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キラー・インサイド・ミー

キラー・インサイド・ミー   キラー・インサイド・ミー

 

 「ウェルカム・トゥ・サラエボ」以来、マイケル・ウインターボトムの作品は幾つか観てきた。彼が紛争地域を描いたものは、TVのニュースより確実に貴重な情報源で、「実際はこうなのだ」という部分を知る手掛かりでした。「マイティ・ハート/愛と絆」しかり、「グアンタナモ、僕達が見た真実」しかり。でもその路線を外すと「ひかりのまち」は大好きだけど、ちょっと好みとは違っていた。当たり前だけど、彼お得意のドキュメント・タッチで恋愛映画を撮るわけにはいかないですからね。

 

 さて予告編ですと「スタンリー・キューブリック、スティーブン・キングがべた褒めの犯罪小説の映画化!」となっており、観賞前は半信半疑というか、「大丈夫かねぇ、マクロスもう1回観た方がいいかも(もう3回め)」などと思っていたけれど、なかなかの出来栄えでした。冒頭でコーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」とか「ファーゴ」を思い出したんですけれど、ごく平凡な合衆国の田舎風景。でも1950年代だからかなり気合の入った描写で、ちゃんと当時の車を揃えている。主人公はカウボーイ・ハット被っている善良な保安官助手。たいていの映画ですと助手役ってホントに脇なんですけれど、この作品はソコがまさに肝心。

 

 扮するのがケイシー・アフレックで、「ゴーン・ベイビー・ゴーン」にしろこの役にしろ、なんかしっくり来ないというか、顔と声のバランスがピッタリしないというか、ある意味独特です。たぶんその辺が監督の起用理由なのかも。平凡で善良な彼が、いつの間にか狡猾なサイコ・キラーに変貌していくんですけれど、その辺はご覧になってご確認を。定番の演出をなるだけ使わないで、ごく日常的に狂気が進行、更に自らは全てをコントロールしていると勘違いしている“自分のことを頭が良いと感じているアホ”の視点は新鮮。冒頭の平和で気楽な描写も一役買っている。ただ、もしスタンリー・キューブリックが映画にしていたら?コーエン兄弟がどーして手を着けなかったんだろう?という内容です。

 

 2人の被害者になる女優さん、ジェシカ・アルバ、ケイト・ハドソンは本当の意味での体当たり演技。「マチェーテ」でもキュートな魅力だったけど、ジェシカは根性入ってました。なにせ犯人は刃物やら銃を使わないですからねぇ、臆病者ですからビビリました。銃殺、刺殺ではなくて×殺って北野武作品じゃあるまいし、凄かった。ケイト・ハドソンも「NINE」「あの頃ペニー・レインと」は遠い昔だなぁ、などと思ったけれど既に大人の女優です。どこかに生活感があって、ダイアン・レインみたいな、いかにも合衆国のおっかさんが後々似合ってきそう。

 

 英国人マイケル・ウインターボトムは合衆国の傑作犯罪小説を、可能な限り誠実に再現しようと試みているみたい。自動車にしてもクラッシック・カーがよくもまあアレだけ集まるものだと感心。デパートとか飛行機とか緻密な感じがします。「チェンジリング」クリント・イーストウッドは気楽な感じがするんだけど・・・。“外国の原作なんだから忠実に描かなければ失礼にあたる”かのような誠実な義務感が垣間見えます(「世界最速のインディアン」もそんな感じだった)。同じ原作を合衆国の監督が描いたら、たぶんこうはならないはず。ショーン・ペンの「インディアン・ランナー」とかベン・アフレック「ザ・タウン」には“地の人間”ならではのテイストがあって、どこか野暮ったい印象がある。コーエン兄弟はどちらかというと欧州寄りの臭いがして、映画祭に引っ張りだこなのでは?と勝手に思っている。

 

 ドキュメント・タッチを得意としてきた監督の技を活かし、傑作犯罪小説に挑んだなかなかの1本。これ見よがしの演出がなく、けっこうビビリます。ドラマ主体のマイケル・ウィンターボトム作品では一番かなぁ。最後に「ロストハイウェイ」以来ご無沙汰のビル・プルマンが出てきたのは嬉しかった。

 

現在(4/28/2011)公開中 
オススメ★★★★☆

 

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  ひかりのまち

 

 都会のまばゆい光を粒子の粗いフィルムで捉えたマイケル・ウィンターボトムの秀作。独特の喧騒と孤独、あの空しさこそ都会在住者が味わう感覚。マイケル・ナイマンの曲に合わせて描ききっている。紛争地域を描いた彼の作品は「ウェルカム・トゥ・サラエボ」以来、信頼できるニュース・ソースでもあり、たいてい観ているけれど、そのラインを外れた作品でなかなかコレを超えるものにはお目にかからなかった。もっとも「キラー・インサイド・ミー」が超えたかと思ってけれど、もう一度見直してみたら、やはり良いのだ。それは公開当時には気がつかなかった部分が、年を取ってみると見えてくることにもよります。

 

 公開当初は未だ30歳そこそこですから、「ノッティングヒルの恋人」で美人の印象が強かった、主演のジーナ・マッキーとか「キスト」のモリー・パーカーに目がいってしまいがちだったけれど、キチンと都会における“家族の絆”を描くことを忘れていないことに気がつく。ラストは涙してしまう。この時期のミニシアター系は充実していてけっこう観に行ったものです。邦題は“ひかりのまち”で妥当ですけれど、原題の“wonderland”は「ワンダーランド駅で」“next stop ,wonderland”に似ているからさけたのかな?今となっては知る由もありませんが。あとマイケル・ウィンターボトム作品にもう1本、「ウィズアウト・ユー」に原題が被っちゃって、別の邦題がついたものがありますけれど、DVDになっていないんだよな。「クリスマス・ストーリー」 はパリでしたけれど、ロンドンを観光地としてではなく、生活の場として描いたものとしてもオススメ。
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