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グラン・トリノ

グラン・トリノ  グラン・トリノ

 

 まさかあの「ダーティハリー」 のキャラハン刑事が、よぼよぼの頑固じじいになって現れるとは夢にも思わなかったクリント・イーストウッド監督最新作。「ミリオンダラー・ベイビー」 とか「ミスティックリバー」アカデミー賞を受賞したので、“業界世論”がクリント・イーストウッドを“巨匠”として扱わなければならなくなった21世紀。そんなことはお構いなしに、恐るべきマイ・ペースで作品を量産し続けているこの映画スターはスゴイ。

 

 だってつい先々月も「チェンジリング」が公開されたばっかりだし、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」も一昨年のことですからねぇ。更に“音楽だけ担当”の「さよならいつかわかること」とか製作をバックアップしたヤバイねたの「告発のとき」 とかその製作ペースを見る限り、衰えているとはとても思えない。しかしこの作品に敢えて衰えた自らの姿をさらしちゃうのはこの人ならではなのかも。

 

 さて「告発のとき」 でも主演のトミー・リー・ジョーンズ が荒廃しきったアメリカを憂えていましたけれど、ここに登場する頑固じいさん=イーストウッドも周囲の変化(移民のガキどもがウロウロ)を苦々しく思っている昔気質。ただ偏屈なんだけど“異常者”ではないので、移民であろうと真っ当な人々と交流するのは可能。むしろ自らの家族に対して、疎外感を禁じえなくなっている症状はこの国でもよく見受けられる光景。“高度資本主義社会のなれの果て”である合衆国に、かつてあった“失ってはいけない大切なもの”をしっかりと刻みつける姿はホントに感動的。どうしてアカデミー賞 に出さなかったのか不思議なくらい。ま、そこんところがこの監督のすんげぇところでもあります。

 

 それにしてもホントによぼよぼで、立ったり座ったりするのも難儀な老人を、過度な演技ナシで体現している役者魂には脱帽です。またその姿を時に笑いで見せる演出にも、老練な映画監督の業が冴え渡っていて素晴らしい。もちろん監督本人が頑固じじいであれば、移民に囲まれた一軒家に取り残された白人なんて設定はなかったわけですし、21世紀の合衆国を正確に描写する時代感覚は鋭い。

 

 かつて繁栄の象徴だった車、“グラン・トリノ”がタイトルになっているのも、またもはや残されたものがそれしかない老人が主人公なのも、現実を冷静に受け止めている証拠。もちろん嘆いただけで終わりにしないのが熟練の監督ならではで、ちゃんと微かだけれど希望が見えるエンディングになっていました。まるで自身の監督作「センチメンタルアドベンチャー」 みたいにね。

 

現在(5/1/2009)公開中  
オススメ★★★★☆

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  ミスティック・リバー

 

 コンスタントに作品を発表しているクリント・イーストウッド。豪華共演陣で臨んだ「ミスティック・リバー」大人の鑑賞に堪えられる上級のサスペンスに仕上がっていました。それにしても見ているだけでため息が出る出演者たち。ショーン・ペン、ティム・ロビンスの抑制しているにもかかわらず、じっくりと心に残る印象的な芝居はもとより、ケヴィン・ベーコンの実際的で鋭い刑事。ローレンス・フィッシュバーンも単なる脇役に留まらない素晴らしい。今からDVDの特典映像が見てみたくて仕方ありません。だってあの出演者たちをクリント・イーストウッド が演出しているんですから。メイキングだけでも“事件”ですよ。
オススメ★★★★☆

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センチメンタル・アドベンチャー  センチメンタル・アドベンチャー

 

 まさかあんなに歌が上手いとは思いもよらなかったクリント・イーストウッド の感動作。肺ガンで先のないカントリー・シンガーが甥っこを連れてのロード・ムービーで、彼の繊細さが存分に発揮されている。しかし周囲の期待を裏切ることなく、演じるキャラは破天荒。やっぱ「ダーティー・ハリー」 のイメージって、ショーン・コネリーの“ジェームズ・ボンド”に相当するのね。
オススメ★★★★☆

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