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 「トレーニングデイ」を観た時この人はなかなかの才能なんじゃないかと思っていたら、続く「キングアーサー」も活劇要素だけではない史劇で魅せてくれたアントワーン・フークア。前作の「ザ・シューター極大射程」 も硬派な娯楽作だけど、今回はかなり突っ込んだ渾身の内容。メジャー・レーベル(ワーナーとかブエナビスタとか)じゃないインディ系の作品だけに一見“刑事もの”の体裁を持っているけれど、かなりヘヴィな人間ドラマを展開、鑑賞後はズッシリきます。

 

 「クラッシュ」などに近い印象を受けましたけれど、群像劇ではなく主要登場人物の3人を軸に、それぞれの物語が平行して進行。一人は退職間近の無気力な初老の男、一人は家族想いだが金に困っていて、もう一人は潜入捜査に深入りし過ぎたために、捜査対象に情が移りつつある。リチャード・ギアイーサン・ホークドン・チードル がそれぞれストレスを抱えたエッジに立つ男を“演技賞もの”の芝居で演じきっており、それぞれの物語が独立した作品としても成立しそうなクォリティ。

 

  リチャード・ギアは以前「背徳の囁き/インターナル・アフェア」で悪徳警官を演じているけれど、無気力でせせら笑われる役なんて初めてじゃないでしょうか。「ハンティング・パーティ」も落ちぶれたジャーナリストが良かったんですけれど、今回は徹底しています。“娼婦通い”のところなんか日本のヤクザ映画みたい。で、「リアリティ・バイツ」の頃には店の商品をつまみ食いするような若造を演じていたけれど、「ビフォア・サンセット」「ロード・オブ・ウォー」と確実に大人になったイーサン・ホークもどこかに“迷い”をもっている感じが出ていて素晴らしい。そして万能演技派ドン・チードルはチンピラに見えなくちゃいけない潜入捜査官のクセに「ホテル・ルワンダ」「再会の街で」に通じる生真面目な様子。彼のそんな部分は端正な顔立ちのボス、ウェズリー・スナイプスとの対象で際立つ仕掛け。それにしても「ニュージャック・シティ」 以来ではないでしょうか、カリスマ性を感じさせるボス役は。スナイプスにとってはやすやすと演じられてしまうレパートリー。

 

 ただこの作品が野心的なのは登場人物も設定も既存のものがけっこうあるのに、そのまま使っているトコ。退職間近(「セブン」「リーサルウェポン」)、家族想いだけど金に困っている(「プライド&グローリー」)、潜入捜査で犯人にシンパシィを抱いていしまう(「フェイク」「マイアミバイス」)。しかし展開は「L.Aコンフィデンシャル」 のように“最後の正義”に賭けるというものではなくて・・・、それはぜひご覧になってご確認を。

 

 この作品に比べると他の刑事映画はやはり善悪がハッキリしているように見えます(そうじゃなきゃ困るんだけど)。「フェイクシティ/ある男のルール」も事件に焦点が当てられているがゆえに。ですからより“人間臭いもの”に仕上げようとしたのが監督の意図するところじゃないでしょうか。“魅せる銃撃戦”を展開するのではなくて、警官隊が突入するところも派手さよりも生々しさを強調している。射殺のシーンはどこか「その男、凶暴につき」を思わせます。最も“善悪の判断基準”が問われる職場に、身を置いている男たちのストレスを映像化する。もう呆れるくらい刑事もの、犯罪ものは作られ続けていますから、パターンは出尽くしている。しかし見慣れたパターンを出しつつ、出演者それぞれの力量を信じ、“魅せる画”に頼らず人物描写に比重を置いたアントワン・フークアの野心作。「21g」 に通じる渾身の1本で、ダークでヘヴィな内容の大人向けです。

 

 確かにブルックリンを描くことにかけてはスパイク・リーには適わないかもしれない。しかしアントワーン・フークアは真正面から切り込んでいるし、タイトルにブルックリンを冠しているんだから野心的な挑戦作でしょう(原題は“Brooklyn's Finest”です)。彼の技術をもってすれば、このキャストでもっと当たりそうな企画に挑めるはず。あくまで好意的推測に過ぎないけれど、賞レースにかけて公開しなかったのも、自信あるからかな?

 

現在(11/1/2010)公開中                 
オススメ★★★★☆ 

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