君のためなら千回でも   2/15


  我々はマイケル・ウィンターボトム監督作品「インディス・ワールド」、「グアンタナモ・僕たちが見た真実」「マイティ・ハート/愛と絆」などである程度アフガニスタンのことを垣間見ることが出来ます。ただ描かれているの“9.11”以後の時代のこと。

 この作品は平和な時代からソヴィエト侵攻、9.11 以前までが舞台。確かに大国に蹂躙され、悲惨としかいいようがない状況はあるのですけれど、それを物語として昇華させているところがこの作品の素晴らしさ。主人公は“少年時代の過去”、“祖国喪失”、“過去との対峙”といった出来事を通して我々に一人の人間の半生を追体験させてくれます。

 ただアフガニスタンの悲惨さを訴えるだけでは世界中でベストセラーになるわけはなく、原作の持つ普遍性がとても重要。では映画としてはどうか。その骨組みを基に監督のマーク・フォースター は、原作者も驚く肉付けをします。特に主人公の少年時代を演じる子供たちが素晴らしい。わざわざ現地に行って募った甲斐ありでしょう。

 さらに映画としての見所は原題が“kite runner”だけに凧揚げのシーンに尽きます。ここはCGを多用して見応え十分。これ見よがしに使うのではなく、CGでなければ描けないまさに適材適所の使い方。北野武「座頭市」でも唸ってしまいましたが、使い方次第で最新VFXも映えます。原作の持ち味を最大限に活かし、最新の技術を駆使しながら描いていく。感動作「ネバーランド」でおや?となり、「主人公は僕だった」でひょっとすると?と思い、この作品での才能に惚れ込んでしまいました。次回作からいそいそと観に行くことになりそう。

 「それでも生きる子供たちへ」でも描かれていましたが、先進国と呼ばれた黄昏時の国々の子供より、悲惨な状況にある国の子供たちの方が実に活き活きとして見えるのはなんとも皮肉なこと。でも子供たちの中には起用に松葉杖を使って走り回る子もいて、ごくわずかなシーンですけれどはっとしてしまいます。もちろんこの作品は訴える映画ではありませんけれど、ありのままを映し出すと嫌でも見えてきてしまうものがあります。自分が彼らを蹂躙したアメリカに与する国に住んでいることをついつい思い出してしまいます。

現在(2/15/2008)公開中
オススメ★★★★☆
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