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ゴーストライター

 ゴーストライター

 

 「戦場のピアニスト」「オリバー・ツイスト」ときて本作までご無沙汰だったロマン・ポランスキー監督。「ラッシュアワー3」に実にアホな部分で出演もする茶目っ気のある人ながら、監督作は堂々たるものでした。元英国首相の自叙伝を執筆するゴーストライターが主人公で、現在の我々に必要な、貴重な情報すら示しているポリティカル・サスペンスの一級品。

 

 冒頭はオーソドックスなスタートながら、久しぶりに映画を観ている気分にさせてくれる。別段何も説明していないのに、意味ありげなフェリーの船着場はたまらない。物語の進行も実に余裕のある描き方で、無駄な部分が見当たらないのは映画の作り方を知ってる証拠(「スパニッシュ・プリズナー」もこんな感じだった)。たとえが間違っているかもしれないけれど、「抱きたいカンケイ」のアイヴァン・ライトマンも「ヒアアフター」クリント・イーストウッドも映画として要所要所を押さえて描く。本作の場合押さえられている要所要所にジェームズ・ベルーシとかイーライ・ウォラックが出ているわけですけれど、1シーンのみなのに実に印象深い。イーライは最近でも「ウォール・ストリート」に出ていましたが、ご無沙汰していたジェームズはぜんぜん分からなかった。老けたと言えばそれまでですけれど、出番が終わった後「あれ、誰だっけ?」と気になる。

 

 もちろんゴーストライターになる主演のユアン・マクレガーにしろ、元英国首相になった元007ピアース・ブロスナンにしろ出番は本当に適切で、映画の駒に徹している。しかし駒だといってもロマン・ポランスキー作品ですから、演じる2人とも真剣そのもの。また女優も無駄がなくシンプルで2人のみ。キム・キャットラルは年齢にふさわしい役でホッとするんだけど、首相夫人役が同じ日に観た「ハンナ」にも出ていたオリヴィア・ウィリアムズ。ジョー・ライトが描くと健康的なお母さんで、巨匠が描くと大人の女に変身。目の付け所には大きな開きがあります。もちろん2人のうちどちらかが臭わせて、どちらかが実は・・・の部分はぜひご覧になってご確認ください。

 

 サスペンスですので物語についてつべこべ書くわけにはいきませんが、やはりロマン・ポランスキーならではの作品。チャップリンともども合衆国を追放された人ですから、かの国に対して懐疑的になるのは当然で、恐怖の源泉もそこら辺りにある(「グッドナイト&グッドラック」を参考までにどうぞ)。ところがめげないど根性は凄くて「ナインスゲート」にしろ舞台は合衆国。また今回描かれている元英国首相ですけれど、トニー・ブレアとは別人。にもかかわらず、合衆国側にライス国務長官みたいなのを出すことで暗に示している(実は合衆国の傀儡で・・・)。「ブッシュ」オリヴァー・ストーンマイケル・ムーアと違って、あからさまに批判するよりこちらの方が効果的かもしれない。「ミックマック」もサルコジの写真をチラッと使ってたね。

 

 この作品が更に現代の時代記号として取り入れているのは、「クイーン」 でも描かれていますけれどマスコミに扇動された多くの人々。“気の触れた通り魔”が包丁を振り回しているような印象がある“見出し”で埋め尽くされた車吊り広告には、怪訝な印象しか受けませんが、似たようなロジックで話す人々は恐ろしい。広告主のための記事に過ぎないのに、そんなたわ言に醸成された世論が政治家を失墜どころか、抹殺するのも実に簡単な現代。単純に権力機構の恐ろしさだけを描くのではなく、扇動された人々がいかに恐ろしいかも同時に示している。年季の入った巨匠は怖いもの知らずです。若手は次の仕事が心配だから、どこかに遠慮が見え隠れするけれど、ズケズケと示している。「悪い奴ほど良く眠る」の時代でしたら権力機構=悪で済んだのに、現代はもっと巧妙に複雑に見えないところにワルがいる。

 

 「フェアウェルさらば哀しみのスパイ」でも描かれましたけれど、思わぬところに潜入しているのがスパイで、「グッドシェパード」を観れば権力機構CIAはマフィアとそんなに変わらない。上質なサスペンスにもかかわらず、暗雲が垂れ込めている現代の時代背景をキッチリ物語に組み込み、傑作に仕上がった。忘れられがちですが、ロマン・ポランスキーは2009年にスイスで拘束されて、去年釈放されてからこの作品は公開されている。合衆国にとってこの内容は世に出て欲しくないものだし、案外妨害工作の一環だったのか?波乱万丈の人生(ナチスによる虐殺を生き抜き、カルト集団に奥さんを殺され、幼女淫行の容疑で合衆国を追放)を生き抜いてきた人ですから、ちょっとやそっとでは折れないでしょう。劇場は平日の昼間にもかかわらず8割がた入っていた。バリエーションの乏しいシネコンでは当然、ではなくロマン・ポランスキーのファンばかりだったら凄い。

 

現在(8/29/2011)公開中
オススメ★★★★★ 

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  ナインスゲート

 

 ずいぶん前に観たきりで細かいところは忘れていたけれど、ゴーストライターに合わせて見てみたら、両作品は内容で近いものがある。間に「戦場のピアニスト」「オリバー・ツイスト」を挟んでいるからで、サスペンスにして監督が行くことの出来ない国=合衆国が舞台で、“文章”が物語のカギ。そしてジョニー・デップの化けっぷりは見事。10年以上前だけど、現在の彼に見える。“本の探偵”というと聞こえは良いが、蔵書を漁るブローカー。初期のレンタル屋(ビデオの時代)にもこの手の人間はけっこう近寄ってきて、雰囲気似ているんだけど、だいたい現在所在不明なんだよな。つぶれそうな店に行っては良さそうな在庫を言い値で買い付け、開店準備をしている店に売りつける。

 

 冒頭でジョニー・デップ扮するコルソがやってる詐欺まがいの手口には見覚えがある。金で動く抜け目ない男は“悪魔の書”にまつわる事件に巻き込まれていく。でっかいメガネをかけていたから分からなかったけれど、フランク・ランジェラ(「フロスト×ニクソン」)が得体の知れない依頼主として出ていた。「天使と悪魔」でも本はありがたいものながら、悪魔が絡らむ書物となると、途端にオカルト方面に物語がシフト。「とある魔術の禁書目録」ほど派手にはいきませんが、ジワジワとその正体に迫っていくと・・・の部分はご確認ください。謎の女=エマニュエル・セニエも良かったですけれど、「存在の耐えられない軽さ」のレナ・オリンは未だ色っぽかった。撮影はあのダリウス・コンジ(「セブン」 )で雰囲気プンプン。
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