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トイレット

  トイレット

 

 無条件で劇場に行く日本映画の監督は今のところ北野武押井守是枝裕和なんですけれど、前2作で「あなたについて行きます」となってしまった荻上直子もお気に入りの映画作家になりそう。前作「めがね」は食物が主役でしたけれど、今度はタイトルがなんとトイレット。「すげぇ、食ったら出すかよ」と大胆さに感嘆。描かれる対象が食品から物品(トイレとかミシン)に移るのかと思いきや、ドラマティックなヒューマンドラマを展開。予想を見事スカしてくれて嬉しい。

 

 「かもめ食堂」をご覧の方ならご存知ですけれど、冒頭から「タイトルを見過ごしちゃあならねぇ」とばかりに凝視していたら、あっさりミニシアター系の小粋なスタート。淡々と描いていくのかと思いきや、祖母と三兄妹の関係に踏み込んでいる。へぇ今回はずいぶんと動きがあるなぁと思ったけど、やはり監督のテイストは活きていて、「めがね」より静けさが漂う感じが悪くない。

 

 母親が亡くなって、それぞれ問題を抱えた三兄妹が祖母と同居することになる。長男は引きこもりで、次男は人間関係を構築しないエリートで、末の娘は生意気な変わり者。舞台が合衆国だけに「ジュノ」とか「サンシャインクリーニング」を思わせるホーム・ドラマのスタイルなんだけど、ユニークなのはもちろん“もたいまさこ”演じる“ばーちゃん”。全編英語のクセにコレと猫の呼称だけが日本語で、前半は殆どため息つくだけの芝居でセリフがない。“たたずまい”だけで映画持たせちゃうんだもんなぁ。しかしちゃんと室内描写は計算されていて、侮れない。“せんせい”と呼ばれる猫も“前足と尻尾の芝居”は絶品。

 

 美味しいのは“ばーちゃん”と“せんせい”だけじゃなくて、荻上直子 作品待ってましたの食べ物は今回“ギョーザ”。実に凝縮された描写で、夜独りでこっそりダイニングでビールを飲んでいる次男のところにギョーザを“ばーちゃん”が運んでくる。更にたばこに火を点けるとこは美しかったなぁ。今世紀ひょっとすると似非ポリティカリィ・コレクトネスによって絶滅させられてしまうかもしれない貴重な1シーンです(参考までに「サンキュー・スモーキング」をどうぞ)。

 

 今回は荻上直子らしさを保ちつつ、前2作とは異なり、ちょっと風変わりだけど“家族の絆”を描くヒューマン・ドラマ。引きこもりの長男は「幸せの1ページ」のように勇気を出して得意のピアノ・コンテストに出場、感動のシーンで弾かれる曲はなかなか(「シャイン」「路上のソリスト」に負けてない)。また絶妙なタイミングでクラシックの良曲がかかり効果的。静けさを演出する良好なツールとなっております。また“ばーちゃん”がおもむろに金出すトコとか、エリート次男に実は秘密があったりとか(プラモデルは相当凝ってるよね)、もちろんトイレットに関するエピソードもあるんだけど、全体的に素晴らしいのは、いくらでも観客が想像を膨らませる余地が残っている。

 

 ちゃんと描いているけど、余計な説明は省く。更にキャストは日本人の若者でも十分問題ない内容なんだけど、あえて合衆国を選んでいるのは重要。もしやったら生々しくて、相当息苦しい作品になってしまう。監督の戦略は吉と出ています。ストレートにこの種の題材を扱うなら「マイライフ、マイファミリー」のように演技派が何人か必要。

 

  バラバラだった家族が絆を取り戻し、素晴らしい感動作になるはずなのに、あの非常識な×××でしめくくってしまうとは・・・、映画作家荻上直子 恐るべし。「東のエデン 劇場版U Paradise lost」もラストに唖然として劇場を後にしましたけれど、まさかアレをやりたいがためにこのタイトルにしたんじゃ?「ビッグリボウスキ」コーエン兄弟だってあそこまでは・・・。2010年邦画ナンバー・1最有力って感じです。もっとも今年になって日本映画は4本しか観てないんだけど・・・。

 

現在(8/30/2010)公開中
オススメ★★★★★

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  イエロー・ハンカチーフ

 

 高倉健主演、山田洋次監督の日本人にとっては余りにも有名な「幸せの黄色いハンカチ」。小学生の頃見てやっぱ最後のハンカチがはためくところに感動。コレをリメイクと聞くとあれ?と思ったけれど、原案は米国人ピート・ハミルなんだから、やっと本国でということになりましょうか。オリジナルは主人公を健さんが演じているわけだから、合衆国版もロバート・デ・ニーロとかアル・パチーノとかが演じるとうなずいてしまうんだけど、なぜかウィリアム・ハート。しかし彼の持つ生々しさが、健さん演じるオリジナルと趣を異にしているので楽しめます。見ていて「それぞれの空に」を思い出したんだけど、実はロード・ムービーなんだなぁと改めて感心。オリジナルももちろんそうなんだけど、舞台が日本だとその側面は余り目立たない。

 

 撮影のクリス・メンゲスは監督作の「ワールドアパート」も大好きな人で、「スタンドアップ」「愛を読むひと」もどこか乾いた画が良い。正直マリア・ベロ(「サンキュー・スモーキング」の彼女が良いのです)とクリステン・スチュワートが出ているから見たようなもので、オリジナル・キャストの桃井かおりさんが出て来た時はビックリ。なおウィリアム・ハートとマリア・ベロはともに「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に出ているんだけど、ウィリアム・ハートをヴィゴ・モーテンセンにするわけにはいかないか・・・。最後は分かっちゃあいるのにジンワリ泣いてしまいます。
オススメ★★★★☆

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