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誰も守ってくれない

だれも守ってくれない  誰も守ってくれない

 

 ここ数年マスメディアによる宣伝で、大ヒットする邦画が量産されている一方、わずかながら大人の鑑賞に耐える優れた映画が作られてきました。母親に置き去りにされた子供たちを描いた「誰も知らない」。この国の裁判制度を可能な限り正確に描いた「それでも僕はやってない」。そして昨年はタイの人身売買を扱った「闇の子供たち」。どれもあまりマスメディアでは取上げられないながら、しっかりした内容が多くの支持を得てきた作品。それぞれ夕食時のニュースでは黙殺される内容ながら、実に身近な題材を扱っている。

 

 そしてこの作品では殺人犯の容疑者家族が描かれています。自ら犯したわけでもない罪によって、迫害される人々。もちろん急先鋒は我々が日々後押ししているマスコミ。この作品を観た後ですと、新聞を読んだり、テレビを見たりすることが“悪事に加担”しているように思えます。ま、実際プライバシーを侵害して、個人を迫害するのは奴ら得意ですからね。

 

  ではこの作品が意図しているのはマスコミを糾弾することか?或いは騒ぎに乗じて“弱いもの”いじめをする“ひま人ども”かというとそうではありません。そんなことならヒーローを出現させて、万事あり得ない解決をしておしまいにすればいいんですから。そうではなくて事象に関わる人々を多様にして、多角的な視点を持たせ、この国の“今”を露呈することに成功しているのではないかと思います。

 

  佐藤浩市扮する刑事がヒーローとは程遠い、人生がけっぷちの冴えない中年であることからも良く分かります。可能な限り現実に起こっているように、まるで我々がそこにいるかのように描かれている。「マイティハート愛と絆」「チェ28歳の革命」 のように“画”を重視するのではなく“人々の動き”を中心に、観ている側が“絵空事”として処理して終わらないように注意が払われている。

 

 この作品によって我々の眼前に示されているのは、紛れもなく今(2009年)の日本です。出演している役者さん達も実力を如何なく発揮。主演の佐藤浩市、松田龍平の両名はもちろんのこと、“悪役”に見られそうな人物に扮した佐野史郎、津田寛治、佐々木蔵之介なんて凄みがありました。また“絶望”だけで終わってしまったらとてもじゃないけど耐えられないので、わずかな希望を持たせてくれる“被害者”の夫婦に扮した柳葉敏郎と石田ゆり子も良かったですね。やはりやりがいのある仕事だと手は抜かない。

 

  あれが悪いこれが悪いなどと声高に叫んだって仕方がない。あり得ない感動を提供してお茶を濁すのでもない。今のこの国がこういう状況なんだということをまざまざと見せつけた1本、実に素晴らしいです。海外に持っていっても恥ずかしくない。今年これを越える邦画に出会えるだろうか?と思ってしまいました。ちなみにこの映画を観る前にテレビで放映された「誰も守れない」というテレビドラマ、直接関係はないけれど見ておいて損しませんでした。

 

現在(1/26/2009)公開中    
オススメ★★★★★

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