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ザ・ロード

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 「ノー・カントリー」の原作者コーマック・マッカーシーのピューリッツァ受賞作 を、ヴィゴ・モーテンセン主演で映画化。終末後の世界を、親と子がひたすら南を目指して旅をするというのが大まかな物語。アレ?方角が違うだけで「ザ・ウォーカー」と設定は同じ・・・。ところが似ている分、違いが際立つ内容となっておりました。やはり原作が文学作品だけに、人間の内面を鋭く“えぐる”方に重点が置かれており、ずしーんときますね。色味のない風景は終末を描く作品の特徴ではありますけれど、無彩色というより、生命が死に絶えた滅亡を印象づける不毛の大地が、必死に生き抜こうとする親子の前に延々と広がります。美を感じさせないんだけど魅入ってしまう。「ザ・ウォーカー」では美麗な終末描写をむしろ目くらましのために有効活用しましたけれど、この作品は“父と息子の絆”をクッキリさせるために切実な背景として機能させている。

 

 また時折恐らくは“世界の終わり”の原因になったであろう“地鳴り”“地震”“火災”などが差し込まれますが、「宇宙戦争」「クローバーフィールド」のように登場人物が遠くからそれを眺めている描写に終始。あくまで終末後、不毛の大地を延々と歩かなければならなくなった“人間”に焦点が当てられている。で、風呂に入らないからホームレス同然の姿かたちをしている親子が、最も危険を感じるのが“人間”。生命の途絶えた不毛な大地に“食い物”がそう滅多にあるわけじゃなし、しぶとい生き物をとって食うわけです。登場人物が盲目になり、人間の本性が浮き彫りになる「ブラインドネス」も“本性の恐怖”でしたけれど、21世紀の“終末もの”はタブーに踏み込んでます。地下に“食料”が保管されている家にうっかり入っちゃって・・・、のトコは村上龍氏の半島を出よの一部分を思わせて怖かったなぁ。ただ地下に眠っているのはご法度の食料ばっかりじゃなくて、まっとうな物を仕舞い込んであるシェルターもあるわけで、そのお宝を発見、恩恵を満喫する描写は数少ない救われる1シーン。もしアレがなかったらヘトヘトになってしまうところでした。

 

 さて不毛の大地を行く親子を描いた作品ですから、“悪人”以外はそれほど登場人物を増やすわけにいはいきません。出てくるとしたら2人のキャラを際立たせるための完全な脇役。ただしこれがとっても豪華で、ヴィゴ・モーテンセンの回想に登場するシャーリーズ・セロン、息子の“人間らしさ”を結果的に引き出す老人のロバート・デュヴァル、ラストに登場のガイ・ピアース。出番はそれほど多くはないんだけど肝心な脇役。シャーリーズ・セロン は大通り映画「ハンコック」みたいなこともできるんだけど、「スタンド・アップ」「告発のとき」とインディ系の作品で“自然な美しさ”を焼き付けていて素晴らしい。ガイ・ピアース「ハート・ロッカー」は冒頭でしたけれど、この作品ではラストに見せ場をさらっちゃいます。そして「クレイジー・ハート」に続いて、この人さえ出ていればOKのロバート・デュヴァル。ある時期のハーヴェイ・カイテルがそうでしたけれど、結果的に“良い映画”にはこのひと出てるんだよなって感じ。彼の役名が「ザ・ウォーカー」の主人公の名前“イーライ”ってのにはちょっとびっくり。

 

 もちろん上映されている間ほとんど映っている主演ヴィゴ・モーテンセンがこの作品で最も肝心。「アイ・アム・レジェンド」と同じく、映画を保たなければいけない。「ロード・オブ・ザ・リング」の王様とも「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「イースタン・プロミス」のような凄みも感じさせない、極限状態で切実に子を想う父親は「96時間」リーアム・ニーソンより生々しく、文句のつけようがない。世界の終わりが生々しく眼前に迫ってくる重たい1本、娯楽大作じゃあまず無理なミニシアター系ならではの贅沢さではないでしょうか。ですから、この作品の後に「ザ・ウォーカー」をご覧になると良いかも。お口直しにスチャラカ近未来超大作風SF「バトルフィールド・アース」などをどうぞ。

 

現在(7/2/2010)公開中 
オススメ★★★★☆

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  バトルフィールド・アース

 

 今(2011年)を去ること7〜8年くらい前、東北新社の人から「何も見るものがなかったら断然オススメ」と言われた1本。それきり放ったらかしにしていたけど、たまたま見たら実に面白い。それも通常の面白さではなくて、一段屈折した見方をする人ならけっこうな旨味があるかも。内容は「紀元前一万年」まで後退した人類が、知恵と勇気で宇宙人に立ち向かっていくというもの。どう考えてもB級の路線なんだけど、特撮は特S級の雰囲気を持っている。ジョン・トラヴォルタがあのアホなメイクで登場するのは知っていたけれど、まさかフォレスト・ウィテカーまで付き合うとは驚き。

 

 更にアッサリ人類を滅亡にまで追い込んだ、とんでもないテクノロジーを持っているエイリアンのクセに地位やら成績やらに拘泥したりする。加えて狙っているのが地球の鉱物資源で、その正体は爆笑。見るもおぞましいエイリアンが、人類を牛耳っていると勘違いしている連中(エリート)に重なって見えたら物語に入っていけます。せこい監視カメラのトコとか端々に風刺というか皮肉が利いている。ウィル・スミスが出たSF超大作「インディペンデンスデイ」と「アイ・アム・レジェンド」を合体させたようで、設定はもう穴だらけなんだけど、いっぱいSF見て飽きてきたなぁと思ったら、断然オススメ。
オススメ★★★☆☆

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