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四つのいのち

四つのいのち   四つのいのち

 

 どういうわけか、似たような傾向の作品を連続して観にいく癖があるようで、ドキュメント「ヤバい経済学」のあとに新作案内を漁っていたら、この作品が目に留まった。あらかた新作観ちゃったし(「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」「アジャストメント」 も)、現在(6/3/2011)公開中でピンとくるものがなかったゆえの作品選び。ただ劇場が渋谷の外れにある“難しい名作”も上映する所だから、ちょっと気がかり。おまけにパンフレットを覗くと“アンドレイ・タルコフスキーの影響”とか書いてあるのでビビリました。映画通の方には笑われてしまうかもしれませんが、アンドレイ・タルコフスキー監督の「サクリファイズ」だけでもやばかった記憶がある。とにかく観ているとウトウトしてしまって・・・。しかし映画の教養がなかろうが、とっても面白かった。素晴らしいですよ、だって人間だけじゃなくて、ヤギと木と木炭が自然に物語をつむいでいく。意味不明のようですが、この作品をご覧になるとお分かりになります、ぜひご自身でご確認を。

 

 題材からするとドキュメントかと思いきや、ちゃんとお話がある。たとえが間違っているかもしれないけれど、「ヒアアフター」などが近いといえば近いかも。ま、他に類を見ない作品ですから無理やり関連作を挙げても仕方ないか・・・。タルコフスキーは「サクリファイス」しか見ていないけれど、確かに雰囲気はそのもの。物語は人間→ヤギ→木→木炭の順番に進んでいく。淡々と描かれるかと思いきや、ウトウトしないように笑える部分が差し込まれている。ヤギ飼ってる爺さんは咳き込んでいて、どう考えても“ご利益以外ありえない”薬を気休めに服用。爺さんの後はいきなりボコッと生まれる小ヤギが映画を引っ張っていく。「トゥモロー・ワールド」でも出産のシーンは何か輝かしくも厳かでうれしくなる瞬間。生まれたてのヤギがメーメー鳴きながら、他の子ヤギと戯れているのはどこか「2001年宇宙の旅」の冒頭みたいでセリフなくても画面に目が釘付け。

 

 チョロチョロ動く子ヤギの次は厳かな大木。どっしりしていて“生きる時間の長さ”が違うことを思わせる。もちろんセリフないし、ただ映し出される木を見てそう感じただけで、ご覧になる方それぞれいろいろな印象でしょう。とことん娯楽映画の要素(セリフやら効果的な音楽)を排して、素材そのものを活かすことで勝負しているこの監督の才能は凄い。自然は日本にもあるんだから、出来ると思うんだけど、あんまり見かけないのは残念。雲というか霧が立ち込める山間の景色は「蟲師」もがんばってたが・・・。最後は長命な大木も木炭へと姿を変えていく。

 

 自然をただ映したってこうまで観ていて退屈することなく、人それぞれが様々な感想を抱けるように描くことは難しい。監督のミケランジェロ・フランマルティーノは次回作が楽しみ(もっとも商業映画撮らないかもしれないけれど)。イタリア人だけに絵心は抜群で、舞台となる町の景色は美しく、ちょっとテレビでは真似できないでしょう。「未来の食卓」もそうですけれど、欧州の人の描き方はやっぱ合衆国とはぜんぜん違って、МTV感覚がないからですかねぇ。霧が晴れて始まるのでどうしても「100,000年後の安全」を思い出しちゃうけれど、21世紀は“人類中心のものの考え方”から卒業していく時代だと考えると少し気が楽になります。生命の尊さとかが前面に出るのではなくて、時に笑いも交えて、流れる時間に身をゆだねる心地よさ。派手な作品を5本くらい観て飽きたら断然イケます。

 

現在(6/3/2011)公開中
オススメ★★★★☆

 

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  キャラバン

 

 ネパールの山岳地帯をヤクを使って物資を運搬する人々(キャラバン)を描く壮大な物語。確かに物語は壮大だけど、出ている人々がやけに生々しいなぁと思っていたら、主役の人以外はほとんどの方々が本物だそう。山岳地帯だからお風呂ないのは当たり前で、異常な潔癖症=日本人から観ると、爪が黒ずんでいるだけでもむむってなっちゃう。でも現地に行けば、そんなの当たり前で気にもしないのだろう。とにかく過酷な旅路で、「八甲田山」も真っ青。族長が頑固ジジイで若者に簡単に譲らない姿は現在とっても貴重で、「クジラの島の少女」くらいか。でも頑として譲らないと思っていた爺さんが、コレはと思った主役の若者(この人カッコいいです)に一族を託し、投げかけるセリフは忘れられない、ぜひご覧になってご確認を。「ココシリ」も過酷な山岳地帯を描いていて秀作ですが、この作品ともどもお好きな方は必見。アカデミー賞も受賞しており、おかげで観ることができた、それがなければ幻の一本になるところ。 
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