アメリカン・キャングスター   2/1


 映像派リドリー・スコットが実在したマフィアを描く、しかもデンゼル・ワシントンラッセル・クロウ を主演にして。このことだけでも観に行く価値十分の力作と言えますけれど、内容は期待をはるかに超えた感動作でありました。既に「ブラック・レイン」 を撮っているリドリー・スコット 。日本を舞台にしたあの作品では豪華キャストに加え、独特のヴィジュアルで観る者を魅了しました。
 
 ところが今回はむしろ正攻法の描き方でじっくりと2時間半魅せてくれます。片や堅実で画期的な麻薬ルートを確立し、イタリアン・マフィアを凌ぎニューヨークの実力者にのし上っていく男=デンゼル・ワシントン。片や腐敗しきっている警察内部にあって正義を貫いたために孤立していく男=ラッセル・クロウ 。双方がそれぞれ交錯することなく描かれていきますが、まるで2本分の作品を見ているようです。アフリカ系アメリカ人が麻薬で成功していく様は「ニュー・ジャック・シティ」でも描かれましたが、案外この人物がモデルなのかも。そして孤立した正義感の強い刑事が、独立編成された部隊を率いて立ち向かっていく様はまさに「アンタッチャブル」 の世界そのもの。時代は変わっても警察の腐敗はなくならないのですね。麻薬捜査は本当にヤバイ橋を渡ることになるので、「マイアミバイス」にしろ「フレンチコネクション」にしろはみ出し刑事がかなり無茶な捜査を強行します。

 デンゼル・ワシントンラッセル・クロウの二人が主演でなければ、まず実現できなかったであろう登場人物の造形は見事です。マフィアでありながら家族想いで、堅実な“悪事”を働き、生活は質素。こういう男はデンゼル・ワシントンでなければ演じられない。正義感の強い刑事だけれど、家族をそっちのけで仕事に入れあげ、殆ど暴飲暴食の果てのような体型の男はやはりラッセル・クロウでなければならなかったのでしょう。今回映像的な見せ場は殆どないものの、人物それぞれ魅力的に描いたリドリー・スコット 、御年70歳だそうですがもっと作品を撮って欲しいものですね。

 アメリカ映画ではイタリアン(「ゴッドファーザー」「グッドフェローズ」 )、アイリッシュ(「ミラーズクロッシング」)、ジューイッシュ(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」)、ブラック(「ニュー・ジャック・シティ」)とそれぞれマフィアの代表作はあるものの、どこかしらヒロイックな趣があったのも事実。しかしこの作品は可能な限り実態に迫った今までにないタイプのマフィア・ムービーではないでしょうか。ラストは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」 を思わせる何とも言えない大人が感動してしまう締めくくりでした。まさか実録マフィア者で感動するとはねぇ。

現在(2/1/2008)公開中
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     ミラーズ・クロッシング

                      

  
  コーエン兄弟 “平均よりややシリアス系”の一品。ややシリアスというよりかなり大マジなアイリッシュ・マフィアの抗争が描かれます。ここに出てくるガブリエル・バーンがとにかく渋くてカッコ良く、「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガーがそのまま起用したくらい。でもその主演を喰ってしまったのが“ダニー・ボーイ”が流れる中マシンガンをぶっ放すマフィアのボス。あのシーンはホント名シーンですな。この作品を見たばっかりに以後ファンになってしまいました。いやはや罪な映画です。
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