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マネーボール

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 一国開催なのに決勝戦を“ワールド・シリーズ”と言い切ってしまう野球の国=合衆国。アメリカン・フットボールやバスケットボールに数では押されていますけれど、野球映画も連綿と作られ続けている。もっとも野球部出身ではないし、サッカー少年だったので観るときは“スポ根ドラマ の一種”として映る。「さよならゲーム」も「ナチュラル」も好きだけれど、ワシにとってはドラマを盛り上げるためのスポーツ。

 

 さて球団オーナーが自分のためにチームを売り飛ばそうとする「メジャー・リーグ」とは違って、ブラッド・ピット扮するオークランド・アスレチックスのGM=ビリー・ビーンは“勝たなきゃ、なんにもならない”を骨身に染みている選手上がりの男。金に物を言わせるニューヨーク・ヤンキースに、なんとか知恵で挑んでいかなければならない。しかしこの部分で「ヤバい経済学」を経ているだけにビビーンときて、監督が2006年の「カポーティ」以来のベネット・ミラーだし、もちろんフィリップ・シーモア・ホフマンも出ているのだから期待は高い。案の定新しい“物差し”で、金だけが頼りの野球界に風穴を開けた男の、サクセス・ストーリー近似値作品になっていて大満足。実話ですから、完全サクセス・ストーリーにはなっていません、ぜひご覧になってご確認を。

 

 映画好きとして収穫だったのは、ブラッド・ピットでもフィリップ・シーモア・ホフマンでもなくてGMのブレーンに扮したジョナ・ヒル。数日前に「僕の大切な人と、そのクソガキ」でオッサンからは未知の生き物に見える無表情な“おっきな1人息子”を、確かな芝居でモノにしていた。予告編からはブラッドとフィリップの掛け合いが見られるかとも思ったけれど、ジョナ・ヒルの魅力をブラッド・ピットが引き出しているように見える部分が素晴らしい。亡くなってしまったクリス・ペン(「ショート・カッツ」)に似ている感じで、今後が楽しみな人。映画はたいていガリガリの人が中心だけど、それじゃあ成立しないどころか余りにうそ臭くなる。クィーン・ラティファ(「恋のスラムダンク」)もジョン・キャンディ(「クール・ランニング」)もジョン・グッドマン(「バートン・フィンク」)も彼らは大切な映画の彩り。そういえばジョン・グッドマンはベーブ・ルースをやったんだっけ(「夢を生きた男/ザ・ベーブ」)。

 

 もちろんだんだんロバート・レッドフォードに似てくるブラッド・ピット前作に続いて父親役が板についてきた。でも合衆国じゃあ“家族が離ればなれ”というのは常態化しているみたい。奥さんはとっとと再婚して、亭主の方は仕事に没入する(「サンキュー・スモーキング」)。「SOMEWHERE」みたいに、父と娘のもどかしい関係はなかなかに良かったけれど、ハッピーなわけではなくて現実的。製作もかねて、映画を引っ張っているブラッド・ピット、初期は相方を欲しがるスターでしたが(「セブン」とか「ファイトクラブ」とか)、「イングロリアス・バスターズ」辺りから変わってきました。トム・クルーズと同様に(「ザ・エージェント」)、若手に華を持たせている。もともとインディアンズにいた男=ピーター・ブラントを“どうもコイツは切れ者だ”とみるや引っこ抜いて、データ分析させ、果てはチームのマネージメントまでさせちゃうGMなんてね。

 

 といった感じで大リーグのことを全く知らない人間でも、十分楽しめるように仕上げた監督はさすが。でも出てくる人は全員実名だし、2001年からお話は始まるからファンはもっと楽しめたはず。裏方の映画に終始するかと思いきや、きちんとベースボールを描いていて、やはりグランドに足を踏み入れられる特権は活かされている。テレビと同じような視線はちっともありがたくない。選手が立っている場所でホームランの放物線を追えるのは映画の特権。「ミスター・ルーキー」のクライマックスとよく似たシーンは、やはりこの作品がベース・ボール映画であることを刻んでいる。おまけに「ザ・タウン」にも出てきたレッドソックスの球場も見られる。

 

 野球はもともと“頭でっかち”なスポーツだと思う。以前「馬鹿には務まらないよね」と横浜高校野球部出身の子に聞いたら、力強くうなずいていた。伝統があるから、いろんな理論がある。テレビ番組“FOOT×BRAIN”(現在唯一見ている番組)で、統計学を野球やサッカーに応用していたけれど、“新しい物差し”であることは間違いない。固定した思考形態から脱し、他の方法を試すのは健全。それどころか劇中レッドソックスのオーナーが語っているように、恐竜のように滅びてしまうかもしれないのは、何もベースボールに限ったことではない。もちろん新たな理論も同じことを繰り返していれば硬直し、死に至る。草野進氏編集による「プロ野球批評宣言」などによると、プロ野球は“極道”で“見世物”なのだそうな。少なくともスポーツ新聞とは真逆の“一次情報”に触れると、見方はがぜん変わってくる。アカデミー賞が射程に収められている優れた一本でした。

 

現在(11/11/2011)公開中
オススメ★★★★☆

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   メジャーリーグ

 

 いつまで経っても優勝してくれない、地元クリーブランド・インディアンズに喝を入れるべく製作されたベースボールコメディ。パート2からは石橋貴明が登場するけれど、パート1の目玉はなんと言ってもウェズリー・スナイプス。「ニュージャック・シティ」「パッセンジャー57」に出る前だけに、コメディ演技全開で、韋駄天ウィリー・メイズヘイズは彼ならでは。これと同じ主旨で作られたのが「ミスター・ルーキー」で、展開はまぁだいたい同じ。オーナーが自分のために球団をマイアミに移そうなんて、「エニィ・ギブン・サンデー」と似たようなもんだけど、“心無い者こそ勝者”が資本主義の鉄則だけにうなずける。

 

 ただこの時期はまだシャレの範囲内であった証拠に、美人オーナー=マーガレット・ホイットンはコケにされる役を嬉々として演じているのが良く分かる。「祖チン」ってセリフは今じゃ無理なのかな?「摩天楼はバラ色に」も中々素敵だったのです。物語がスポ根一直線じゃまずいので、恋愛模様を絡ませる部分にトム・べレンジャーとレネ・ルッソを配している。意外にトム・べレンジャーが情けなくも可愛らしい下り坂の選手役で、「さよならゲーム」のケヴィン・コスナーといい勝負。それにしてもこの時期のレネ・ルッソは男優達をノック・アウトしまくりだったなぁ(「アウトブレイク」「ザ・シークレット・サービス」)。剛速球投手リッキー・ボーン登場で盛り上がるラストの“wild thing”はもちろん熱くなる、スポ根もので奇をてらっても仕方がない、乗せられる通りにイッちゃえばよいのです。
オススメ★★★☆☆

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