関連テーマ 

サイドボックス

ここにテキスト


出し

ナイト・トーキョー・デイ

   ナイト・トーキョー・デイ

 

 「死ぬまでにしたい10のこと」以来好きな監督イザベル・コイシェ。その監督が菊池凜子を主演に東京を舞台にして撮る、というだけで無条件で劇場に直行。上映される前に「フィルムの状態が悪く、エンドロールで画像が乱れます」というアナウンスがあってワクワク(ま、あんまり、いないよな)。始まっていきなり“女体盛り”が出てきて「またか、奇妙な国=日本の映画か、珍品コレクションが続くな・・・」などと思っていたら、アッサリ“後ろ向きの予想”を裏切ってくれて「へその上にのって温まった寿司食ってどうする」とちゃんとしたセリフ。これはヴィム・ヴェンダースの「東京画」やソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」に負けない“外国人監督が描いた日本”の良作映画だと確信。

 

 冒頭から画像が荒く、素人でさえハイヴィジョンで撮ってTVのニュースを投稿する時代に、まるで粗悪品のビデオテープ映像を見せられる。しかし原題の“map of the sound of Tokyo”が肝心で、“画”ではなく“音”で魅せることに監督の意図があるのだと気がつくと、俄然面白くなってきます。「4分間のピアニスト」の時もなんで画像が荒いのかなと思っていましたけれど、ピアノの旋律で全て納得。東京の情景描写では「珈琲時光」には勝てないし、「東京画」が既に日本特有のパチンコとかサンプル食品を描いてしまっている。監督の戦略はこれら作品を知った上で“音”に焦点を絞って東京を描いていく。セミの声とかラーメンをすする音とか。よって録音技師役の田中泯はなくてはならない。彼の独白で聴かせる声は実に素晴らしく響きます。そして彼との友人関係にあるのが菊池凜子扮する殺し屋。ただジム・ジャームッシュ「リミッツ・オブ・コントロール」のように主人公は殺し屋だけれど、描くポイントはあくまでタイトルが示しています。「リミッツ・オブ・コントロール」はスペインのマドリードを描きましたけれど、音を通して東京を描いている。

 

 この作品の魅力は主演女優菊池凜子に負うところが大きくて、「ナイスの森」でこの娘はと思っていたら、いつの間にか「バベル」に出ていたり、「アサルトガールズ」も独特の雰囲気を出している。冷たい表情もするんだけど、眼差しがぞっとするほど印象的だったり、寡黙に魚市場で働く姿も文句なし。そしてこの国独特のエロティックな描写に挑戦。「空気人形」も描いていましたけれど、ただ裸見せりゃあいいってもんじゃない。たぶん監督は村上龍の「トパーズ」を観ているはずだから、ラブホテルの描写はある種のセールス・ポイント。ああいうのないと海外の人は納得しないですからね。しかし冒頭の女体盛りで監督が笑っているのは勘違いしている外国人の方です。
 

 「あなたになら言える秘密のこと」(イザベル・コイシェの作品で一番好き)でサラ・ポーリーが演じたハンナは難聴で、音と関係がある。「エレジー」でペネロペ・クルスが恋に落ちるのはずっと年上の大学教授で、この作品の中にも菊池凜子と田中泯の2ショットに反映されている。ちゃんと過去の作品の血も入っていて、ファンとしては嬉しいけれど、なかなか挑戦的なイザベル・コイシェの野心作ではないでしょうか。ヴィム・ヴェンダースの「リスボン物語」(ごめんなさいDVDレンタルありません)は録音技師が主人公のロード・ムービーでしたけれど、魚市場で働く“表の顔”を持った殺し屋を主人公にして東京の音を捉えた、やはり好きになってしまう映画作家の1本。画像の荒さにニヤニヤしながら観るなんて、「トイレット」荻上直子にしろ期待を裏切ることなく、予想をスカしてくれる監督はたまりません。

 

現在(9/13/2010)公開中
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

 

前のページ     次のページ

 

top

関連作

  リスボン物語

 

 のんびりリスボンを描いた作品としてたまに観たくなる。ヴィム・ヴェンダースの「都会のアリス」が大好きなので、同じフィリップ・ウィンターが主役なのが嬉しかった。彼が演じる映画の録音技師が子供を前にいろんな音を出して見せるところは楽しげ。マドレデウス の演奏の部分は聴き応えあり。ただ失踪した友人の監督を見つけ出す云々はおまけ程度でしょうか(確か本筋だと思う)、あんまり印象に残ってないんだよな。行ったことある人に聞いたんですけれど、なかなか魅力的なところだそうです。
オススメ★★★☆☆

Amazon.com

 

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system