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BIUTIFUL ビューティフル

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 前作「バベル」の公開が2007年だから、4年ぶりとなるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの最新作。賞を獲っている割には(カンヌ映画祭もアカデミー賞も)、余り宣伝を見かけません。見逃すところでしたけれど、何とか劇場での観賞ができました。「バベル」の時はあれだけ話題にしたのに、物語が地味だしバルセロナの“影の部分”を描いているせいでしょうか?「リミッツ・オブ・コントロール」にしてもピンと来る人と、来ない人の差は歴然で、ピンと来なかった方にはサッパリだったみたい。確かに宣伝文句として“〜映画祭〜賞獲得!”とか“興業収益〜億ドル”とか“〜週連続ランキングナンバー・ワン”は古臭い。まさかハビエル・バルデムを呼んでもイヴェントにするのは難しい。劇場は1つの作品を4つのバージョン(3D、2D、字幕、吹き替え)にして上映するから効率はいいけれど、シネコンにはぜひ消えつつあるミニシアターの機能も受け継いでいただきたい。

 

 さて日本での知名度こそ低いですが、ペネロペ・クルス(「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」)を奥さんにしているハビエル・バルデムは有名監督たちに人気です。ラテン系色男(ウディ・アレン「それでも恋するバルセロナ」)、ターミネーター的殺し屋(コーエン兄妹「ノーカントリー」)、尊厳死を望む男(「アレハンドロ・アメナーバル「海が飛ぶ夢」)、父親役は「食べて、祈って、恋をして」に続いてですけれど、真逆の社会の底辺で何とか生きようとする姿が痛々しい。バルセロナのどん底で生活している男ですから、仕事はギリギリのライン。“人買い”を主に生業にしているけれど、ヤクザな仕事の割にはまともな男で子煩悩。しかし荒んだ世界で生きている、人間味のある男は末期のガンと宣告されてしまう。「マイ・ライフ」のように中流階級ならファンタジーにすら見える内容も、先進国の底辺となると“搾取され尽くした成れの果て”ですから絶望感が作品を覆う。食事のシーンとかもけっこう容赦ないですね。みんなで食べるから暖かい雰囲気なんだけど、雑然とした印象は拭えない。

 

 更に彼にはある能力があって、「ヒアアフター」とは若干異なるかもしれないけれど、死者の遺志を読み取ることが出来る。「シックスセンス」が分かりやすいですけれど、人によってはありがた迷惑な能力を、監督はラストで効果的に使っている。もちろんそれはご覧になってご確認ください。クリント・イーストウッドにしろジャン・リュック=ゴダール(「アワーミュージック」)にしろ高度資本主義社会が提供する、夢の中に浸って日々を暮らしている人々に関心はない。この監督もその1人でちゃんと現実を見据えている。合衆国の「ファーストフード・ネイション」でも描かれましたが、移民による底辺の仕事は搾取され放題で悲惨そのもの。アフリカと中国の移民がスペインの観光地、バルセロナで裏稼業をしている様は、“テレビ映り悪い”から宣伝できないですものね。もちろん一歩間違えれは強制送還(「扉をたたく人」)で、ここら辺もキッチリ描いている。

 

 もし若い人が観たら、絶望に打ちひしがれる男の物語と映るかもしれません。でも中年が観て唸ってしまうのは、少なくとも四面楚歌の男の最期には救いがあったような。希望に満ち溢れた20代が達観したらやだけど、人生の半分は終わった中年なら覚悟があってしかるべき。残り少ない命でもなんとか生きて、“辿りつくところ”は救いでしょう。少なくともわたくしめにはそう見えました。作品の時系列を交錯させたり(「アモーレス・ペロス」)、断片の集積で映画を構成したりして(「21g」)観客をアッと言わせてきたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、渾身のストレート勝負でした。

 

現在(6/27/2011)公開中
オススメ★★★★☆

 

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  宮廷画家ゴヤは見た

 

 ホントは豪華共演の偉人伝にして史劇的コスプレの秀作。監督が「アマデウス」のミロス・フォアマンなんだから、見ておけば良かったもののスルーしちゃった。もちろん名前だけは知っているけれど、他はサッパリの歴史上の人物ゴヤ。激動の時代を生き抜いた根性入りの芸術家で、18世紀の絵描きさんは20世紀の小説家(アーネスト・ヘミングウェイ:「モダーンズ」、コナン・ドイル:「フェアリー・テール」)とは違います。

 

 ま、残した作品は後世にまで人々に影響を与えるのは画家と同じなれど、当事者の人生はそれほど波乱万丈ではない小説家。ところが画家とか音楽家ってパトロンが王族なものだから、歴史もののテイストを入れやすい。マルキ・ド・サド(「クイルズ」)にしろベートーヴェン(「不滅の恋ベートーヴェン」)にしろフランス革命をまたいでいますから、ナポレオンの影がちらつく。スペインの宮廷画家ゴヤ氏も教会が猛威を振るう時代から、フランス革命を経て、ナポレオン遠征に出くわす。もちろんゴヤ本人が主役ではなく、彼と関係のあった神父と彼のモデルになった少女がメイン。

 

 もの凄くいやらしい芝居を目いっぱい披露するハビエル・バルデムはやはり変幻自在。異教徒弾圧を提案しながら、ヤバイとなったらさっさとフランスに逃げて、今度は仲間を裁判にかける。ゴヤのモデルになった少女役のナタリー・ポートマンは、実力をフルに出し切っているみたい。責め苛まれるのは「Vフォーヴェンデッタ」でもやっていましたが、牢に繋がれ拷問を受け、精神を病み、生んだ子供を探してさまよう姿は見ていて気の毒。もっとも役者さんは可哀相な役にやり甲斐を感じるみたいで、入りきっていた。

 

 でも楽しんだのはゴヤに扮したステラン・スカルスガルド。古くは「レッドオクトーバーを追え」で吹っ飛んじゃうソビエト原潜の悪役艦長で、「天使と悪魔」の怖い顔も出来る人ですけれど、「マイティ・ソー」のフツーな感じが良いのです。「マイティ・ソー」はナタリーと再共演だったのね、と妙なところで感心したりして。冒頭ゴヤの画が教会を仕切っている連中に問題視されているけれど、テレビのニュースで槍玉に上がっている問題とやらに似ていてうんざりする。もっとも根性の入った芸術は後の世に悪党の悪事を伝える。剣より筆の方が強いのです。 
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