エリザベス・ゴールデン・
  エイジ   2/28


 前作「エリザベス」 が出世作となったそうなケイト・ブランシェット。今や押しも押されぬトップ女優。デビュー作の「オスカーとルシンダ」では可憐な美女だなぁと思っていたら、いつの間にか「ヴェロニカ・ゲリン」のような野心作に出たり、「アビエーター」でキャサリン・ヘップバーンに扮して貫禄を見せつけたりとすごい活躍。あのジム・ジャームッシュ「コーヒー&シガレット」で美人に描くのも肯ける実力と美貌の持ち主。そして女王陛下になっても全然違和感のない存在感はさすが。まさに彼女なくしては成立しない1本。

 もちろんこの作品はそれだけが売りではなくて、ちゃんと歴史のお勉強も出来る優れたコスプレ (史劇)ともなっております。当時世界の頂点に君臨していたのはスペインで、その無敵艦隊と対峙しなければならない時期のエリザベス女王を中心に物語が進行。この辺はCGを駆使していますけれど、「グラディエーター」「キングダム・オブ・ヘブン」などに負けない迫力。で、確かに男性には大河ドラマっぽい彼女の政治家的側面がアピールするのでしょう。ただ興味深いのは当時の宮廷で行われている謁見の様子やら、ファッションやら、女王と侍女と色男を巡る三角関係なんかも見所の一つ。

 色男に扮しているクライヴ・オーエンは「トゥモロー・ワールド」なんかだとダメ男ですけれど、「キングアーサー」では文字通り王様を演じたり、役者ですなぁ。この辺のドラマは「恋に落ちたシェイクスピア」さながらコスプレ映画の一つの楽しみの一つ。当時の風俗なんかも色々見ることが出来るしね。

 現在のエリザベス女王を描いた「クィーン」もそうでしたけれど、王座に君臨する人間の孤独とかその私生活は実に興味深い題材。それを2時間弱でスッキリ見せてくれるのはやはり映画のもつ魅力の一つでしょう。ほらTVドラマだとやたらと伏線と登場人物が多くなって、焦点がぼけるし感動が間延びするでしょ?この壮大かつ華麗な題材を料理した監督の力量と主演ケイト・ブランシェットは見事。いやはや面白かった。なお前作(公開された時レンタルありませんでした)を見なくても十分楽しめます。そこら辺がこの作品のもう一つ優れた点でしょうか。昨今珍しい。

 現在(2/28/2008)公開中
 オススメ★★★★☆
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     ヴェロニカ・ゲリン

 

  
 美人女優ケイト・ブランシェットを主演に描かれた得がたい小品「ヴェロニカ・ゲリン」。アイルランドに実在した女性ジャーナリストで、1996年に射殺される。この作品は様々な意味で注目されるべき一品です。まずジャーナリストを描いた作品としては「キリング・フィールド」「サルバドル」などが挙げられます。、どちらも戦地を取材するジャーナリストが主人公で、この世の地獄を訴えることに命を賭ける姿が胸を打つ傑作です。しかしこの世の地獄はなにも戦地ばかりではなく、市民生活の場でも日々繰り広げられている、世界の至る所で。特に貧しい地域ではごく当たり前の光景。この現実を訴えるべく立ち上がったのがど根性ジャーナリスト=ヴェロニカ・ゲリンなわけです。アイルランドの貧しい地域ダブリンで、日々売買されている麻薬の現状をただレポートするだけでなく、バイヤーの元締めである人物に直接取材を敢行する。並みのジャーナリストに出来る取材ではない。しかし結果として彼女は命を落としてしまうことになるのですが、彼女の行動が人々を動かし、行政を動かし、条例を作らせることになる。ただわめいているだけの某国のジャーナリスト達とは一線を画する本物が彼女なのです。 

 で、このように“熱い”題材に飛びついたのが他でもないケイト・ブランシェット なのは容易に理解できますけれど、監督とプロデューサーの名前を見てびっくり。ヒット・メイカー(儲け屋)のジェリー・ブラッカイマー 「評決のとき」「フォーン・ブース」などの職人監督ジョエル・シューマカーではありませんか。とても当たるとは思えない、得がたい作品に彼らが参加するのは意外や意外。更に偉いなぁと思うのは必ずしもアカデミー賞を狙っていないところでしょうか。ブラッカイマーはホントに映画作りが好きなようで、「キングアーサー」だって今までの方法論を捨てて、面白い方を選んでいる。確かに興行収益はそれほど上がらないかもしれないけれど、失敗作ではないところがミソ。監督のジョエル・シューマカーは題材がなんであれ、観客を退屈させない手腕は折り紙付きです。だってティム・バートン監督の摩訶不思議「バットマン」をごくまっとうなヒーローものとして描いた「バットマン・フォーエバー」もジョン・グリシャムがOKを出した「評決のとき」も良く出来ていましたもの。

  肝心なのはとにかく実在した女性ジャーナリストの成しえた“仕事”を世界に伝えるということ。映画は小説などと違って、世界中の人の目に触れる機会が多いメディア。彼女のメッセージをより多くの人々が受け取ることが出来るようにする、そのことに徹したこの作品は本当に得がたい一品なのです。映画としても過度に出来すぎていないものを撮らせたら天下一品の監督だし、そのことを十分知っているプロデューサーが目一杯やる気の(美人のクセに)超演技派女優を起用。この作品のクォリティと志の高さは売れっ子のコリン・ファレル がチラリ出演していることでも証明されます。重い題材ですから、息抜きのシーンが必要なのですけれどそこへ彼が登場。地元のなまり全開で(彼の話しているのが英語に聞こえませんでした)チラッとだけ笑える場面を提供。賞を獲得していませんから、認知度は低いかもしれませんけれど、必見の一品です。
オススメ★★★★☆

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