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 前作「アキレスの亀」ではある“たわけ”の生涯を温かい視線で見守った“世界の北野武”。ま、顧客満足度を優先しているとしか思えない作品造りはホントに楽しませていただいております。宣伝ですと今回は饒舌とのことでしたが、“北野映画にしては”と言った方が正確でしょう。「HANA−BI」の時なんか寡黙すぎて、次回作ではセリフがなくなるんじゃないか?と思ったものです。なにせヒロイン岸本加世子はふた言しか発しませんでしたから・・・。

 

 さて「ヴァイオレンスなら俺が」という北野武ならではの暴力炸裂、久しぶりにすごかったですね。すさまじい描写はホントに“ダメな人にはダメ”なんですけれど、免疫のある顧客にとっては「おっきたぜ」の瞬間。あの「グッドフェローズ」にぜんぜん引けをとらない。もちろんそれはあくまで脇の装飾というか“北野映画らしさのひとつ”でしかない。また暴力描写の合間に差し挟まれる“笑い”のさじ加減はお楽しみの一つ。この怖いんだけど笑っちゃうシーンに不可欠なのが芸達者な役者陣で、癒着が日常のマル暴刑事の小日向文世にしろ、セコイ組長の國村隼にしろ、踏んだり蹴ったりの石橋蓮司にしろ、実に美味しい。笑った途端にそれが凍りついたり、固まったかと思えば笑わせてもらったり、この“らしい”リズムに見事マッチしている。そしてヤクザの稼ぎ方がやけに生々しくて、大使館員を使ってカジノ運用したり(港区じゃいかにもありそう)、暴力バーとかシャブ取引の現場の生々しさはどうでしょう。たいていの邦画が漫画チックにやり過ごすところを娯楽作のクセにキッチリ描いている。

 

 確かに悪党しか出てこないこの作品ですけれど、よりタチの悪いワルのしわ寄せを食っちゃうのが監督自身が扮する“大友組”の面々で主要メンバーだけにカッコ良い。なかでも椎名桔平が実に男前に映っていて、役柄の上でも三浦友和、杉本哲太をしのいで一歩リードって感じ。英語ペラペラのいかにもインテリヤクザに化けた加瀬亮 とのコントラストで際立っています。それにしても「硫黄島からの手紙」 に出ていたとは言え、加瀬亮の英語は違和感なかったなぁ。彼は現在の邦画では人気、実力ともに重要な一人でしょう。更に彼らの脇でもかなりの数の“いい面構え”をした人たちが出ていて魅力的です。ただ中野英雄に触れてしまうと台無しになってしまうので割愛(この人もすごく美味しかったけどね)。

 

 今回常連の大杉漣、寺島進が出ていないのが残念でしたけれど、それを補って余りあるのが全体的な構成。上に裏切られて窮地に陥るって設定は「ソナチネ」だし、後半の流れは「BROTHER」、ラストは「その男、凶暴につき」を思わせてニンマリ。「TAKESHI’S」 でもやってましたけれど、セルフ・パロディとも言うべき自己の作品から引用している部分に常連は狂喜してしまうのです。北野武 の作品は他の誰のモノにも似ていない。常連さんの期待をスカしながらも裏切らない顧客満足度100%、遠くに水力発電の風車が見える光景はまさに“キタノブルー”で、残酷なシーンなんだけど美しい。

 

現在(6/18/2010)公開中 
オススメ★★★★☆

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  HANA-BI

 

 寡黙を通り越してそのうち“沈黙”してしまうんじゃないか?と思える北野武監督作品。余命わずかの妻を連れての逃避行が物語の中心。淡々と描かれている中に時折差し込まれる“暴力描写”とのコントラストはこの作品で極まったかのよう。“静謐な美しさを時折暴力で彩る”傑作だけにベネチア国際映画祭で賞を獲得。なお、印象的な海岸は横須賀の“野比海岸”で、確かに人があんまり来なくてキレイです。で、撮影現場を見た方に聞いたんですけれど「照明に障子か何かつけてたぜ」とのことでした。
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