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アジョシ

 アジョシ

 

 この作品はまず題材に引きつけられた。最近では「とある魔術の禁書目録U」のアクセラレータ&ラストオーダー、「恋のゆくえ ファビュラスベイカーボーイズ」でもチラリと出てくる、上の階の女の子と独りもんピアニストのささやかな絆、笑えるけれどグッとくる「ブラインド・フューリー」、少女の懇願に死者の世界から蘇る「ペイルライダー」「ルパン三世 カリオストロの城」のようにぜひ美少女に“おじさま”と呼ばれて頼りにされるコトをしてみたいものだ、という願望がある中年真っ只中だけに、“世捨て人でも少女のために命を賭ける”テーマは魅力的(劇場では中年男性けっこう見かけました)。

 

 ま、それにはおじさんの側が異常者に見えないのが重要で、もったいないくらいの色男。チェ・ミンシク(「春が来れば」)とかチェ・ミンス(「ソウル」)ではなく、「ブラザー・フッド」以来のウォン・ビンだけど、“おじさん”はちょっとかわいそうでしょう。実際過去のシーンでは可愛い顔が健在だった。ところが髪型が似ていて、走るシーンがけっこうあったので松田優作の代表作“遊戯シリーズ”、それも最もシリアスな「処刑遊戯」を思い出した。なんで「処刑遊戯」かといえば、展開される暴力描写がまさにあのシリーズが得意としていた凄まじいシーンの連続、女性はご注意ください。北野武の作品はサドンデス的に挿入される描写ですが、この作品は徹底的。

 

 加えて「闇の子供たち」が扱った、臓器売買を生業にしているやくざが登場、実態に即している。人類は既にその領域に踏み込んでいて(「わたしを離さないで」)、儲かる商売にすらなっている。マンガ喫茶も犯罪組織の温床になっていて、もっとも見たくない光景が焼きつけられる。悪党の商売は臓器売買だけでなく、麻薬の密造もその1つ。「ニュージャック・シティ」より悪質で、製造から販売までを子供たちを使ってやっている。コレはホントに生々しいけれど、説得力があります。

 

 麻薬中毒患者、この国では“何でもごまかしてワケが分からなくする”テクニックだけは向上しているので、“ドラッグ”などと言っていますが、中毒者はしょせんシャブ中。主人公の少女ソミの母親もこの典型で、目を背けたくなる。なんにもしてくれない母親に、放ったらかしにされた少女がより所とするのが隣の質屋=テシク。もちろん影(明かせない過去)を背負っているのがありありとわかる質屋は、悲しげというよりむしろ不気味。美男ですけれど目が死んでる、この芝居はさすがでチェ・ミンスみたいに声も太く渋い。シャブ中の母親は考えなしだから、質屋に迫ったりする節操ナシで、組織のブツに手を出す。これが命取りで娘ともども悲惨なことになっていく。そして一度少女の××に応えられなかった質屋は、持てる力を全て使って救おうとする。ぜひご覧になってご確認ください。

 

 ウォン・ビンのアクションは神がかり的に早く、「キス・オブ・ザ・ドラゴン」ジェット・リーでさえアクションにコミカルな味付けがあったのに、微塵も笑える部分がなく残酷なまでにストイック。「ハンテッド」でも出てきましたが、特殊部隊の人間は刃物で敵をめった刺しにし、絶命するまで徹底的にやる。見ていてぞっとするシーンですけれど、相手にとって不足ナシ。

 

 悪役の人たちはもう本当に鬼畜そのもので、顔かたちは普通にも見えるだけに生々しい。警察などはむしろ蚊帳の外で、インターネットで質屋の過去を洗うところは「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」みたいにごく日常的な手口。過去はもちろん情報機関“国家情報院”、「7級公務員」「義兄弟 SECRET REUNION」 にも出てきますが、暗殺部隊となると微笑ましい部分なんかない。

 

 ただインターネットが普及し、携帯電話を日常的に使用、臓器売買が儲かる商売になっている現代でありながら、懐かしさを醸し出す街角の風景が素晴らしかった。汚いゴミ溜みたいだけど、資本主義の産み出す夢の中で生きている亡霊ではなく、生の人間が生きる世界(「BIUTFUL ビューティフル」)、駄菓子屋のじいさんも味つけとして申し分ない。アレがなかったら感動作としては成立しなかった。

 

 「おじさんも私が恥ずかしかったの?」は本当に胸に突き刺さるセリフで、この作品が訴えたかったことが凝縮されているような気がします。大人がもうどうすることも出来ない歯がゆさを「SOMEWHERE」「奇跡」も描きましたが、切なくなったなぁ。ハッピーエンドか?そうでないのか?も観ている人それぞれにする、韓国映画の潔さも文句なしの傑作でした。

 

現在(9/20/2011)公開中
オススメ★★★★★

 

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関連作

 春が来れば

 

 「シュリ」での壮絶さが忘れられず、おっかない映画(「オールド・ボーイ」)に出たり、コワモテの印象が強いチェ・ミンシクが、夢をあきらめ切れない中年に扮する可愛い1本。悪役できる人はやはりオールマイティで、好かれる人を滲ませながら体現できる。トランペット奏者として開花しないし、お母さんに頭が上がらないオッサンだけど、つかず離れずの恋人も友達も彼のことが心配。

 

 ダメ中年でも“芸は身を助ける”わけで、炭鉱町の中学校で音楽を教える仕事を得る。先生が本業ではないものの、生徒たちに教えるうちに深入り。もともと善人だけに、人助けに夜のアルバイトをするところは微笑ましい。「ミュージック・オブ・ハート」や「スウィングガールズ」ほどではないものの、音楽映画にして中年が希望を見出せる1本。韓国映画らしく、炭鉱での演奏シーンは感動的ながらアッサリで素晴らしい。また炭鉱町の景色が絶品で、美麗すぎない“なつかしの風景”は魅力の1つ。タイトル通り桜が咲く頃に、情けない中年にはどういうことが待っているかはぜひご覧になってご確認を。
オススメ★★★★☆

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