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 「デリカテッセン」、「ロストチルドレン」の映像美が評価され、ハリウッドに招かれ「エイリアン4」に抜擢されたジャン=ピエール・ジュネ。ところが水が合わなかったのか、母国フランスに帰って「アメリ」で大ヒットを記録。映像の路線は前作を引き継いでいるけれど、明らかに原作から逸脱していると思われる「ロングエンゲージメント」がかなりやばい珍品だったから、ちょっと心配していたけれど、見事素晴らしい傑作を届けてくれました。さすが映画作家を大切にするフランスに大感謝、だてに北野武に勲章をあげていない。

 

 さて映像美は実に目を楽しませてくれるジャン=ピエール・ジュネ、パリの風景を独特の描写で魅せるため、主人公はかなり無口。はじめは唖かと思ったけれど、「妹の恋人」ジョニー・デップのようにちょっと風変わりな男なだけ。もちろんパントマイムも得意技の一つ。また彼が勤めているのがレンタル屋で、「僕らのミライへ逆回転」にしろ街のちっちゃい店が出てくるのは嬉しい。監督たちもチェーン店に好感は持たないんだろうなぁ。ところか無口で、幼い頃に父親を地雷で亡くした不幸を背負った主人公は、店番中に頭を撃たれてしまう。「アデル/ファラオと復活の秘薬」と同じく“事件”をギャグで描いていってしまうのはフランスらしさでしょう。手術中にコインで決めちゃう医者のところはスゴイ。

 

 弾丸が頭に埋まったまま、しょぼい仕事まで失った主人公はホームレスに。ま、ホームレスの映画が好きってワケじゃないけれど、「東京ゴッドファーザーズ」「聖者の眠る街」(ごめんなさいDVDレンタルありません)もよく出来ております。底辺の人間全てが“清く正しい”わけではないけれど、“心が醜く”なければ偉くなれない高度資本主義社会にあって、彼らを主人公にしなければ描けない物語というものもある。この作品の素晴らしさはたとえタイトルが“いたずら”であっても、勧善懲悪のお話なのです。

 

 個性的なホームレスの面々が懲らしめるのが、“人類の敵”=武器商人。主人公バジルの父親を吹き飛ばした地雷、頭の中に残った弾丸は連中の製品。バジルが連中に復讐するのは当然。ところが「アメリ」に通じるんですけれど、内気で手口がセコイところが観ていて笑いを誘います。また隣り合ったビルに悪党2人がにらみ合っている構図は「ラッキー・ナンバー7」みたい。しかし本当の悪ですから、演じる二人は芸達者さんで思いっきり惨めにやってしました。それにしても現大統領サルコジの写真が、悪党の机に飾ってあるのには驚き。

 

 連中を告発するって内容では、事態の本質を突くどころか空転してしまってヤツラの思う壺。むしろ懲らしめるところが肝心で、××しては同じ“底なし沼”に足を取られてしまいます。また「グリーン・ゾーン」と同じく、今(21世紀)は何も企業の代弁者=マスコミを通さずとも人々に訴えることが出来る。「アバター」「第9地区」では黒幕として登場、武器商人が主人公の「ロード・オブ・ウォー」なんか観ると絶望し、ため息をつくことしか出来なかった。しかしやっとスッキリした、本当に胸のすく思いでいっぱいの快作。

 

 素晴らしい作品だけに座席はまばらだったけど、口コミで何年たっても観てもらえる。レンタル屋にならんでも、ちゃんと在庫管理の出来る店員さえいれば棚の片隅にあって、人々を勇気づけてくれるはず。だってさ友達に「良いよ」と言われて「アメリ」借りる女の子が未だにいるんだから、この国だってそんなに捨てたもんじゃない。きっとこの作品も目利きの若者によって“素晴らしさ”が伝えられると信じたい。

 

 “不思議ちゃん”御用達の作品で、キチンと現実を取り入れて描き、観ている人を絶望的にするのではなく、胸がすくような気分にさせてくれる。ホントはティム・バートン がとっくに撮っていそうな題材ながら、映画発祥の国だけに肝心な映画を世界に発信。映像美を堪能するにとどまらない、ジャン=ピエール・ジュネの傑作。

 

現在(10/4/2010)公開中             
オススメ★★★★★

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 赤ジャケット・シリーズ最終回。泥棒のクセに少女を助け、悪党を倒すというのはそのまま傑作「ルパン三世 カリオストロの城」に受け継がれている。ついでに少女=小山田真希を演じたのはナウシカの島本須美で、いやいや当時は“お嬢様声”の代名詞的存在。テレビを見ていた時には気がつきませんでしたけれど、ルパン一味を演じる声優の面々は一人二役だけに、惨めなニセモノを嬉々として演じているのが良く分かる。翻って銭形のとっつぁんのカッコ良いこと。そりゃあそうだよねルパンなんだから。よって実は何度も見ることができる優れもの。更に新宿で展開される戦車VSロボット=ラムダの戦闘シーンは凄い。「機動警察パトレイバー2 the movie」でも都内に戦車が走ったりすると、異様な雰囲気が醸し出されるけれど、現実的に渋滞でにっちもさっちも行かない歌舞伎町で戦車を動かしたらどうなるか・・・。押井守の前に都内で戦争シュミレーションをしていたのはさすが。

 

 更に悪党は思いっきり惨めで、よりにもよってルパンの名を騙ったため徹底的にやられちゃう(工場大爆発でざまぁみろ)。結果的に良いことするわけだけれど、正義のためじゃなく、“オレ様の名を使うなんてただじゃおかねぇ”という凄みは最後の表情に出ている。セリフは「仮装行列は幕にしようぜ」だけど。もちろん見ている少年少女の印象に残っているのは、あのアクロバティックにロボットに飛び乗り、真希を救出のシーンでしょう、カッコ良いのだ。やはり軍需産業の連中は懲らしめないと。ずいぶんと早く宮崎駿は描いていたわけですけれど、ガキじゃあ気がつかない。でもこの内容なら2時間の長編に・・・ま、それが“カリオストロの城 ”か。
オススメ★★★★☆

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