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一命

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 世界でも類を見ない行為=切腹。コレだけは紛れもなく日本を表していて、「ラストサムライ」にもあるし、「将軍」でも出てくる。「人斬り」などは三島由紀夫が劇中で、忘れられない割腹をしていてその記憶は鮮明。「戦場のメリー・クリスマス」で「昨夜切腹した」と字幕にあるセリフは英語で“HARAKIRI last night”と言っていた。この作品の海外向けタイトルもそのものズバリ“HARA-KIRI: Death of a Samurai”。

 

 この題材に三池崇史が挑むのは当然の流れかもしれない。リメイクは最近の合衆国が盛んに取り入れていて(「モールス」「スリーデイズ」も)、一長一短はあるけれど、“本当の意味”で新しい物語=脚本がないのなら、観客の興味を映画そのものへ導く上でも重要な仕事になる。もちろんこの作品の後に「切腹」は見たくなったし、売り場を見たらちゃんと貸し出されていた。海外に持って行っても笑われることなく、“日本人であることを忘れつつある人々”に訴えることも出来る作品を撮る。こんな芸当が出来るのは恐らく彼をおいて他にはいない。

 

 とにかく何でもかんでも出来そうな人で「ヤッターマン」にしろ「ゼブラーマン12」にしろキチンと仕上げる力量を持っている三池崇史。ホントに飛び飛びでしか見ていないけれど、「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」も劇場で観ても面白かった豪華な1本だった(だってクェンティン・タランティーノが出てるんだぜ)。ご本人は楽しい人みたいで、「28 1/2 妄想の巨人」のチラリ出演は笑わせてもらいました。「十三人の刺客」は未見だけど、この作品の後だとそそられる。監督の“何でもかんでも出来そうな”実力は3Dにも対応可能で、キチンと合致した使い方をされていた。降りしきる雪、家屋の奥行き、もし刀に使ったらゲーム映画になっちゃう。もちろん号泣映画にはご法度(「トイストーリー3」)。くやし涙はじんわりくる程度で、ちゃんと心得ていらっしゃる。しかし何よりこの作品に惹かれたのは音楽担当の坂本龍一で、「シルク」は素晴らしかったからね。ま、余りに前面に出ると映画そのものを喰ってしまう。しかしほとんど静寂の中で奏でられる楽曲はどれも絶品。また音楽に負けない美術セットは“媚びてない”日本らしさで勝負している。

 

 もちろん主演の3人を見ているともっと日本映画を観たくなる。市川海老蔵という人は実は一度も映画で観たことはなかったけれど素晴らしい。眼光の鋭さと人間離れした殺陣は時代劇にはなくてはならない。この人で「椿三十郎」をリメイクしてくれたら・・・、ただ声に艶があるからアレ変えて臨んでくれれば文句なし。瑛太はテレビドラマの「アンフェア」で演じた“安藤”が印象に残っているくらいで、ずっとご無沙汰の役者さん。それにしても見事に化けた。「サマータイム・マシンブルース」の時は未だ子供だったけれど、明らかに「アンフェア」から年月が経っているのに、もっと若く幼く見える。その幼く可愛らしい侍には残酷な運命が待ち受けていて、彼の切腹シーンは見ていられないくらい凄惨で迫真の演技です。

 

 この2人のトピックはTVで延々と垂れ流されていたんだろうけれど、一つも触れないおかげで信頼のおける実力派の役者さんとして記憶し、映画を楽しめた。またヒロインがたまらなくて、満島ひかりは昨今引っ張りだこ。SPEEDの次くらいに売り出した沖縄出身グループ、フォルダー・ファイブのメンバーだった子供があっという間に成長して、日本絶滅危惧種=おしとやかで芯の通った娘を、後にも先にもこれ一回きりと言う初々しさを伴って演じている。物静かな小娘がねぇ見ていてホントに気の毒だった。あんな不衛生な家屋で暮らしていたら、そりゃあ栄養失調で、合併症を併発しちゃうよ。

 

 裏方も表方も実力を出し切り、それを監督は見事に料理して、「うん、これだ」と唸ってしまった。世界中の劇場で上映しても多くの人々に受け入れられる。“日本人の心情”だけでなく、制度が否応なく人間として最も大切な“家族の絆”を引き裂き、制度側に立っている人々はむしろ“可哀相”に見える。ラストで役所広司と竹中直人が“たたずまい”で示していると思いますけれどいかがなものでしょう?

 

 媒体の露出頻度が高いとそれだけで嫌気がさしちゃって、実写の日本映画は「奇跡」に次いでという体たらくだけど、素晴らしかった。観に行く動機は坂本龍一が音楽担当という希少性もあったけれど、「新トレマーズ」を借りたお客さんが「B級見なくちゃA級の良さが分からないからね」と言っていたからかもしれない。何にせよ食わず嫌いは大損。もちろん日本映画はB級ではなくて、合衆国の映画ばかりを観ていては、良いところも悪いところも見えてこなくなっちゃう。残酷な運命は「アジョシ」とご同様に、合衆国映画にはなかなか出せない。パチもんを避け、媒体の露出頻度の高い品を避ければまず当る。それに信頼のおける俳優さんも見つけたからね。「まほろ駅前多田便利軒」早くリリースされないかなぁ。

 

現在(10/18/2011)公開中 
オススメ★★★★☆

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  人斬り

 

 ずいぶん前にビデオで見て、それきりだから細かい所は忘れちゃったけど、印象的なシーンは幾つか鮮明に覚えている。幕末のメジャーどころ、坂本竜馬は知っていても“人斬り以蔵”こと岡田以蔵は本作ではじめて触れた。キャストがとても豪華で、主演の勝新太郎、石原裕次郎、仲代達也に加えてコント55号まで多彩。でも「座頭市」の勝新太郎と七曲署係長のイメージしか持っていなかった、石原裕次郎のみ判別可能で、仲代達也はちっとも覚えがない。そんなテレビ漬けのアホな若造でも、最も印象に残っているのは三島由紀夫。スターに混じっても堂々たる貫禄で、顔は三大スターに及ばないものの声が魅力的だった。また彼の切腹シーンが凄くて、実際に実行していたのを知っていたからビックリしましたね。是非リリースして欲しい重要な日本映画だと思う。 
オススメ★★★★☆

 

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