作「ゴッドファーザー」「ゴッドファーザーpart3」に出演しているキャリアの持ち主ながら、監督としては軽めで小ぢんまりしている(ま、「ロスト・イン・トランスレーション」しか観ていないんだけど・・・)。女性監督ならではの視点(といって差し支えないのかな)を持った作品は興味深くて、女に対してけっこう容赦がない一方で、男に向ける視線は冷静で暖かい場合が多い。イザベル・コイシェ(「エレジー」)、ニキ・カーロ(「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」 )、とかね。男性監督の場合、“女性観”がモロに出てしまい可愛らしいんですけれど。

 

 監督から見た父“=フランシス・フォード・コッポラ”ではなく、特殊な生活環境(いわゆるVIP?セレブリティ?)の“父と娘の絆”が本作のテーマ。しかし登場人物の“生活の場”はあくまで背景であって、物語は普遍性を併せ持っている。もっとも実際にその中で生きてきた監督の経験はけっこう生々しくて、目を楽しませてくれます。ワケの分からないパーティとかケータリングの×××など。高級ホテルの日常なんて、泊まり慣れてなくちゃ描けません。でもソフィア・コッポラはやり過ぎないんだよなぁ、風通しの良い描き方は彼女ならでは。お嬢様育ちながら浮かれっぱなしではなく、呑まれることなく客観的な視線を持っていたってところでしょうか。

 

 さて世間一般では“ダメ親父”とされる俳優に扮したスティーヴン・ドーフはさすが。「バック・ビート」だけでなく「パワー・オブ・ワン」などを観ても、もっと引っ張りだこになっていそうなのにもったいない。「ブレイド」の悪役が一番メジャーどころでしょうか、「ウィズアウト・ユー」が大好きなので、自然な感じが出ているこの役はいいですね。その彼は“旬の売れっ子たち”と一緒に映っていてもスターに見える。チラリ出演のミシェル・モナハン(「デュー・デート出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断」)と一緒のトコとか、無造作にベニチオ・デル・トロとの2ショットとか。また特殊メイクのところは意味不明なくらい長回しで笑えます。

 

 で、肝心の娘役が「この娘に近づく虫は許さん!」と周囲を殺意の目で見てしまうことになるエル・ファニング。いったいどこに出ていたのかはサッパリ分からないけれど、「デジャヴ」「バベル」「ベンジャミン・バトン数奇な人生」に出演済みなのだそうで、お姉さんがダコタ・ファニング。お姉さんはシッカリ娘が似合いますが(「I am Sam アイ・アム・サム」)、彼女にはどこか不安定な雰囲気が漂っていて、父のもどかしさを倍化させている。「一緒にいなくてごめんな・・・」のところでは胸が詰まった。フィギア・スケートを“習い事”にしているあたりはいかにも上流の感じが出ていて、上手すぎず、下手過ぎない。お姉さんともども“子役は大成しない”ジンクスを打ち破るのか。しかしこの作品の彼女はまさにキー・パーソンで、朝食を作っているところは良かった。

 

 映画業界ネタ「トラブル・イン・ハリウッド」が大通りの典型だとすると、ミニシアター系らしさ(好きな人の心に響く)が出ていて素晴らしい。大作がやらなくちゃなんない修羅場を可能なかぎり排して、映画界のデタラメさを背景に風通し良く、もどかしい“父と娘の絆”を描いた秀作です。でもさ、カチカチのお父さんなんかより、カッコ良いダメ親父の方が案外“女の子の理想”では?コレを観ていると、なんとなくそんな気がしてきます。正直プール・サイドのデッキチアで日向ぼっこしている二人のショットで終わったらとも思うんだけど、どうだろう。

現在(4/15/2011)公開中
オススメ★★★★☆

 

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  パワー・オブ・ワン

 

 南アフリカが舞台の映画は決まってアパルトヘイト(人種隔離政策)が絡んできます。古くは「遠い夜明け」「ワールドアパート」で、最近(21世紀)では「マンデラの名もなき看守」「インビクタス負けざるものたち」。ただ「ブラッド・ダイヤモンド」などを観ると、南アフリカ出身の白人もいるわけで、彼らに焦点が当てられている作品は珍しい。もともと大英帝国の支配から逃れて、オランダ人とドイツ人がかの地に住みついたという史実は、欠けている部分を補うにふさわしい。また第二次世界大戦が背景にあるから、当然総統を支持するドイツ人は悪役なんだけど、英国人の主人公を痛めつける。

 

 この辺の演出は「ベストキッド」の監督ジョン・G・アヴィルドセンだけにけっこうハード。もちろん持ち味はイジメだけでなく、「ロッキー」の監督だけにボクシングのシーンでも生かされていて、スティーヴン・ドーフは初々しくも勇ましい。彼のトレーナーが後にマンデラ大統領も演じるモーガン・フリーマン「ワイルド・チェンジ」でも彼を“怒れる校長”として起用したアヴィルドセン監督は、単純なスポ根を想定していなかっのでしょう、作品に厚みが増している。

 

 更に「シャイン」とか「ナイト・オン・ザ・プラネット」のアーミン・ミュラー=スタールに驚いていたら、悪逆非道な男としてダニエル・クレイグが出ていたりして。コレは彼の映画デビュー作なんだそうです(今のボンド役とはずいぶんと違う)。単純にスポ根だけでなく、背景の政治状況も踏まえて人々を熱く描く、21世紀の今となっては豪華共演の1本。音楽担当「パイレーツ・オブ・カリビアン」ハンス・ジマーというオマケつき。どうして埋もれちゃってたんでしょう。 
オススメ★★★☆☆

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