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リアル・スティール

  リアル・スティール

 

 今年はてっきり「わたしを離さないで」を超える作品はないものと思い込んでいたら、年の瀬にやられてしまいました。そういえば2009年も「扉をたたく人」がナンバー・ワンだと思っていたのに「アバター」には適わなかった。小品、ミニシアター系は好きなのに、結局“通”にはなれない“映画好き”ってところでしょうか。

 

 さて「親子の絆のベタな映画でしょ?」という方に、ぜひともオススメしたいスポ根感動作。ベースはもちろん“ろくでなしのオヤジ”と“母を失ったばかりの子供”が親子の絆を作っていく物語です。そんなの変えようがありません、無理です。でも背景の時代記号はむしろ大人にこそ説得力がある。2020年ですから近未来、ところが「ブレードランナー」以来のお約束“近未来は現代のスクラップ”をあまり視覚的に見せつけていない。ハッキリ言ってロボット以外は全て現代と寸分変わらず、日常的な合衆国そのもの。ところがココが肝心で、時代記号をセリフにサラッと込めている。「人々が刺激を求めるあまり、ボクシングは廃れ、死んでもいいロボット格闘技が大流行」なんて。“時代が悪いんじゃなくて、人々の心がすさんでいるのだ”が判るのは大人だけで十分。動物園まで賭けのロボ試合会場になっているんだから、「ピンクパンサー」とか「デート&ナイト」の監督とは思えないショーン・レヴィ。

 

 もちろん子供達に時代背景なんて分かるわけはないし、彼らには“ロボット格闘技”で熱くなってもらわにゃ。これがまた良く出来ていて、日本人は涙モノ。日本産ロボット・マンガへのオマージュそのものではありませんか。最初に出てくるハイ・スペックのヤツなんか鉄人28号だし、主役がアトム。ゴミ捨て場での遭遇シーンなんかたまりません。ま、オマージュだけでなく、実際に我が国はロボット技術が異常発達しているんだから当然といえば当然。また最初のロボに命令するのが日本語で、「トイレット」でもアニメを流しながら、プラモデル作っている主人公は「いくぞ」などと言ってるけれど、海を渡る日本語はアニメ、ゲームを介している。それにしてもロボットと景色の融合は見事で、「ハンコック」以来VFXの自由度が増して、自然光の中にあっても風景に溶け込んでいる。もっとも全部がCGではないらしい(詳細はパンフレットをぜひどうぞ)。

 

 恐らくその辺の“さじ加減”に寄与しているのはプロデューサーのスティーヴン・スピルバーグやロバート・ゼメキスでしょう。「ジュラシック・パーク」だってCGだけでは成立しないし、「フォレスト・ガンプ/一期一会」の監督まで参加しているんですから。どの場面でどう技術を使えば“うそ臭さ”が消せるかを彼らは熟知している。もっとも監督にしても「ナイトミュージアム」撮ってるんだから、あくまで脇役の特撮を観客に意識させない手腕は申し分なし。「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」は活劇を盛り立てるために、そして本作はまず間違いなく2020年に説得力を持たせるための映像技術。観ていてホンダのロボット技術なら、今でも出来そうじゃんと納得です。

 

 しかし映像テクニックはあくまでも物語に従属するもの。本作のテーマはやはり人の心が荒もうが、なくしてはならない“家族の絆”。そこに“スポ根モノ”の血を入れた感動作の王道。全て感動を倍化させる絶妙の配置。父親役のヒュー・ジャックマンはもう良心の欠片もないくらいで、ロボ格闘技にのめりこんでいる“人間のクズ”そのもの。あの「ニューヨークの恋人」では白馬に乗った王子だった男も、ただの父親役では満足しないんでしょう、気合入りまくり。ま、彼がトレーラーで移動するもんだから「オーバー・ザ・トップ」を思い出したけれど、田舎でロード・ムービーだけに「センチメンタル・アドベンチャー」も近いかも。でもやはり基本中の基本は「チャンプ」か。肝心の子役ダコタ・ゴヨも上手いよなぁ、既に「マイティ・ソー」に出ているのだそうな(どこたろう?)。

 

 父と息子の間の話は恥ずかしくも、もどかしく、断絶したままだったら一生後悔がつきまとう(「フィールド・オブ・ドリームス」)。そこを男同士なら分かる“格闘技要素”でまとめちゃう。「親父立ち上がれ!」の子役のセリフでドバドバ涙が出てきた。ラストバトルは「ロッキー3」の時みたいに頭に血が上って、胸にジーンときた。分かりやすい感動作にはめっぽう弱い、ワシのハートを鷲づかみにしてくれた文句なしの2011年ナンバー・ワン。

 

現在(12/9/2011)公開中
オススメ★★★★★

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 オーバー・ザ・トップ

 

 「ロッキー3」以来良く観た典型的な80年代のスタローン映画(最後に彼が勝ってスッキリ)。とにかく観に行った時は“親子の絆”なんて部分には見向きもしなくて、ただアーム・レスリングだけを追っていた。当時のスタローン・ファンも似たり寄ったりだから、ドラマ性を持った作品に彼がシフトし切れなかった原因かも?プロレス・ファンだったからテりー・ファンクが出ているだけで良かった(スタローンに突き飛ばされちゃうけれど)。“ドラマに厚みがない”と評される原因の1つが「トップガン」よりも多く響くサントラに提供された曲の数々。冒頭の“in this coutry”などはテレビでもよく使われた。ヴァン・ヘイレン加入前のサミー・ヘイガーがタイトル曲を歌ったり、お約束のようにケニー・ロギンスが歌ったり。レコードを持っていて良く聴いたものだ。

 

 ただ今(2011年)見ると気がつくのは、映画が“親子の絆” を描くのに驚くほど多くの要素を入れないと、説得力を持たなくなったということ。こう言っちゃあなんだけど、無意味なシーンも多々あるが、少なくともアーム・レスリングをしているトラック運転手は、子供のことを想っていてまとも。「リアル・スティール」 と比べて、時代がいかに荒んだかがうかがえる。この種の楽天的な作品でも80年代は通用したのだ。それにしても腕相撲の大会出場者の中に「オレには54の必殺技がある」と言っていたが、いったいどんな風なのだろう?今に至るまで謎のまま。
オススメ★★★☆☆

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